『カンザスシティ』ただのジャズ映画ではない演奏を楽しめる作品

Kansas City

ジャズを題材とした映画は世の中に多く存在しますが、僕はそういった作品を観るのがあまり好きではありません。

いや、嫌いと言ってもいいでしょう。

なぜなら自分が下手に知識があるために演奏の演技や演奏された音楽そのものが鼻についてしまうからです。

我ながらひねくれた奴だなあと思ってしまいますが、実際そう感じてしまうものですから、そのせいでストーリーなんて全然頭に入らなくなってしまうんですよねえ……

まあ元々、よっぽどのことがないかぎり映画のストーリーなんてすぐに忘れてしまう方ですが(笑)。

そんな僕でも、多くの方へオススメしたいJAZZをテーマにした映画がこの『カンザスシティ』です。

映画のストーリーは例によってあまり覚えていませんが、劇中に出演し、実際に演奏を行っているミュージシャンが素晴らしく、またその演奏そのものもいわゆるオシゴト的なものではなく非常にエキサイティングなものなんです。

映画カンザスシティとは

この映画はミズーリ州カンザスシティ出身でもあるロバート・アルトマン監督によって1996年に公開されました。

大恐慌、そして禁酒法真っ只中の1930年代前半の同地を舞台とし、ナイトクラブで演奏されるジャズとそれを仕切るマフィア、そして実在した政治家トム・ペンターガストを絡めたなんやかんやを描いた映画です。

上にも書いた通り、僕自身はストーリーなんてほとんど覚えていないどころかきっちり最後まで観たかどうかすらもあやふやなレベルなので、全部ネットで調べて入手した情報なのですが(笑)。

トランペットを吹きながら実在のジャズトランペッターであるニコラス・ペイトンがナイトクラブに入ってくるシーンがものすごくカッコよかったという記憶があります。

豪華な出演ミュージシャン

この作品では21人の非常に豪華な顔ぶれのジャズミュージシャンが出演しています。

多くの場合、ドキュメンタリー映画でもない限りはジャズをテーマとした映画であってもジャズミュージシャン自身が出演することは多くないかと思います。

しかしそういったものと比べるとこの作品に出演しているミュージシャンの顔触れは群を抜いて豪華と言うことができるでしょう。

せっかくなのでその出演メンバーをパートごとに全て書いてみます。

ボーカル

ケヴィン・マホガニー

アルトサックス

ジェシ・デイヴィス

デイヴィッド ”ファットヘッド” ニューマン

テナーサックス

ジェームズ・カーター

クレイグ・ハンディ

デイヴィッド・マレイ

ジョシュア・レッドマン

クラリネット

ドン・バイロン

トランペット

オル・ダラ

ニコラス・ペイトン

ジェームズ・ゾラー

トロンボーン

カーティス・フォークス

クラーク・ゲイトン

ドラム

ヴィクター・ルイス

ギター

ラッセル・マローン

マーク・ホイットフィールド

ピアノ

ジェリ・アレン

サイラス・チェスナット

ベース

ロン・カーター

タイローン・クラーク

クリスチャン・マクブライド

以上21人です。

 

いかがでしょう?

少しジャズを齧ったことのある方なら耳にしたことのある名前がいくつも出てきませんか?

この映画の本当に凄いと感じるところ

想像してみてください。このメンツが1930年代風の格好をし、しかも映画ですからそれっぽい細やかな演出と共に実際に演奏しているんです。

それだけでジャズファンには垂涎ものです。

ジャズ初心者から玄人まで楽しむことのできる素晴らしい演奏

そのうえさらに個人的に凄いと感じるところがあります。

この映画の舞台は1930年代ですから、当然演奏曲も演奏スタイルもその年代風になります。

実際に演奏しているミュージシャンは(当たり前ですが)公開当時の90年代半ばを生きている人達ですし、なんなら人によっては普段非常にアヴァンギャルドなスタイルの演奏をしている人もいます。

そんなミュージシャン達が映画に出演するからといって急に30年代風の演奏をしろと言われたらどこかしら演奏の流れに無理が生じてしまうはずです。

またこれは単なるライブではなく、あくまでも映画作品です。

ですから一般人からウケがよさそうな(しかしジャズの演奏に親しんだ人が見れば一目瞭然な)やたらとケレン味の利いた演出が演奏シーンにもちりばめられています。

普通に考えたらそんなことをすれば演奏自体が不自然になってしまいそうなもので、実際ジャズを題材として取り上げた映画の多くは演奏シーンが非常にショボいものが多いのです(だからそういう作品を観るの嫌いなんですよねえ)。

ジャズの演奏にそんなに慣れていない一般の方からすればそういったショボさは全く気にならないでしょうし、むしろそういった演出のおかげでジャズの演奏シーンを楽しく観ることができるという側面があります。

映画監督だって大多数の一般の方のためであれば演奏内容を大幅に犠牲にしてでもそういった演出はすべきなんだということはよく理解できます。

しかしこの『カンザスシティ』ではそういった「1930年代風」や「ケレン味」といった演出が利いていてもなお素晴らしい演奏内容なのです。

他の作品にありがちな演技としての演奏というよりは、単に演奏を楽しんでいて、そこでたまたまカメラが回っていただけというような感じなのです。

ですからこの作品での演奏シーンは本当にジャズ初心者の方から玄人まで楽しむことのできる数少ない例であると思います。

というわけで最後にカンザスシティのサウンドトラックをご紹介します。

有名なのはKansas City: A Robert Altman Film – Original Motion Picture Soundtrackです。

もうひとつはKC After Dark: More Music From Robert Altman’s Kansas Cityという作品ですが、廃盤になっているようで在庫状況は変動が多いようです。

※ちなみにAppleMusicで検索するとカンザスシティバンドというのがヒットしますが、これはそもそも日本人がやっているバンドで、今回紹介した作品とは一切関係のないもののようですのでご注意を。

 

いずれにせよ、まだ観たことのない方はまず映像の方を観ていただいた方が楽しめるかもしれません。

ストーリーはともかく、演奏シーンだけでも本当に楽しむことのできる素晴らしい作品です。



ABOUTこの記事をかいた人

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。