ドラムでボサノバを演奏したい人に向けたオススメのボサノバアルバム5選

ドラム ボサノバ

こんにちは、野澤です。

自分はいつもスイングジャズやコンテンポラリージャズを扱っていますが今回は久々にボサノバのオススメアルバムをピックアップしてみようと思います。

ボサノバについては以前に取り上げたことがあるのでそもそもボサノバってなんだったっけというかたは先にこちらをご参照ください。

セッションでよくやるボサノバのスタンダードナンバーをたどると結構名盤となるものが多く、今回はいわゆる名盤をおさえながらもセッションやバンドで応用できる一石二鳥な内容としました。

実演で活かしていきたい人にも名盤を聴いて楽しみたい方にもオススメの内容に仕上がっています!

ドラム、初級、中級者の入りくらいの方に参考となると思いますのでぜひ一読してください。

ボサノバの定番曲が入った名アルバム

スタン・ゲッツ「Getz / Gilberto」

サックス奏者スタン・ゲッツのアルバムです。そしてアントニオ・カルロスジョビンと並ぶくらい有名なボサノバシンガーのジョアン・ジルベルトとの共作になります。

スタン・ゲッツはジャズに根差したプレイヤーではありますが中期以降ボサノバも自分の音楽として取り入れています。このアルバムはその代表的な1枚でしょう。

そんな王道ど真ん中のアルバムな上によくやるボサノバスタンダードが5曲も入っています。

  1. イパネマの娘
  2. ドラリス
  3. デスフィナード
  4. コルコバード
  5. ソ・ダンソ•サンバ

アルバム全体を通してスタン・ゲッツの力が抜けたサックスのトーンにジョアンの優しい声がマッチしていてすごくリラックスした音楽空間になっています。

スタン・ゲッツのフレーズもメロディックなソロをとっているのでまるでジョアンと一緒に歌っているかのようなソロを演奏しているのがいいですね。

ドラマーでこのアルバムを参考にしようとすると少し戸惑うかもしれません。基本的にはパーカッションが大半ですのでこの音源をまんまドラムでコピーできません。

なのでドラムに活かせるようなヒントをあげておきます。

アルバム全体を通してシェーカーやタンバリンのような8分音符の細かいリズムで曲が成り立っています。この8分のリズムの部分をハイハットで叩き、アクセントで強くなっているシェーカーの音をスネアのリムショットに割り当てます。

足に関しては全く入ってないですがドラムで演奏するときはサンバキックのリズムを足すといいでしょう。

唯一イパネマの娘とソ•ダンソ•サンバではライドシンバルやハイハット、スネアのリムショットが出てくるのでこれは参考にできそうです。

軽快なイメージを崩したくないのでリズムが重くならないように、べたっとしたプレイにならないようにするのがボサノバを上手くやるコツですね。

ジョー・ヘンダーソン「Page One」

created by Rinker
ユニバーサル

ハードバップ時代を代表するテナーサックス奏者ジョー・ヘンダーソンのアルバムです。

CDのサウンドは完全にブルーノートのあの音質なのでボサノバのCDとは違ってダークで重めなサウンドの仕上がりになっています。

朝というよりは夜に聴いたら雰囲気が合いそうなアルバムです。

ボサノバとは関係ないですが”Jinrikisha”はハードバップを代表する曲なのでコアなジャズ好きにもオススメできるアルバムになります。

曲のトーンは落ち着いたものが多くテナーとトランペットの2管なのにそこまでにぎやかな感じにはなっていません。メンバー同士のプレイの距離感がいいバランスに保たれた内容になっています。

このアルバムではジャズプレイヤーがよくやるボサノバの曲が2曲入っています。

  1. ブルー・ボッサ
  2. リコーダ・ミー

この2曲は定番のボサノバナンバーですし大体のプレイヤーがこのジョー・ヘンダーソンのアルバムを最初に通っていると思います。

しかしこれもドラマー目線で言うとちょっと普段のパターンと違っています。

前の記事で紹介したボサノバの感じとは違って右手でブラシを8分のリズムでシャカシャカこすり、左手はスティックでクローズドリムショットでクラベスのようにリズムを刻んでいます。

結構トリッキーでなかなかやらないですよね。しかし変わっていると思われるこの奏法はこの時代まで結構主流でした。

ジャズドラマーなら誰でもご存知のトニー・ウイリアムスも同じスタイルで”Speak Like A Child”をやっていますね。まだこっちの方が録音環境がよくてドラムが聴き取りやすいかもしれません。

