オススメのマイルス・ディビスのアルバム「1958 Miles」

こんにちは、野澤です。

今回はジャズをこれから聴いてみようと思っている人にオススメできるアルバムをご紹介したいと思います。

まずはジャズの帝王と呼ばれるマイルス・ディビスのアルバムから1枚。

「1958 Miles」をピックアップしてみようと思います。

マイルス・ディビス「1958 Miles」

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ソニーミュージックエンタテインメント

パーソネル

  • マイルス・ディビス(Trumpet)
  • キャノンボール・アダレイ(A.Sax)
  • ジョン・コルトレーン(T.Sax)
  • ビル・エバンス(Piano)
  • ポール・チェンバース(Bass)
  • ジミー・コブ(Drums)

アルバムトラック

  1. On Green Dolphin Street
  2. Fran-Dance
  3. Stella By Starlight
  4. Love For Sale
  5. Fran-Dance(Alternate Take)

とても良作なコンピレーションアルバム

コロンビアレコード(現在はソニーミュージックの子会社)から出している過去の曲を詰め合わせたコンピレーションアルバムにも関わらず名盤として認知されているアルバムです。

ジャズではコンピレーションアルバムが名盤と紹介されることは珍しいので、そういった意味でもおもしろい1枚ですね。

オシャレなジャケット

ヨーロッパ風でシンプルな色味のジャケットが特徴的です。ストライプが入っているコートがモチーフになっているのもオシャレです。

着ている人の顔は少し不気味にも見えますが。。

このジャケットをデザインしたのは池田満寿夫さんという日本人の方です。

余計な文字も少なく落ち着いたこのアルバムの音楽にもマッチしていて個人的には好きなジャケットです。

新しいバンドメンバーでのレコーディング

収録曲のレコーディングをした時期は、マイルスがバンドのメンバーチェンジを試みている最中でしたが、最終的に落ち着いたメンバーがこのアルバムにいるメンツになります。

前のメンバーではマイルスに加えてジョン・コルトレーン(T.Sax)レッド・ガーランド(piano)ポール・チェンバース(bass)フィリー・ジョー・ジョーンズ(drums)というジャズのビバップいうスタイルを得意としたメンバーを揃えていました。アグレッシブなジャズのサウンドが特徴的でこの時代のジャズの1つの完成形でもありますね。

しかしこのバンドはお金やクスリの問題を抱えることになり、バンド内の不和が大きくなることでポールチェンバース以外のメンバーが去ってしまいます。。

そのためマイルスは新たにビル・エバンス(piano)ジミー・コブ(drums)というメンバーを加え、フロントには付き合いのあるキャノンボール・アダレイ(A.Sax)を呼び、更にバンドを出て行ったコルトレーンを呼び戻して6人編成でレコーディングを行います。

そのメンバーチェンジが功をなしてアグレッシブなバンドサウンドから落ち着いたインテリジェンスなサウンドに変化していきます。

余談ですが、ここ最近よく紹介していたビル・エバンスですが、このアルバムはエバンスがマイルスのバンドに入ってレコーディングされた初めての作品です。

1958Milesは、一環したテーマを持って制作されたオリジナルアルバムでははく、コンピレーション盤でありがら収録された曲にマイルスのやりたいことがはっきりと現れているのが面白いですね。

マイルス自身は柔らかいトーンでシンプルにメロディックに、音楽的に勢いをつけたいときはコルトレーンとキャノンボールにバトンタッチして盛り上げてもらっています。

ちなみに、このメンバーでの演奏を収録した別のアルバム「Kind Of Blue」では、もっとマイルスの「やりたいこと」がハッキリと表現されています。

このアルバムの聴きどころ

どの曲もマイルスの歌心あるフレーズが際立つようにサポートするリズムセクションが特徴的です。

ソロが変わったら掻き立てるようにプレイスタイルをチェンジするドラマーのジミー・コブがかなり聴き応えありますね。

トランペットソロからサックスソロに変わった瞬間からドラムのシンバルの音量やスネアの打数が変化しているので耳を傾けているとその違いに驚くと思います。

全体的には落ち着いているのでBGMとしてかけてもリラックスできる雰囲気があります。特にマイルスの当時の彼女に捧げた曲”Fran-Dance”はとてもロマンチックでマイルスとフランシス(彼女)が一緒にダンスでもしてそうな光景が見えてきそうです。

ジャズミュージシャンがよく演奏する”On Green Dolphin Street”や”Stella By Starlight”のナンバーもすごく奥行きがある音楽に感じます。

ポール・チェンバースのベースの音色が落ち着いていて深いところに音があるのがポイントです。

ビル・エバンスも繊細で複雑なハーモニーを的確に演奏していくのでそれも相まって美しく奥深いジャズのサウンドに聴こえます。

マイルスファンには解説不要なほど、マイルスサウンドとして定着しているミュートしたトランペットのサウンドは抜群の聴き応えです。

アルバム全曲にわたってミュートをつけて演奏しているのでマイルスサウンドを十分に味わえるという点でもこのアルバムはいい1枚と言えるでしょう。

当時のジャズメン特有の熱苦しいサウンドではなく、昔のアメリカ西海岸でよく演奏されていたようなクールでシンプルなジャズが収録されています。

それもただシンプルというわけではなく、アフリカ系アメリカ人が持つグルーヴ感が根底にはあるので聴き心地はさらりとしているようでバンドのサウンドはとても濃密です。

初めてでもコアなジャズ好きが聴いてもとても満足できるアルバムだと思います。ぜひチェックしてみてください。

 



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。