ジョー・ヘンダーソンはジャズ通ほど魅力の虜になるサックスプレーヤー

ジョーヘンダーソン

ジャズでテナーサックスの巨匠というと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのはデクスター・ゴードンやソニー・ロリンズ、そしてジョン・コルトレーンでしょう。

今回ご紹介するのはそんな3人の間に埋もれがちなジャズジャイアンツの1人、ジョー・ヘンダーソンです。

ただまあ埋もれがちとは言いましたが、音楽家界隈ではジョー・ヘンダーソンというテナーサックス奏者は寸分も疑う余地なく彼らと同様の偉大なプレイヤーとして認知されています。

テナーサックスの巨匠

デクスター・ゴードンやソニー・ロリンズといえばいかにも男らしい、マッチョで太い音色とリリカルなフレージングが魅力。

ジョン・コルトレーンはシーツオブサウンズと呼ばれたように、複雑なハーモニーをたくさんの音としてちりばめることによって表現し、後期のものに至ってはスピリチュアルな側面をより重視した音楽へ傾倒していきました。

一方ジョー・ヘンダーソンは柔らかく少しこもったような音色で、難解といってもコルトレーンとは異なった、一見すると何を考えてるんだかわからないような演奏スタイルに聞こえることもあります。

個人的には多分ヘンダーソンのこういったところが、ロリンズやコルトレーンほどに一般的な知名度が高まらない原因なのではないかと思いますが、先にも書いたように、音楽家やジャズをよく知る人達の間では非常に人気のあるテナー奏者です。

魅力的なオリジナル曲

ジョー・ヘンダーソンの魅力的なところとして、非常に美しいオリジナル曲を多く作曲していることが挙げられます。

例えばこの曲を聴いてみてください。

この曲は1963年に収録された彼の初リーダー作品ですが、しょっぱなから溢れるこのオリジナリティ。

Jinrikisha=人力車という曲名の通り、なんだかオリエンタルな雰囲気がビンビンです(笑)。

同作品に収録されているRecorda-Meはジャムセッションでも人気のある曲です。

時代が下ると曲の難易度も増します。

Power of the Peopleという作品に収録されたBlack Narcissus(=黒水仙)という曲ですが、非常に繊細で美しい曲です。

こちらはInner Urgeという曲。

楽譜を一見すると「どうやって演奏すんのこれ!?」と言いたくなるような曲です(笑)。

そういえば、ジャズの中で曲のタイトルと曲調がこれほどまでに一致しているのも珍しいのではないでしょうか。

独創的な演奏スタイル

冒頭に挙げたようなテナー奏者たちは比較的1つひとつの音をはっきりと発音していくのに対して、ヘンダーソンは必ずしもそうではありません。

確かにコルトレーンのフリーの演奏なども音を潰したりする表現が多くみられるのですが、ヘンダーソンの場合はそれとはまた異なる、均一でなく有機的な繋がりを持った、より肉声的なサウンドが特徴的だと僕は感じます。

特にこの傾向は後期になるにつれて強くなってきます。

この動画の1曲目、Stella By Starlightというスタンダード曲のソロなどは分かりやすいかもしれません。

持ち前の柔らかくこもったような音色とも相まって、テナーサックスの音ではあるんだけれどヘンダーソンの表現したい心の歌がよく聞こえてきます。

ヘンダーソンに限らずですが、演奏者の歌が聞こえてくるプレイというのは良い演奏の必須条件です。

にもかかわらず、彼の演奏が他のテナーの巨匠たちに比べていまいち一般ウケしないのは、その歌が必ずしも音程や拍子できれいに割り切れないことが多いというのがあるのかもしれません。

トランペッター目線からのオススメ作品

ここでは再掲しませんが、前回ケニー・ドーハムを取り上げた記事でも挙げた3作品は当然要チェックです。

またキャリアが長く、リーダーとしてだけでなくサイドメンとしても多くの作品に参加しているため、代表的な作品はあえて取り上げません。

ヴァーヴの3作品

Lush Life: The Music of Billy Strayhorn

So Near, So Far (Musings for Miles)

Double Rainbow: The Music of Antonio Carlos Jobim

ヴァーヴレコードより1992年から1994年にかけて、それぞれ異なるアーティストの曲を取り上げた作品を3つ出しています。

いずれも定番曲からちょっとマニアックな曲まで、恐らくどんな人でも満足させることのできるセレクションとなっています。

演奏内容が素晴らしいことは言うまでもありませんが、ジョー・ヘンダーソンが一筋縄ではいかないこれらの曲を調理するとどうなるのか、ということがよく分かる大変素晴らしい作品です。

Straight, No ChacerとFour

両作品とも1968年4月21日のギグを収録したアルバムで、リズムセクションはウィントン・ケリー(p)、ジミー・コブ(ds)、ポール・チェンバース(b)という夢のようなメンバー。

当然演奏は激アツです!

リズムセクションの合いの手一つ取っても「粋」という言葉がぴったりの気持ちのいい作品です。

その上ほぼ全曲スタンダード曲、しかも日本のジャムセッションでもよくコールされる曲ばかりで、アドリブの研究対象としても非常に参考になる作品です。



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。