ピアノトリオで映えるジャズドラマー4人を知っていますか

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こんにちは、野澤です。新年明けて2025年がスタートしましたね。といってももう1月が終わり年始の挨拶としてはかなり遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。

今回はジャズの中でも比較的人気の高い編成ピアノトリオで映えるドラマーをご紹介したいと思います。

映えると一言で言ってもさまざまな見え方がありますが、ピアノトリオでのドラムの基本はピアノやウッドベースなどのアコースティックな音を引き立たてることが求められます。

そのため派手に叩くのではくてピアノトリオだからこそできる、そのドラマーならではのアプローチや、バンドに混ざるような音色がポイントとなってきます。

今回はこのアコースティックなバンドでの演奏を基準に4人ピックアップして魅力をお届けしようと思います。

Jimmy Cobb

淡々と、シンプル。それでいてスイングがとても強烈なドラマーといえば、ジミー・コブです。

ジャズの帝王とも呼ばれるトランペッター、マイルス・デイビスのバンドでは特にミニマルな演奏をみせ大人しめのドラマーとして多くの方が認識しているかもしれません。

マイルスの名作アルバム「Kind Of Blue」それが顕著に現れています。

ですがこれはトランペットなどのフロント楽器がいるバンドでのこと。ピアノトリオになるともっと積極的な演奏に変わります。

スイングのストロングさは変わらずですが左手のコンピングがより積極的で、ピアノのフレーズに絡むほか、彼のドラムソロをしっかり堪能できる音源が複数あるのもいいですね。

バップフレーズの引き出しもたくさんあってアート・ブレーキーやフィリー・ジョー・ジョーンズのような強靭なプレイで圧倒されます。

おすすめアルバム【ボビー・ティモンズ「This Here Is Bobby Timons」】

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アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズで活躍したピアニストのボビー・ティモンズのアルバム。ピアノトリオで叩いているジミー・コブはかなり積極的。

ライドシンバルの推進力は強力でベースよりトップで叩いている感じもします。

特に“Moanin’”のベースが2ビートで前に引っ張っている感じがバシバシ伝わり、フィルインもタムを使うようなアプローチをしてくるのでマイルスバンドのときとは違う演奏が味わえるのが楽しい部分です。

“Joy Ride”では超強力なドラムイントロをみせます。

アート・ブレイキーのような馬力の強さとフィリー・ジョーのような繊細な3連符、マックス・ローチのような歌心あるフレーズ感。

非の打ち所がないドラムイントロから始まりテーマ、ピアノソロになっても勢いが落ちず加速していく疾走感がたまりません。

マイルスの「Kind Of Blue」のジミーコブだけ知っているリスナーであれば、寡黙な人だと思っていたのに話すと意外と面白い人、そんな印象を演奏から感じることができるでしょう。

また違う一面を発見できるアルバムです。

Brian Blade

どのバンド形態でも最高な演奏をすることでも有名なブライアン・ブレイドですが、個人的にはピアノトリオでのプレイスタイルはとても好みです。

滑らかなシンバルのリズム、プッシュ感のあるバスドラム。

スネアのコンピングも的確でベストなタイミングで入ってきます。音色や音量の幅が広くて同じフレーズがアルバム内で出てきたとしてもサウンドが大きく変わるので全く飽きないプレイなのがすごい。

寄り添うようなプレイをしたり、ピアノのフレーズを次に押し進めるような流れを作ったり、ここぞというときに叩くクラッシュシンバルとバスドラの爆発力も世界級。

ピアニストのやりたいことを全て把握しているかのような演奏でジャズピアノの魅力を存分に引き出す唯一無二のドラマーと言えるでしょう。

おすすめアルバム【北川潔「Still Here」】

ベースの北川潔さんのアルバムで叩いているブライアンは特に素晴らしいです。

ピアノのダニー・グリセットとの相性がよく、ダニーの頭の回転が速い知的な演奏をさらに加速させるかのようなアイデアのあるフレーズとコンピングのアプローチで攻めてきます。

1曲目の”KG”からそれが発揮され、ダニーの8分音符5つ割りの難易度の高いモジュレーションにも対応して自然と盛り上げていきます。

ドラムソロも緩急のあるアプローチがたまりません。溜めてためてクラッシュシンバルでスパーンと解決する音もブライアンならではの気持ちいいサウンドが響きます。

もちろんアルバム制作時に音量バランスなども制作側で調整しているでしょうが、激しい曲にしてもゆったりした曲もピアノの和音の響きだったり、ベースのアコースティックなサウンドが気持ちよく聞ける音量感で演奏しているのがよく分かり、どの楽器もリッチな響きに聞こえます。

その気持ちいいサウンドを抽出して聴いているかのような感覚をリスナーは味わえるのでブライアンのピアノトリオでの演奏力はとても高いと言えるでしょう。

Jack Dejohnette

ディジョネットといえば名ピアニスト、キース・ジャレットでのピアノトリオに参加していたことを一番先に思い浮かべる人も多いでしょう。

最初の方にご紹介したマイルスバンドにはディジョネットも参加しており、最高にキレキレでかっこいいのですがキースのピアノトリオでの柔軟でドライブ感のあるグルーヴがたまらないです。

