WEB上、紙媒体上問わず、多くの企業・商店で情報発信をする媒体を持つようになりました。
これまで自社媒体での制作といえば画像とテキストで構成し、画像のクオリティが大切な要素とされてきました、が…。
最近ではイラストを多用することも増えています。
たとえばノウハウ系の記事やサービス紹介でも業務フローなどを表す図版にイラストを組み込んだり、手の込んだ記事であればインフォグラフィックスのような図版・イラスト・数字を視覚的に理解できるような制作を行うようになっていますね。
しかしながら媒体の運営経験や編集経験のある人ならいざ知らず、イラストレーターごとに異なるテイスト(絵柄)、制作指示と修正依頼の出し方、そもそもイラストってどんなことを書いてもらえばいいのか分からない…、なんて人も。
そんなときに役だってくれるのがピクトグラムです(略してピクトとも呼ばれます)。
ピクトはシンプルで単純な構造を持っているため比較的媒体を選ばずに使用できるデザインです。
イラストといっても種類は豊富
最初に知っておいて欲しいのは、イラスト、というものにも種類がたくさんあるということです。
たとえば、今回の主題であるピクトグラム。
上記の画像のように、いわゆる棒人間や、商品などの特徴的な部分のみを抜き出して簡略化したものをさします。
「ピクト」と略して呼ばれることの多いものです。
ちなみに、「モジカル」の記事のサムネにもわりと使われています。
これはイラストレーターの方に依頼するものと思う人も多いようなんですが、ほとんどの案件でデザイナーの方に依頼します。
例えばイラストを入れるパンフレット制作などを行う場合に必要な人材は、
・編集者(ディレクター)
・ライター
・カメラマン
・デザイナー
・イラストレーター
などでしょう。
が、ピクトの場合はイラストレーターの人ではなくデザイナーの方に依頼できる場合がほとんどなので、制作チームの人数をコンパクトにまとめることも可能です。
もちろんピクト制作分の費用は上乗せとなりますが、イラストレーターの方に新たに依頼する手間を考えると時間的にもかなりのエコ。
そしていわゆるイラストと聞いて皆さんが想像するものよりも制作費が安くなるという場合がほとんどです。
スケジュールにも優しいピクト
通常イラスト制作を依頼した場合、最初にイラストレーターから送られてくるのはラフです。
ラフとは、鉛筆で書かれた下絵のようなもの。
この段階でおおむねの構図を確認します。
そして修正があれば修正指示を出して、再度確認。ペン入れと呼ばれるデータ上で触ることのできるものにして、4色フルカラーであれば色づけを…。
と、確認作業、制作作業のステップをいくつか踏んでから納品に進みます。
特に、一度ペン入れしたり色をつけると修正するのに時間がかかるので、ラフの確認時に仕上がりをイメージしつつ確認するには慣れも必要です。
その点、ピクトは図形と線で構成されているので、最初から完成形に近い形で出てきます。そのため、仕上がりをイメージする必要がなく、誰でも完成形を確認することができます。
すばらしい!
ピクトのデメリット
じゃあ、ピクトでいいじゃん、と考えがちなんですが、それは早計です。
ピクトはあまり複雑な表現はできないというデメリットがあります。ほとんどの場合単色でしか使用できず、表情をつけるのが難しいのです。
そもそも、ピクトが日本で流行したのは1964年の東京オリンピックから。
外国から来た人でも、目の前にある施設の用途が一目で分かるようにと簡略化しつつ意味合いの通るものとして多用されました。
一目で、というのはピクトグラムにおいて大切な要素のためあまり複雑なものにするとピクトでないほうがいい、ということになります。
まあ、最近では無駄な要素をそぎ落として、少し複雑でもすぐ分かるピクトというのもたくさんあるので、是非一度ピクトグラムと検索してどのようなものが表現できるか確認してみてください。
バリエーションの多さに驚くかもしれません。中には目と口を切れ込みのように表現して表情を出したものもあります。
それでも、イラストレーターの方が制作するイラストには及ばない部分が多数。
だからこそ、安易にピクト、と考えずにイラストとどちらを使用するか検討する時間を持ちましょう。
ピクトは制作を依頼しなくても使用できるものがある
もう1つピクトについてよいところを上げるならば、フリー素材の多さがあります。
自社媒体などに無料で使用できるものをまとめたサイトがたくさんありますので「ピクトグラム 無料」などと検索してみると、これまた豊富な種類が提供されています。
その中から、目的に合致したものを選べば、制作費は無料ということになります。
ただし、各社規約にて禁止している使用方法というのもあるので必ず規約に明記された範囲内で使用する、ということを忘れないようにしてください。
ピクトグラムは単純な線と図形で構成するという特性上、イラストと違って、おおむねクオリティが一定に保たれるというメリットもあります。
かしこく使用すれば本当に便利なので、是非一度使用を検討してみてください。
どのように依頼するか
最後にピクトの依頼の方法です。
いろいろ検討した結果、今回はイラストではなくピクトに、となったら、まず最初に構図を考えましょう。
必要なのは「なにを表現するか」「必要な要素」「ピクトのテイスト」の3つです。
「なにを表現するか」
これは文章でも構いません。
「トイレに汗をかきながら駆け込む人間」とか「パソコンの前で頭を抱える人」などのようなものでもいいでしょう。
もしもピクトと一緒に使用する本文などの要素が既に完成しているならば、制作者の人に送ってしまいましょう。
なぜこの情報が必要かというと、気の利いた制作者であればこちらが渡した構図に+αしてくれるからです。
特に書籍などのページ物などの場合は本文とピクトの表すものの関連が非常に重要です。そのため、こちらが渡した参考と一緒に、内容に即したものを制作してもらうために必要となります。
「必要な要素」
必要な要素とは実際に作成してもらうオブジェクトです。
たとえば掃除をしている人であれば、“人”と“掃除機”の2つを表現してほしいのか、それとも“人”と“ホウキ”なのか、など。
“掃除”と聞いてイメージする掃除用具は人によりちがいますので、このズレを補正する必要があります。
これは口頭で説明するだけでは足りないので、手書きでいいので自分で簡単に書いてみましょう。
イラストの場合はラフ制作が難しいのですが、ピクトの場合は棒人間なので比較的簡単です。
ラフを送った後に電話にて口頭説明などをするとベターですね。
「ピクトのテイスト」
ピクトは単純構造といえどもテイストが異なります。
例えば三頭身なのか、家電のピクトなどであれば、角が丸いものか、とがったものか、など、これは参考として似通ったものをネットなどで探してスクリーンショットでも送ってあげましょう。
人物のピクトにもいろいろ種類があります。海外製のピクトなどは、特にセンスの良いものがあるので、一度検索してみてください。
ピクトは使いどころを選ぶと非常に便利かつ制作をスムーズにしてくれる要素です。
是非一度、導入を検討してみてくださいね。
いろいろ参考にしたいという人にはこちらもオススメです。かなりの種類が載っているので、実際にデザイナーさんにこんな感じで、と提案するのも楽です。