きっとブラジルで演奏されるリズムを移行させようとした結果シェーカーのシャカシャカした感じをブラシで再現させたのでしょう。

それが60年代終わりまでずっと続いていたのかもしれません。

70年代からはフュージョンやロックの影響でもっとエレクトリックになりブラシよりスティックが好まれるようになっていったと思います。

チック・コリアの「Like A Feather」や「Return To Forever」を聴くとフュージョンとブラジルの音楽が混ざった感じがわかります。

話は戻りますがこのアルバムの曲ではブラシで練習してもよし、スティックでノーマルに叩いてもすごく参考になるアルバムだと思います。

アストラッド・ジルベルト「The Shadow Of Your Smile」

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ユニバーサル

女性ボサノバシンガーを代表するアストラッド・ジルベルトの2作目のアルバムです。

1作目は夫のジョアン・ジルベルトにアントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ドナートなど豪華メンバーで収録されたアルバムがありこれも超オススメですが、これはドラムではなく全編パーカッションなので今回はドラムが少し入っている2枚目のアルバムをオススメしようと思います。

このアルバムはジャズスタンダードナンバーも収録されていてジャズリスナーが聴いてもとっつきやすい曲目になっています。

ですがボサノバ特有の空気が澄みきったサウンドをしているので最初から最後までリラックスしたボサノバのアルバムになっています。BGMにしても最高の1枚ですね。

この中でよく演奏する曲と言えば、

  1. シャドウ・オブ・ヨアー・スマイル
  2. カーニバルの朝(ブラックオルフェ)
  3. フライミートゥーザムーン
  4. フー・キャン・アイ・ターン・トゥ
  5. デイバイデイ

この5曲です。フライミーは超有名ですね。

フライミートゥーザムーンはフランク・シナトラの1曲が非常に高名ですが、シナトラのようなゴージャスなサウンドとは違ったリッチ感に仕上がっていて、程よく脱力した音楽の中にちゃんとボサノバのリズムの推進力が込められていて絶妙なバランスです。

シャドウ・オブ・ヨアー・スマイルとデイバイデイはジャズプレイヤーがよくやるボサノバスタンダードですのですごく参考になるかと思います。

歌が終わってからの弦楽器のコーラスアレンジはまるでビッグバンドを聴いているかのような構成でとても壮大なのにボサノバのゆったりした雰囲気は常に漂っていてとてもロマンチックです。

ドラムのリズムはとてもシンプルで16分で刻んでいるだけの曲もありますし、ライドとハイハットだけみたいな曲もあります。ですがアクセントつけ方やグルーヴ感はかなり勉強になります。

ドラムのリズムがよくわかる作品

ブライアン・ブロンバーグ「In the Spirit of Jobim」

アルバムの名の通りアントニオ・カルロス・ジョビンの曲をフィーチャーしたアルバムですのでどれも名曲揃いです。

これらのジョビンの曲にブライアン・ブロンバーグの風味を足し、ベースフィーチャーにしたりフュージョンみたくなったりオシャレで聴きやすいアルバムになっています。

そしてこのアルバムでもよくセッションで演奏する曲がいくつか収録されています。

  1. ワンノートサンバ
  2. ウェーブ
  3. トリステ
  4. コルコバード
  5. イパネマの娘

録音状態がいいのでどの楽器もクリアに聴こえます。ドラムのリズムも聴きやすいのでぜひ参考にしてみてください。

パット・メセニー「Letter From Home」

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Nonesuch/elektra

今回のテーマの中で、個人的にみなさんに一番聴いてもらいたいアルバムを挙げるならばこちらです。

リーダーのメセニー自身のバンドであるグループで唯一無二の音楽を繰り広げるギタリスト、パット・メセニーですが、このアルバムはブラジル色が強く出ています。

特に「Better Days Ahead」はイントロからドラムにブラジルの楽器であるクイーカやボンゴが足されてブラジル色が濃く出ています。

それでも曲のメロディラインはパット・メセニーらしいポップな流れになっていて彼のオリジナリティを感じる1曲に仕上がっています。

その次の曲の“Spring Ain’t Here”はジャズスタンダードの“Spring Is Here”の名前をもじって作られた曲でこれもボサノバのグルーヴを感じられます。ゆったりしながらもスムースジャズのようなリッチな空気感が味わえる1曲です。

他のおすすめアルバムとは違ってセッションでやるような曲は入っていませんが現代的なドラムのアプローチは聴いていて参考になるかと思います。

ボサノバの極意はグルーヴに徹する

今回おすすめしたアルバムを全部聴いてもらったらわかると思いますがボサノバやサンバでのドラムの役割は“グルーヴを作ること”これに徹底しています。

ベタっとしないように軽やかに演奏するのは大変ですがパターンをひたすら刻んでいつまでも続いていくようなグルーヴを作ることが大事なのがわかりますね。

フィルインで盛り上げたりインタープレイで他のプレイヤーと絡んだりすることなく淡々とプレイするので演奏中色々アプローチしたい人には不向きかもしれませんが(私もそうです)名盤を聴いてどういうリズム、グルーヴ、音色なのかを掘り下げるにはもってこいの5選です。

ぜひお家や出先でゆったりしながら聴いてみてください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。