実例で見てみましょう
これまで解説した「ライターのフォロワー数」「モバイルファースト」という2つの要素が絡み合うことで、取材対象者とライターを対談させるという書き方が一般化した、と言えると思います。
例をあげてみましょう。
たとえば「モジカル」所属のライターなかもらが、僕にインタビューすると仮定して、一人称で執筆することを選択したとします。
するとこれまでであれば、
━━━いつごろ“モジカル”をたちあげようと思い至ったのか
僕が小田原じてんしゃ工房のスタッフとして参加後、すぐのことです。これまでの弊社の活動は、積極的な情報発信をする媒体がなく、どちらかというと既存客の口コミでお客様の増加を…
というような体裁をとっていました。もちろん、他にもいろいろ方法はありましたが、あくまで一例として。
この構成では、ライターが表に出てくることはないので、例えフォロワー数の多いライターを配していても、ソーシャル上で拡散されにくいでしょう。
場合によっては、誰が書いているのかも分からなくなります。
それでは、今度は取材対象者とライターの対談形式にしてみます。
のようになります。吹き出しはないところが多いんですが、地の文(会話調でないところ)を入れるのが個人的に好きなので吹き出しありを選んでみました。
とまあ、このように記事内に画像付きのテキストとして表記されます。
このように表記することで、執筆ライターのファンに読んでもらう、という目的をスムーズに達成できます。
もしくは、記事の一番最初の画像。
取材場所を背景にして中央に立ったポートレートの下に、
「こんにちは、ライターの○○です。」
という一文、見たことありますよね。
このスタイルは、モバイルファーストという考え方に即した場合も、非常に便利なものです。
内容を分割できる
テキストは、文学作品などを除いて、できるだけ短いセンテンスを重ねていくのが基本です。
例えば、
「私の名前はなかもら。趣味は空を見上げ、詩を吟じること。そして時折車を磨き、レモンサワーを飲むこと。休日にどこかに出かけたいと思いつつも、寝て過ごしてしまうのが悩みです。」
のように(ちょっと極端な例ですが…)、句点で区切りを付けていきます。こうすることで、1つのセンテンスを短くし、読み手もテンポよく読み進めることができます。
これが句点で区切られていないと、
「私の名前はなかもらといい、趣味は空を見上げ、詩を吟じ、車を磨いてはレモンサワーを飲み、休日にどこかに出かけたいと思いつつも寝て過ごしてしまうのが悩みです。」
と、一息で読むのが辛くなります。
こうなると、読み手がテンポよく読むということはできなくなります。
好みは分かれますが、句点で区切るのが一般的と言えるでしょう。
で、モバイルファーストと絡めた際、この句点が非常に重要になります。
なぜかというと、情報の表示サイズが小さいから。
前者の文章をWEBメディア表示にしてみましょう。
私の名前はなかもら。趣味は空を見上げ、詩を吟じること。
そして時折車を磨き、レモンサワーを飲むこと。
休日にどこかに出かけたいと思いつつも、寝て過ごしてしまうのが悩みです。
お分かりいただけただろうか…。
ちょっとホラーっぽさを挟んでみました。
そう、モバイルファーストの考え方で運営されるWEBメディアでは、改行をたくさん使用して、空白を空けることで文字がたくさん表示されて読みにくいという状態を解消しているんです(読みにくいというより、離脱率の問題かもしれませんが長くなるので割愛)。
改行を加えるのは、どこでもいいという訳ではなく、句点で分けないとちょっといびつな構成になってしまいます。
そのため、WEBメディアでは特に短いセンテンスを必要としています。
これは紙媒体ではなかなかに使用できません。
なぜなら、ページ数を増やしてしまうから。紙媒体では印刷、というものを基本に考えます。
この印刷は基本的にはオフセット印刷という方法で刷られます。
オフセットはハンコのような「版」という型を作成して、スタンプのような方法で印刷していきます(厳密には違いますが、想像しやすいように)。
この版を作成するのが、ちょっと高い。
そのため、印刷部数が50部増えても数万円の違いしかありませんが、10ページ増えると数十万円ということになる場合も。
また、無線綴じならまだしも、中綴じ冊子だった場合は4の倍数でページを増やさなければいけないので、1ページのつもりが+3ページして合計4ページ分、新たに作らなくてはいけなくなったり…。
もちろん、デザイン上の文字数制限など、他にも理由はいろいろありますが、これらの理由からページ数をむやみに増やすのは得策ではありません。
そのため、ページ数の概念や、縦スクロールで横書きだけというデザインバリエーションの少なさを持つ、WEB媒体だからこそできる手法だといえるでしょう。
「オウム返し」と「代弁」はライターのファンにもモバイルファーストにも効果あり
最後にご紹介するのは、あいづちです。
これもまさにWEB媒体だからこその手法。
例えば、また僕がなかもらにインタビューを受けるとします。
赤文字にしたところをご覧ください。
前者はオウム返しのような体裁なので、本来的にはいらない部分です。
ではなぜ入れているのかというと「画像を出すことでデザイン性を上げる」「長文を防ぐため」という2つの効果を狙ったものです。
上記の会話もそうですが、ライター、取材対象者の顔写真などが入った構成を使用した場合、会話の主体が変わるたびに画像が一枚入るので、デザイン上の見栄えがよくなります。
また、ライターの存在感がより強くなるので、ファンの人も記事を好きになりやすくなってくれるそう。
そして後者の赤文字。これは本来取材対象者が話すべきことです。
もしかしたら、実際の取材時には取材対象者の人が言っていたことかもしれません。
しかし、長文を嫌うモバイルファーストでは、その前のセンテンスにこの一文を加えられると、1センテンスのテキスト量が多くなってしまうので、できれば避けたい。
そこでライターに代弁させ、1センテンス、もしくは1パラグラフ内のテキスト量を分散させるという役割があります。前者のオウム返しにも同じ効果を期待できます。
この文章構成はほとんどのWEBライターが使用しています。また、口語体で執筆するのもWEBならではの特徴だと思うんですが、こちらはまた別の機会に。
ご自身のサイトでインタビュー記事を載せてみたい、という方。
もしもモバイルファーストの考え方を採用したサイトであるならば、今回解説した手法を使用すると、流行の感じにできるかもしれませんよ。
それでは、また次回。
- 1
- 2