「Way Out West」(1957年)
パーソネル
- Sonny Rollins(T.Sax)
- Ray Brown(Bass)
- Shelly Manne(Drums)
収録曲
- I’m an Old Cowhand (by Johnny Mercer)
- Solitude (by Duke Ellington)
- Come, Gone (by Sonny Rollins)
- Wagon Wheels (by Peter DeRose)
- There Is No Greater Love (by Isham Jones)
- Way Out West (by Sonny Rollins)
- I’m an Old Cowhand (Alternate Take)
- Come, Gone (Alternate Take)
- Wagon Wheels (Alternate Take)
今回はコードレストリオでCDをリリースしたソニーロリンズのアルバムのご紹介です。
そこまでメジャーなアルバムではないかもしれませんが個人的に結構気に入っているアルバムです。
何がいいかというとピアノやギターなどコード(和音)を奏でる楽器がバンドにいないのに、サウンドが明るく、気軽に聴けるのがこのアルバムのいいところです。
普通はピアノやギターがコードを弾いて曲にムードや色をつけてくれます。
逆に、コードを演奏する楽器がいなければ、パッとしない寂しい感じかゴリゴリ聴かせる男らしいバンドサウンドになるかのどっちかということが多いのですが、このトリオはそのどちらでもなく、演奏者の肩の力が抜けていて聴いているこちらもリラックスしながら聴くことのできるアルバムです。
リラックスしているけれども緻密なアンサンブル
3人で演奏するのは気が楽なのか、変にお互いに気を使わないでのびのび演奏しているのが伝わります。1曲目の”I’m an Old Cowhand”のシェリー・マンのイントロからリラックスしているのがもうわかりますね。
ロリンズのテーマのメロディもリズミックではありますが柔らかく伸びのあるトーンを響かせています。
アルバム全体的にセッションのような雰囲気はありますがちゃんとアレンジしている要素もあります。
曲はABABの構成でAはロリンズのメロディにレイ・ブラウンがレスポンスするようなメロディを弾います。Bはみんなで4ビートにいくようになっていてAとBとでセクションの違いをはっきり分けていて簡単にですがアレンジが施されています。
“Solitude”はよりのびのびとロリンズが吹いているのが味わえますね。音の芯の強さ、リズミックなフレージング、たまに間を置いて吹くこのバランスがロリンズらしくて心地いいです。
明るい曲ばかり選曲してるせいもありますがロリンズの音づかいはメロディックかつリズミックでとても聴きやすいですね。
同時期に活躍していたコルトレーンのような吹き方も意識していたとは思いますが柔らかくも芯のあるサウンドがロリンズらしいところかもしれません。
のびのび吹いているのを邪魔しないようにむしろ広げるかのようにレイブラウンとシェリーマンがさりげなくサポートしていくこのコンビもいいです。
2人のサウンドが心地いいバッテリー
普段はフィリーやトニーのようなガンガンいってグルーヴするようなドラマーが好きなんですがたまにシェリーマンの淡々とグルーヴするクールなドラムも聴きたくなります。
このアルバムで気づいたんですがシェリー・マンのプレイとガンガン弾くようなレイ・ブラウンとのコンビネーションだとパンチがありながらもスッキリとしたサウンドが心地いいですね。
レイ・ブラウンが下からグルーヴを押し出してそれに色づけするようにシンバルで軽快にサウンドを作っていくのが”Come, Gone”で堪能できると思います。
レイ・ブラウンはグルーヴだけでなく、ベースラインの音のチョイスにもセンスの良さが見えますね。
一番最初にも言ったようにこのアルバムはサウンドがいい意味でコードレストリオっぽくない明るさがありますがそれがレイ・ブラウンの歌うようなベースラインからきている気がします。
言葉で説明するより聴いたほうが納得すると思うのでジャズをリラックスして楽しみたいかたにはかなりオススメです。
アルバム制作時の裏話(?)
ライナーノーツにアルバム制作時のことが載っていました。
このアルバムを制作した時間はなんと明け方3時から録音をし始めて朝の7時に撮り終えたそうです。3人とも多忙なため深夜にしか時間がなくてしょうがなくこの時間に録ったとのことでした。
普通だったらさっさとレコーディングして帰りたいだろうと思いますが3人でレコーディングしだすとノリに乗ったらしく、収録曲を増やしたり長めの別テイクも録ったりするほど調子が良かったそうです。
録り終えた後ロリンズは興奮し、シェリー・マンもレイ・ブラウンも満足気だったそうです。
リラックスしつつ高いアンサンブル能力で楽しく音楽をやれるのがミュージシャンとして理想的な演奏ですよね。そんな理想的なムードがアルバム全体を通して感じれる1枚になっています。