Triveni II | トランペットとコード楽器の不思議な関係

※記事の中にアフィリエイト広告を利用しています。

Avishai Cohen『Triveni II』(2012)

created by Rinker
Anzic

パーソネル

  • Avishai Cohen(tp)
  • Omer Avital (b)
  • NASHEET WAITS(d)

収録曲

  1. Safety Land
  2. B.R. Story
  3. Nov. 30th(dedicated to my Mother)
  4. Music News
  5. Willow weep for me
  6. Woody’n You
  7. Portrait
  8. Get Blue
  9. Follow the Sound
  10. Art Deco(Alternate take)

アヴィシャイ・コーエンというトランペットプレイヤーがいます。

同姓同名のベーシストがいますが別人です。お間違えの無いようご注意を。

アヴィシャイ・コーエンというトランペットプレイヤーについて

生い立ち

アヴィシャイ・コーエンはイスラエルのテルアビブ出身。

3人きょうだいの末っ子として生まれ、8歳でトランペットを、10歳の頃にはRimon School of Jazz and Contemporary Musicのビッグバンドで演奏をしていたということですから驚きです。

ちなみにアヴィシャイの兄ユヴァルはサックス、姉アナットはクラリネットプレイヤーでもあります。

アヴィシャイ自身はボストンのバークリー音楽院で学び、1997年にはセロニアス・モンクコンペティションで3位入賞。

ニューヨークでも活動したのち、現在はイスラエルを中心に活動しているようです。

独特の存在感

近年のジャズシーンで台頭してきたトランペットプレイヤーは数多く存在しますが、彼はその中でも独特の存在感を放っているように思えます。

いわゆる正統派なジャズの流れを汲みながらも、彼独自の味付けでさまざまな作曲やアレンジを行うだけではなく、そのトランペットのフレージングそのものも何かのスタイルに囚われない、独自のプレイスタイルを貫いています。

トランペットがめちゃくちゃ上手くてプレイスタイルが”現代的”だとか”ニューヨーク風”なだけのトランペットプレイヤーなんて、ニューヨークどころかこの日本にだっていくらでもいますもんね。

トランペットとコード楽器の関係性

トランペットトリオという編成

この作品はトランペット、ベース、ドラムの3人のみによって演奏されています。

そう、ピアノやギターのようなコード楽器(和音を演奏できる楽器)が存在しないのです。

当たり前のことですがジャズの演奏では、多くの場合コード楽器が参加しています。

なんならピアノトリオなどのように、トランペットはいなくてもコード楽器はいる。そんな編成が当たり前です。

しかしそんな常識(?)を打ち破るかのように、彼の作品ではトランペット、ベース、ドラムのトリオによるものがいくつ存在します。

これに関して、あるインタビューでアヴィシャイはこういった趣旨のことを語っています。

「私が最も影響を受けたマイルス・デイビスがクインテットで演奏するとき(この場合はいわゆるマイルスの黄金クインテットのこと)、ピアノのコンピングがなくトリオの状態で演奏されることがよくあるのだが、それを聴いているうちにそういったサウンドに慣れていったのだろう」

いわゆる”ケンカセッション”

そういえばマイルスがレコーディングの際(『Bags Groove』(1957)『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』(1959)に収録)、共演者であるセロニアス・モンクに対して「俺のソロ中はピアノを弾かないでくれ」と伝えたといういわゆる”ケンカセッション”の逸話も思い出されます。

created by Rinker
Concord

ちなみにケンカってのはあくまでデマだった、というところまで含めてとても有名な逸話です。

コード楽器の不在による自由

かくいう僕自身もコード楽器抜きのトリオで演奏するのは大好きで、そのうちトランペットトリオなんてやろうかな、なんてくろんでいたりするのですが。

いずれにせよコード楽器抜きの編成でのトランペットの演奏は非常に自由度が高く、通常のカルテットなどに比べるとだだっ広い空白のキャンパスを綱渡りしながら、しかし全力で縦横無尽に駆け回っているような感覚になります。

ちなみにコード楽器抜きのトリオといえばソニー・ロリンズの『A Night At the Village Vanguard vol.1.2』などのようにサックス、ベース、ドラムによるトリオなんてものも存在しますが、容易に音を敷き詰めることのできるサックスと比較するとトランペットによるトリオの演奏はよりスリリングで自由度が高いなと感じます。

まあそこらへんは僕のトランペットに対してのひいき目もあるかもしれません(笑)

というわけで先に書いたように、今回ご紹介した作品以外にもアヴィシャイはトランペットトリオでの作品を出しています。

ぜひこの機会に素晴らしいトランペットプレイヤーであるアヴィシャイ・コーエン、そしてトランペットトリオによる演奏の魅力に触れてみてください。



ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。