ライドの音色は丸い音色でとてもドライ。

そのおかげでバンドサウンドに適度なスペースがあってスッキリして聴きやすくピアノトリオという形態ではかなり上品なサウンドに聴こえます。

太鼓の音もドイツのドラムメーカーであるソナーを使っていてドッシリした膨よかなサウンドを響かせます。

シンバルのスムーズさと重厚な太鼓のサウンドが組み合わさってできる独特なサウンドがディジョネットのドラムから感じますね。

少し引きずるような音にも聞こえるのでエルビンを彷彿とさせる瞬間もありますがトニーのような激しく燃えるような演奏もみせます。ドラムに革命を起こした2人の要素がギュッと詰まった貴重なドラマーです。

おすすめアルバム【キース・ジャレット「Standards Vol.1」】

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キース・ジャレットのトリオといえばゲイリー・ピーコック(Bass)、ジャック・ディジョネット(Drums)、の3人が挙げられますが、このメンバーでの最初のアルバムがこちらです。

ジャズファンなら知らないことはないでしょうが、ここのディジョネットはトリオのサウンドのバランスを保つような客観的な視点を持って演奏しているのが特徴的。

2曲目の”All The Things You Are”はピアノソロの最初からキースは奇抜なソロでアプローチしてきます。

そのアプローチに対してジャックはブラシで冷静に、淡々とグルーヴを作っていきます。

また、キースのアプローチをよく理解した上でシンプルにグルーヴさせていくのが分かります。

スティックに持ち替える瞬間も絶妙でこのタイミングでこの音量感で入ってくるのもさすがという感じ。

ここは一聴ですね。

その後はさらに音楽が加速していき3人で最高に盛り上がります。

ピアノのフレーズに応えるディジョネットのコンピングも狂気を感じるような音の意志が込められていて、緊張感が伝わってくるよう。

ベースソロに入ってからもピアノソロの勢いがまだ残っていて音楽の力が衰退しないようにグルーヴを作るディジョネットも見事です。

基本はバランスをみながらプレイしていますが歌心やインタープレイの速度は他のドラマーと全く違います。

音色に好みはあるかもしれませんがピアノトリオを得意とするドラマーではトップクラスなのでこれはチェックです。

Kendrick Scott

ここ最近は特にピアノトリオでの演奏のイメージはないかもしれませが、個人的にはピアノトリオが得意なイメージが強いのがケンドリック・スコットです。

2010年あたりはケンドリックがよく新宿のピットインに来ていて、私も見に行っていましたがだいたいヴィセンテ・アーチャーがベース、エグザビア・ディビスやダニー・グリセットがピアノで演奏していて、このときのイメージが強いせいかピアノトリオが上手いドラマーと私は認識していて学生当時から彼のプレイスタイルを参考にしていました。

おすすめアルバム【ダニー・グリセット「Promise」」

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Criss Cross
zGP

アート・ブレイキーのようなシンプルにドライブしていくようなシンバルレガートのテイストもあり、ディジョネットのような知的なインタープレイもみせるので幅広い層から支持されるのではないでしょうか。

知的で緻密なピアニストであるダニー・グリセットとの相性も抜群で、聞いている方は最初の”Moment’s Notice”からやられてしまいます。

コルトレーンの明るくグルーヴするオリジナルテイクとは真逆でミステリアスな浮遊感あるテーマでソロも怪しい空気感で入っていきます。

しかしここからのピアノソロの綿密なインタープレイは聴きごたえがあり、一気にこのピアノトリオの世界に引き込んでいきます。

ブラシでのフレーズのバリエーションが多いからかピアノと複雑に絡んでいきいつの間にかスティックに持ち替えて新たな展開をみせるんですが、この展開の仕方も強引ではなく然るべきタイミングでの持ち替えなので聴いてるこちらも自然とテンションが上がってきます。

スティックに持ち替えてからもさらに何段階にも分けてビルドアップしていくので、コルトレーン以上のスピード感があってジェットコースターに乗ってるかのようなスリルがありますね。

テンションが上がってもどこか冷静に判断しているのでインタープレイの速さやテンポ、音色は雑にならずに常にクオリティが高いです。

そしてピアノが全面に出るようなバランスで叩いているのでピアノトリオのドラマーとしても若手のこの時から超一流です。

 

以上! 4人のドラマーとオススメのアルバムをご紹介しました。

ピアノトリオでのドラマーの立ち位置は結構難しく、音量コントロール、展開のバリエーションの豊富さ、インタープレイのバランスなど繊細なプレイが求められます。

ピアノトリオのイメージを決定づけたビル・エバンスのトリオ以降、さまざまなプレイが求められる時代ではあるので好みは分かれると思いますが、今回ご紹介した4人はピアノトリオが得意なプレイヤーだと個人的には思うのでぜひ聴いてみてください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。