このレシピは時短料理ではなく、ちょっと凝った食事をしたいときにオススメのレシピです。
“簡単”“パパッと”とはかけ離れた調理工程ですが、香りや見た目に気をつかって、お客様にお出ししたり、たまのお休みにご家族と調理してみてくださいね。
鯛かぶら
レシピ記事の冒頭にこんなことを言うのもなんですが「腐っても鯛」という言葉をご存知でしょうか。
初めて鯛を調理したとき、うまいこと言うな、と思いました。
鯛はとにかく香りよく上品な味わいのお魚。煮てよし! 焼いてよし! 生でよし! と、どんな調理でもいけるところも特徴です。
一度、いただきものの鯛があることを忘れて、悪くしてしまったことがあるのですが、ふんわり鯛のいい香りがして「いけるんじゃないか?」と思いました。
結果は香りだけでまったくいけませんでしたが…。
まさにことわざの通り。
さて、今回は寒い季節に合わせて吸い物にしてみました。
古いお料理なので調理工程はそんなに難しくはありません。
鯛を霜降りにする
霜降りというと、どうもお肉の脂がのっていることを想像する人も多いようですが、お魚を調理する場合の霜降りとは皮目に熱を通すことを指します(というよりもこちらが先にできた言葉です。お肉に霜降り、というのは本来的には間違った意味のような気がします)。
焼けば焼き霜、お湯をかければ普通の霜降り、です。
お魚は熱を通すとうっすら白んで、皮はチリッとしますよね。
あの様が霜が降りたように見える、とのことからこの名前がつきました。れっきとした調理方法の名前です。
今回は吸い物にするので、焼き霜をつけると焦げ臭さが汁物にうつってしまいます。
お湯を使用して熱を通す霜降りをしましょう。
おっと、忘れるところでした。昆布を水につけておきましょう。大体1時間超。余裕があれば3〜4時間。
さて、こちらが今回の主役。鯛のアラです。身はお刺身で食べちゃいました。
今度、3枚おろしの方法もお教えしますね。
ザルにアラを並べます。鍋に沸かしたお湯に投入して下茹でする方法もありますが、こちらは非常に新鮮な状態でいただきました。
そこまでするとせっかくの新鮮な鯛の旨味が抜けてしまうかな、と思います。日が経っていたり、モノがよくないようだったら下茹でしてしまったほうがいいかもしれません。
さて、霜降りしていきます。沸騰させて少し冷ました、大体80度くらいのお湯をかけ回します。
注意してほしいのは、皮のある部分。あまり高い部分からお湯を落とすと、皮がはがれて見た目が悪くなってしまいます。
それに、鯛は皮の周りがおいしいんですよ。お造りにするときも、皮を残して霜降りしてあげると最高です。
お店で頼むと、皮をそいで出してくるときがあります。ガッカリ。
そんなこんなで、皮目(特に目の周りなど)の部分は注ぎ口を近づけ、細く丁寧にお湯をたらしていきましょう。
霜降りは別に熱を通したいわけではないので、身がうっすら白くなる程度で大丈夫。
霜降り作業はこれで完了ではありませんよ。
鯛を流水で洗いぬめりなどをとります。
こちらも新鮮なので、旨味が抜けすぎないようざっと洗うだけにしていますが、鮮度に不安があればボウルに氷水をはって、指でしっかりと洗ってください。
また、先述のお造りの場合は必ず氷水で締めてください。鱗もとり残しがないか手でさわって確認しましょう。
霜降りをすると、ちょっと触っただけでも鱗がとれるようになります。
血なども同様に洗い落としてください。
昆布と水を入れた鍋を火にかけます。弱火〜中火までで、沸騰させないように15分ほど煮出します。
カブを準備
かぶを切るところの画像を取り忘れました。
まあ、おこのみの大きさでOK。和食にかぶは欠かせません。
鯛と同じように香りがよく、煮れば柔らかく、ぬか漬けにすれば生でシャキッと、焼けば両方を併せ持ち、また、すり鉢ですって蒸せば、見栄えも美しいかぶら蒸し、と、いくつものお料理をつくることのできるユーティリティープレイヤー。
和食の中心的食材です。今回は香りのよい山のものと海のものを合わせる。
いわゆる出会いもの、ですね。うーん、かぶ、好き!
1つだけ気をつけてほしいのは皮をむくとき。
外皮の近くは繊維質で舌触りの悪い部分。
目で見れば境目が分かりますので、皮と一緒に除いてしまいましょう。
特に、煮るときはこの部分が舌に触るとわびしい。かぶの唯一の弱点です。
ダシを整える
昆布を取り出します。
そして沸騰させて、昆布臭さをとりましょう。
そして昆布ダシに鯛のアラをそっと入れていきます。
すごい量だな。これはいいダシが出るぞ。
弱火から中火で煮ていきます。なるべく昆布ダシが暴れないよう、柔らかめの火で煮るのがオススメです。
ぐらぐらいくと鍋の中で鯛のアラ同士がぶつかって皮が破れてしまうので。
小まめにアクもとりましょう。
味付け
10分ほど煮てアクがとれたら、少し冷まします。煮出した旨味は、少しさますと身に戻ります。
これだけ可食部のあるアラなら、この工程を挟むだけで味わいが格段によくなります。
そして日本酒小さじ1を入れます。
他のお魚のおダシではこの位の少ない量ではいけません。
香り高い鯛だからこその分量です。
味付けは塩で9割…
薄口醤油で1割、を意識しましょう。
少し飲んでみて、塩加減がちょうどいい! というところがベストです。
本来、味見したときにちょうどよい塩味だと濃すぎ。
実際に飲んでいるときにだんだんしょっぱく感じてきてしまうんですが、この後カブを入れると塩加減がグン、と薄くなりますので。
そしてカブ投入。下茹でしてから入れたり、味付け前に入れるなど、人によって作り方が分かれる部分です。
僕は新鮮な鯛とカブであれば下茹では必要ないと思います。
あと、カブは煮ると多くのダシを含むんです。
味付け前のダシを含むと、少し生っぽさが鼻につくような気がするので、味付け後に投入します。
この辺りはお好みで。
また弱火でアクをとりながら煮ましょう。
感覚的には、煮る、よりもカブに熱を移す、という程度でOK。
あまりクタクタに煮ると鯛と似通った食感になってしまいます。
同じ鍋の中の食材でも、それぞれ食感を変えるのが基本。注意。
完成 鯛かぶら
完成! 本来は小さな土鍋などに入れて提供するとよりおいしそうに見えます。
今回は大人数用に作ったので、このように小分けにし、漆器で提供しました。香りいい〜。
スッキリとしたおダシですが、鯛の脂がこれまたスッキリとしたコクを与えてくれて、吸い物のお椀としては十分です。
土鍋で提供しない吸い物は、本来はおダシの他に「椀ダネ」「ツマ」「吸い口」の3種で構成しなければいけません。
今回で言えば吸い口が抜けています。これ、悩んだんですよ。
なんせ朝獲れの鯛だったので。
今の時期なら吸い口は、ネギ、柚子、生姜、あとは変わったところだと生海苔などが定石だと思いますが、いずれにしろこの鯛のいい香りを引き立てるには強すぎる。
そこで今回は不調法ながら吸い口は省略しました。
土鍋提供の場合は別に考えなくて大丈夫です。
こちらは尾身の方の盛りつけ。
これからの時期は鯛がおいしくなりますから、身よりも安く手に入るアラ。
見かけたら是非お試しを。
それでは、いただきま〜す!