梶井基次郎の亡くなった年齢を過ぎたので、一等いいえんぴつを一本買いました

梶井基次郎 檸檬

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みなさんには、好きな作家はいますか。

僕は、梶井基次郎が好きです。

短い生涯の中で、名作【檸檬】や【櫻の樹の下には】【城のある町にて】など、文学史に残る名文を残しています。

全集はオススメ。

ともすれば現代でも問題なく読み進められるような時代の先端をいった読点の使い方、繊細な風景描写は心の声を投影するかのように登場人物の心を語り、たった一文で桶に流れる水の美しさを夢想しては思わずため息が出る。

なんて文章が、高校生の僕のハートをがっちりつかみ、高見順、浅田次郎と僕的好きな作家ランキング不動のトップ3としてだいたい、いつも枕元に1冊は置いてあります。

そんな梶井基次郎、32歳という若さで結核により死去しました(ネットで見たら31歳になっていましたが、本には32歳死去とありまして)。

高校生のころは、病弱な若き天才の死というバックボーンもあいまって、アイドルにはまらない代わりに一種のアイコンとしてあこがれすら抱いていました…、が…。

先日、僕は33歳になりました…。

梶井基次郎が32年というわずかばかりの時間において世に残した作品と、人々への影響。そして、その年齢を越えてもなにものをも成し遂げることもなく、ハリボーのグミを食べながらネットフリックスで海外ドラマを見る自身の日々…。

社会的生産活動において足跡を残すことはなく、生物的活動においてもまたなんの足跡を残すこともなく、ただただ1人で自宅と職場の狭間にある仕事という名の無間地獄で咀嚼と排泄を繰り返す日々。

32歳のうちになにかできるかと思いましたが、なにもなしえず。

これは、いけない。

そう思って、誕生日にうとい僕が、初めて自分に誕生日プレゼントを買ってみました。

そう、梶井基次郎の檸檬に登場するアレ、です。

ファーバーカステルの鉛筆を買う

ファーバーカステル 鉛筆

こちらです。

ファーバーカステルの鉛筆。

同社はドイツのブランドで、高級筆記具を多数発表しています。

ずいぶん前にお仕事をご一緒したイラストレーターの方が、ファーバーカステルの色鉛筆でないとできないタッチがある、と話していたのを思い出します。

さて、なぜこの鉛筆を購入したのかというと、梶井基次郎の代表作、檸檬の中で「京都の丸善に赴いて一等いいえんぴつを一本買う贅沢をする」という、つつましやかで日常への郷愁を思わせる、印象的なシーンが描かれているから。

鉛筆を買ったからといってなにかが変わる訳ではありませんが「一等いいえんぴつを一本」とりあえず買うあたり、中年にさしかかる危機感が気の迷いを起こさせているのかもしれません…。

しかも、おそらくファーバーカステルの鉛筆ではないような気もするんですが、いつも使用している万年筆がドイツのペリカンなので、こちらを選んでしまいました…。

すべてが空回りをしているような気がしなくもない…。

はあ…、でも、これだけ高級な鉛筆を買ったことはありません。ちょっとワクワク。

あ、お値段は通販サイトでご覧ください。一本とは思えぬ、ぶったまげる金額です。

ファーバーカステル 鉛筆

なんとなく手に持ったときの感じがいい気がする。

ファーバーカステル 鉛筆

すごく鋭利に削られていました。

ファーバーカステル 鉛筆

キャップ部分は、

ファーバーカステル 鉛筆

鉛筆削りにもなります。

ファーバーカステル 鉛筆

とりあえずなんか書いてみるか。

ファーバーカステル 鉛筆

いざなにか書こうとすると、なにも思いつきません。

とりあえず心のままに。

ファーバーカステル 鉛筆

うん、書き心地が、いい。少し細めの握り心地で頼りないような気がしていましたが、そうでもありません。

わりと軽めでスラスラ書き進められます。

自分は仲間内では悪筆で通っていて、ゲラでもラフでも「これ、なんて書いてあるんですか」という質問を5回はいただくんですが、いつもよりちょっとキレイに書けた気がする。

ちょっとだけ…、いや、すいません…、汚い字です…。お恥ずかしい。

ファーバーカステル 鉛筆

上がファーバーカステル、下がそのへんにあったタダでもらった鉛筆で書いた字です。

力の入れ具合を同じにしてみたんですが、ファーバーカステルのほうがぶれにくい感じがします。

ファーバーカステル 鉛筆

たたずまいは圧倒的にいい。

ファーバーカステル 鉛筆

書いた文字よりも、書いているときの感覚がいいという感じでしょうか。

非常に細く先端が削れるので、先から手にかかる圧力が心地よくかかります。

くるん、と丸を描くと、特に分かりやすい。

ちょっとブランドモノ的なありがたみもありますが、編集者・ライターという職業柄、仕事道具にちょっぴりのこだわりくらい持ってたほうがいいですかね。

ファーバーカステル 鉛筆

ぐるぐるぐる。

梶井基次郎先生の足下にも及びませんが、とりあえず、一等いい鉛筆は、少し心を楽しくしてくれました。

さあ、33歳こそ、なにかを成し遂げられるよう、とりあえず目の前の仕事をがんばります。

粛々と、淡々と、冷静に、飾りつけられた世界を眺めすぎず、一歩一歩いきましょう。

ファーバーカステル 鉛筆

遺書みてぇ。

みなさんは、残りの人生をどのように過ごしますか。

 



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大学卒業後に新聞社に入社、その後ビジネス書の制作を得意とする編集プロダクションに転職。フリーでWEBや紙媒体での企画、編集、執筆、撮影などを担当し、現在はモジカル編集長。趣味の料理が高じてレシピ記事なども制作。