ジャズの終わり方は難しい? エンディングを参考にできそうなアルバム3選

ジャズ アウトロ

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こんにちは、ドラマーの野澤です。

ジャズをプレイしていてこの先どうなるか必ずドキドキするセクション、心当たりありますよね。

そう、エンディングです。

譜面があってエンディングがあらかじめあれば全く困らないのですが、セッションで演奏するスタンダードナンバーではどうやって終わるのか決めずに演奏するのでプロでも毎回ドキドキします。

ライヴを見ていてもうまく終われてないミュージシャンも結構目の当たりにしてきました。

今回はそんな難易度が少し高いエンディングに焦点をあててみます。少しでも解決策を共有できたらと思いますのでぜひ最後まで見ていってください。

なぜジャズのエンディングは難しいのか

終わるのがなぜこんなにも難しいのかいくつか理由があると思います。

1.終わり方がいくつもある

終わり方にはいくつか種類があります。

  • 逆循(ぎゃくじゅん)で終わる
  • テーマの最後のフレーズを3回繰り返して終わる
  • エンディングにいかずにテーマのメロディで一緒にみんなで終わる
  • メロディの最後の音を伸ばしてテーマのメロディを弾いていた人がルバートで終わらせる
  • イントロと同じパターンにいく
  • その曲特有のエンディングで終わる

 

思いつくだけでもこれだけ終わり方のルートが存在します。どれで終わるのかを演奏前に決めていなければその時に出している音の感じで判断し演奏で誘導しながらどのルートでいくのかその時の空気で決めていきます。

2.みんなで終わるから難しい

イントロはピアニストやギタリストが1人で始めてみんなをテーマに誘導したり、またはリズム隊がパターンを作ってからテーマに入ったりするなどできるので比較的方向性が見えやすいのでまとまって演奏しやすいです。

しかしエンディングとなれば誰もが終わらせる権限を持っているのでお互い心の読み合いになります。

日本人は譲り合いの精神や多数の意見を取り入れるなど何かをみんなで決めるには不向きな感じがしますね。。

みんながどちらでもいいみたいな空気になると演奏は崩壊に向かっていくので誰かが先陣きってエンディングルートを決めなければいけません。もちろんまわりもそのサインに気づかなければいけません。

エンディングルートを決めるのは誰?

基本はメロディを弾く人です。

逆循に行く場合 ー メロディを弾いているプレイヤーが最後のメロディが落ち着く部分を変えてまだ終わらないように持っていきます。そうするとベーシストやコードを演奏するプレイヤーがそれについていくように最後のコードを変化させ、III-VI-II-Vという無限ループできるコード進行(これを逆循と言います)で曲の最後の部分を引き伸ばすことができます。

3回繰り返す場合 ー メロディはそのまま弾いて最後の2小節または4小節を3回繰り返して終わります。この時にメロディ弾いている人が3回繰り返したいことをメンバーに伝えたいときは素早くメンバーに手で3!とジェスチャーを取るか「3回!」と直接言葉に出すかで確実に伝わります。

そのまま終わりたい場合 ー メロディの最後のフレーズを大きく弾きながらリズムセクションの方を見ると勢いでみんなで終わります。

ルバートで終わる場合 ー 大体バラードやボサノバの時にいくエンディングです。これも最後のメロディを強調するように弾くとそこのフレーズに合わせてリズム隊が最後の音をポーンと伸ばしてくれます。そのあとはメロディを弾いていた人がカデンツァのように自由に弾いて最後解決する音を合図しながら弾いてもらうとリズム隊も最後の音を鳴らして終わりになります。

リズム隊が誘導しないといけないエンディングのルートもあります。

イントロのリフやパターンがある場合は最後のメロディが終わったらまたエンディングとして使われることもあります。

ベース、ドラム、ピアニストが目配せして判断するのでイントロをやった場合はしっかり覚えておきましょう。

という感じでどう終わるのか全員がアンテナを張って自主的に終わらせにいくことが大事になってきます。誰も動かなければ自分が動くというスタンスが大事ですね。

エンディングを参考にできそうなアルバム

エンディングのルートがわかって誰が導けばいいのかはわかったとはいえ流石にそのエンディングを聴いたことがなければ反応もできませんし誰かが出している終わりのサインにすら気がつきません。

なのでエンディングのやり方をレジェンドたちから学んでおけばうまく対処できるようになってくると思います。

Red Garland「Red Garland’s Piano / If I Were A Bell」

レッドガーランドのピアノトリオでの“If I Were A Bell”です。この曲では逆循にいってますね。

最後のメロディが明らかにテーマと違っていて曲がまだまだ続きそうなフレーズに変化しています。ポールチェンバースもアートテイラーもそれを汲み取って演奏していますね。

ライブだとこの逆循を繰り返しているうちにアドリブが白熱していくこともありこの無限ループを終わらせるのも大変になってきます。

そうしたときにテーマのメロディを最後大きく弾いてあげるとリズム隊もそれについていき終わることができますね。

逆にリズム隊はこのテーマの最後のメロディをしっかりキャッチしないといけません。逆循に入ったらしっかりアンテナをはっておくことが大事です。

マイルスのアルバム「Relaxin」のテイクが有名ですがこっちのアルバムのテイクの方がもう少しライヴ感があるのでオススメしました。どちらもチェックはしておきたいところです。

「4 Generations of Miles / On Green Dolphin Street」

マイルストリビュートのアルバムなのでリーダーが誰とはなっていないアルバムですが、ジョージ・コールマン、マイク・スターン、ロン・カーター、ジミー・コブというマイルスのバンドで活躍した4世代のプレイヤーが集まってレコーディングしたアルバムになっています。

この曲の終わり方は3回最後のメロディーを繰り返して終わりになっています。なんともあっさりですがこういう終わらせ方のスタンダードナンバーが多いですね。

Modern Jazz Quartet「A 40th Anniversary Celebration / All The Things You Are」

この曲はイントロがついていて最後のエンディングとしても使われています。ジャムセッションでも定番の終わり方ですね。

この演奏はその終わり方を見事再現してくれています。最後のメロディが上がりきったところでベースとピアノがイントロのフレーズに入りしっかりエンディングにつながっています。

メロディもサックスにビブラフォンが絡んで迷うことなく進んでいくのですごく自由に演奏しています。

エンディングに正解はある?

この曲にはこのエンディングに進むだろうという定番の終わり方は一応あります。

なので最初はジャズスタンダードブックの中からよく演奏する曲や自分のレパートリーにしようとしている曲はいろんな音源を聴いてエンディングを参考にするといいかもしれません。

そして自分が覚えたその曲のエンディングはアイデアの一つだと思ってください。

もしかしたら違うエンディングがあるかもしれませんしメンバーも違うエンディングを考えている可能性もあります。

あとはセッションや色んな場所で演奏して経験するのみです。

誰もがエンディングをうまくできるわけではありません。

もしうまくいかなかったら録った自分の演奏を聴き直し、みんながどうやって終わりたがっているのか、自分がその時どう動いたらよかったのかを分析できるといいですね。

あとは自分の演奏と今回取り上げたレジェンドたちの演奏を聴き比べてみるとどうやって立ち振る舞えばいいのか解決策が見えてくるかもしれません。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。