「Puttin’ It Together」コードがないことでハッキリとするエルビンのダイナミックなグルーヴ

Puttin' It Together

Elvin Jones「Puttin’ It Together」(1968年)

パーソネル

  • Elvin Jones(Drums)
  • Joe Farrell(T.Sax)
  • Jimmy Garrison(Bass)

トラックリスト

  1. Reza(by Ruy Guerra)
  2. Sweet Little Maia(by Jimmy Garrison)
  3. Keiko’s Birthday March(by Elvin Jone’s)
  4. Village Greene(by Billy Greene)
  5. Jay-Ree(by Joe Farrell)
  6. For Heaven’s Sake(by Elise Bretton)
  7. Ginger Bread Boy(by Jimmy Heath)

今回はドラマーのエルビン・ジョーンズがリーダーで出しているアルバム「Puttin’ It Together」のご紹介です。

これも個人的によく聴いていたアルバムで、私が学生の頃新宿のピットインでバイトをしていたときにサウンドエンジニアの先輩からいただいたアルバムでもあります(しかもエルビンのサイン入り!)

当時はエルビンすごいなー程度しか感じていませんでしたが、今回これを書こうと思って改めて聴くとサイドの2人もとてつもない音楽力とテクニックでアンサンブルしていることが分かりました。

エルビンの音楽にしっかりフィットする2人のプレイヤー

ジョー・ファレルはチック・コリアのリターントゥーフォーエバーや有名曲”Spain”の演奏に参加したことで多くのジャズファンに知られていると思います。

それ以前にもサド・ジョーンズ、メル・ルイス・オーケストラの正統派バンドやチャールス・ミンガス、アンドリュー・ヒルなどの少しアバンギャルドな尖った音楽も演奏します。

今回のアルバムは60年代後期という時代もあって、リターントゥーフォーエバーのようなフュージョン前のバリバリなハードバップサウンドで完成されています。

ジョー・ファレルの演奏はコルトレーンの流れを引き継いでいる感じもしますし、後に出てくるマイケル・ブレッカーやケニー・ギャレットの要素も感じます。

まあ時代的にはジョー・ファレルが先なのでマイケル・ブレッカーやケニー・ギャレットがジョーから影響を受けているのでしょう。

なのでそう考えるとコルトレーン→ジョー・ファレル→マイケル・ブレッカーといったコルトレーンからの時代の流れをつないでいるサックスプレイヤーでもありそうですね。

特に今回のアルバムはコルトレーンバンドのリズム隊にいたメンバーです。意識せずにはいられないのでしょう。

1曲目の”Reza”からジョー・ファレルのすごさが伝わります。コードレストリオのメリットであるコードから解放された自由さを身につけてどんどん溢れ出てくるようにソロが展開されていきます。

その場のインスピレーションでソロを吹いているはずなのに整理されたようにトリオのサウンドがまとまっているのはジョーが曲のモチーフやリズムのアプローチを大事にしているからでしょう。

そのほうがベースやドラムがサックスのフレーズに反応しやすいです。

さらにエルビンのコンピングの入れ方や落とし所をしっかり感じて演奏しているので、エルビンとジミーが作りだすグルーヴの波を乗りこなしているような印象を受けます。

ベースのジミー・ギャリソンは影から支えるタイプのベースプレイですが豪快なサウンドでエルビンのリズムが解決するところを狙って重い一発を放ったり、音域を考えながらジョー・ファレルのソロのムードを作ったりしています。

バンドをまとめるだけじゃなくよりグルーヴの推進力を強くして毎秒クリエイティブになるようにしているのがベースラインだけで伝わりますね。

エルビンのダイナミックなグルーヴを楽しめるアルバム

以前まではバンドメンバーを多く呼んでレコーディングしていたエルビンがトリオに切り替えた最初のアルバムです。

コルトレーンが亡くなった後なので何か思うことがあるのかもしれませんがもっと自分のプロジェクトに力を入れていこうと思って始め出したトリオです。

どの曲もエルビンのプレイスタイルのすごさがわかるんですが曲によって微妙にプレイを変えていることがアルバム通して聴いているとわかります。

1曲目の”Reza”ではラテンのリズムで始めています。このラテンはアートブレーキーのようなソリッドな感じと違ってふわっとしていますがキメるところはバシッとアクセントがあって初っ端からエルビン節がきいています。

テーマ途中のスイングに入ってからはジョーのサックスのメロディと一緒に歌うような感じでドラムを鳴らしていてサックスより強烈です。ソロに入ってからは太鼓系のコンピングのリズムを中心にグルーヴしていきます。

これがエルビンらしさだといえばそうなんですが、2曲目はジミー・ギャリソンをフィーチャーして彼の演奏を引き立てるようにブラシで淡々とサポートしていきます。

エルビンが後ろからニヤニヤしながら叩いている光景が目に浮かびますね。

3曲目の”Keiko’s Birthday March”はエルビンの奥さんのケイコさんにあてたエルビンのオリジナル。

かっこいいかどうかでいうと個人的にはダサいと感じてしまんですが(いい意味で)、ソロに入ってからのプレイスタイルはコンピングよりもライドシンバルの滑らかさを重視しています。

多分ジョーがフルートなので音量のことやアンサンブルのバランスを考えてコンピングしているものだと思いますが前後の曲順を考えて叩き方を変えているのがわかりますね。

曲の最後はエルビン節のきいたマーチのリズムでドラムソロを叩ききって終わります。本当に豪快です笑

4曲目はまたプレイのアプローチを変えてコンピング中心のグルーヴを刻んでいきます。

聴きどころはやっぱり左手の3連のコンピングです。この速いテンポで連続でコンピングできる身体能力はやっぱり別格ですね。

5曲目の”Jay-Ree”は少しフリーな要素が混じっています。ソロはモードのような1コードで進められていくのでジョーもジミーもコードに縛られず自由に楽しんでいる感じがわかりますね。

サックスソロが終わるとトレードのドラムソロで激しく全力で演奏のキャッチボールしていてあまりにもすごすぎて笑いが出てきます。本当にこんなパワーがどうやったら出るんでしょうか。

この激しさの対比をつけるように次の曲はジョーのフルートとジミーのベースの綺麗なデュオからバラード曲が始まります。

ここでも淡々と2人にスポットライトが当たるように後ろからじっくりサポートしてるエルビンが特徴的です。

最後は”Ginger Bread Boy”でアルバムの最後を締めます。重たいグルーヴですが軽快という矛盾するようなグルーヴで本当のエルビンらしさが感じられます。

意外と言ったら失礼ですがセッション的にランダムに曲を収録しているわけではなくてリスナーのことを考えながら選曲してプレイを変えてたりするので作り込まれているなと改めて感じました。

ジョーもジミーも素晴らしいことが改めて実感できましたがやっぱりなんだかんだこのトリオをまとめあげているのはこのエルビンなんだなと思いますね。

サイドマンとしてじゃなくリーダーとしても素質がわかるアルバムです。

むしろフレディ・ハバードの「Ready For Freddie」やウエイン・ショーターの「Night Dreamer」とかの名盤を聴き比べてみてもエルビンはサイドマンでやっているときよりも輝いている気がします。

 



ABOUTこの記事をかいた人

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。