「Perpetual Pendulum」極上なサウンドが楽しめる正統派オルガントリオ

Perpetual Pendulum

ゴールディングス・バーンスタイン・スチュワート「Perpetual Pendulum」

パーソネル

  • Peter Bernstein(Guitar)
  • Larry Goldings(Organ)
  • Bill Stewart(Drums)

アルバムトラック

  1. United
  2. Let’s Get Lots
  3. Libra
  4. Prelude
  5. FU Donald
  6. Come Rain Come Shine
  7. Little Green Men
  8. Reflections in D
  9. Perpetual Pendulum
  10. Lurkers
  11. Django

今年(2022年)にリリースした最新アルバムです。

アルバム名義は3人の名字を取っているのでリーダーを決めずメンバー全員の企画アルバムです。ニューヨークの街並みで3人横一列に並んで撮っているアルバムのジャケット写真からもみんな対等なポジションであることが伝わります。

オルガントリオ

このトリオではピアノではなくオルガンが入ったトリオです。

オルガンでジャズは珍しいので一応説明させていただきますと、オルガンプレイヤーはピアノのように左手でコードを弾きながら右手でメロディやソロを弾きさらにベースラインを足で弾くという1人で3役もこなすマルチなプレイヤーです。

さらに楽器の特性上ですが音の立ち上がり方も独特です。ちょっと触ったことがありますが足の音はクレッシェンドしてくるような感じで遅れて聞こえてくるので使いこなすのもきっと大変でしょう。

そして持ち運びも大変です。オルガンを常備しているお店はほぼないのでオルガニストは自身の楽器を持ち込みで来られんですが鍵盤部分もアンプも重くて大変そうです。。

こんなにクセがあって運搬なども大変な楽器なのでプレイヤー人口は少ないですがすごくリッチな音で渋さもあるというサウンド的には極上のサウンドが出せる楽器です。

そのオルガンと相性がいい楽器がギターと言われています。正統派ギタリスト、ピーター・バーンスタインとジャズオルガンの第一人者であるラリー・ゴールディングスが組めばもう間違いないのでこれは期待していいと思います。

ベーシストがいないのは珍しく感じるかもしれませんがオルガントリオといえばこの編成になります。

統一性のある正統派な選曲

アルバムの内容としては3人のオリジナル、スタンダード曲、エリントンやショーターなどのレジェンドのオリジナルのバランスが取れた正統派なアルバムです。

1曲目からウェイン・ショーターの曲”Unitetd”から始まりますがこれを一曲目に持ってくるあたり通な感じがしますね。知る人ぞ知る曲ですがニューヨークのセッションでたまに取り上げられる1曲でもあります。

ハードバップ時代の曲”Libra”や神秘的な雰囲気があるエリントンの”Reflections in D”の選曲もなかなかジャズマニア的な感じです。

こんなにマニアックなのにも関わらずどれを聴いてもトリオのサウンドに一貫性がありスッキリとした聴きやすさがあるのはシンプルなアレンジ、そしてこの編成ならではのサウンドがあるからでしょう。

最後に”Django”を持ってくるあたりも渋いです。前半に哀愁ある雰囲気からどんどんドラマティックに曲が展開されていくのはアルバムのクライマックスにぴったりです。

スタンダード曲に溶け込むメンバーのオリジナル

アルバムをパッとみた感じ1人2曲オリジナルまたは自分でアレンジしたものを持ち寄っています。

オリジナルといってもスタンダードやレジェンドたちの曲と混ぜても全く違和感がないトラディショナルジャズに寄ったものが多いです。

“Let’s Get Lots”はオルガンのラリー・ゴールディングスのオリジナル。テーマのオルガンのハーモニーがこの楽器ならではのサウンドで本当にゴージャズです。ゆったりとした雰囲気を持つ曲ですが意外にもラリーのソロは攻めた感じになってテーマとのギャップが面白い展開になっています。

その後に繰り広げられるバーンスタインのソロは歌うように弾いたり、モチーフになるフレーズを細かくして弾いたりバーンスタイン自身のソロ中でも緩急をつけているのでゆっくりな曲でもひきこまれるようなソロ展開をみせます。

“FU Donald”のメロディはハードバップな雰囲気を持っていますがこれはドラマーのビルスチュワートが作曲。

ソロが始まればインプロ重視のソロを展開させていきます。あえて曲を崩壊させる部分もありますが、あまりダラダラやることなくすぐテンポに戻ってテーマをやって終わるというこの簡潔さもいいです。聴きて側もしんどくないのでここでアルバムをストップさせずに次の曲が聴けます。

“Little Green Men”はピーター・バーンスタインのオリジナル。イントロやテーマの細かいところにこだわっていて3人のプレイに力が入った曲です。個人的にこのアルバムの目玉になる曲だと感じました。

中身はただのマイナーブルースですが歌うようなバーンスタインのギターに色付けしていくビル・スチュワートの一瞬一瞬のプレイが素晴らしいです。

ギターソロが終わりオルガンソロに移る瞬間のピックアップでみんな音を出さない瞬間があるんですが、音を出ていないこの瞬間に3人のエネルギーがギュッと詰まっています。オルガンソロが始まりそこから一気に音が溢れ出していく瞬間もまた爽快です。

アルバムタイトルである”Perpetual Pendulum”もピーター・バーンスタインのオリジナル。きれいなメロディラインとしっかりしたテーマ構成が効いていてこのトリオのサウンドがすごく広がるような曲になっています。

このアルバムを聴いた後の個人的感想

このアルバムを聴いて個人的には3人のインタープレイとテクニックが相当聴きごたえがあります。

ピーター・バーンスタインの歌うようなソロに加えて音色やハーモニーも一級品。ラリー・ゴールディングスのオルガンサウンドもゴージャスな上にソロでのアイデアの発展のさせ方は最初から最後までストーリーがつながっていてお見事です。

ドラムのビル_スチュワートは久々に新譜で聴いたのですがサウンドとテクニックは全く衰えることなく、使っているフレーズはここ20年以上一緒に聞こえます。

代わり映えしないとも言えますがそれがマイナスにはなっていなくてむしろ深みがさらに出てきて説得力がかなり強いです。

老舗の代々伝えられる伝統の味のごとく周りに影響されずに自分のスタイルをとことん貫いているビル・スチュワート。今回これを聴けて突き詰めるということはこういうことでもあるのかと深く感じました。

そしてオルガントリオの自由さですね。ラリー・ゴールディングスがベースもコードも担当しているということはバンドの意思疎通がかなり密に素早くできるということです。

エンディングをとってもどう終わるかがラリーのプレイ1つで簡単に他2人を導けるので3人がリラックスして演奏しているのが伝わります。

それと多分音楽の趣味や趣向が3人とも似ているのでインタープレイがとても自然に進んでいきます。誰かが何かを1つ弾いたらそれを2人が拾ってくれてアイデアを広げてくれる反応のスピードがものすごいです。

それもただスピードだけじゃなくお互いちゃんと理解しあって音楽を共有しあっているので聴く側も何が起こっているのかキャッチしやすいのかもしれません。

聴き終わった後はこのトリオのゴージャズなサウンドの影響を受けてポジティブな気持ちになりますし気軽に聴けるタイプのアルバムなのでリピートしたいと思えるアルバムです。

オルガンジャズ聴いたことないという方にもオススメですのでまずは過去のライヴから少しみて見てください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。