前回ご紹介したチック・コリアですが他にもオススメしたいアルバムがあるので今回も引き続きもう1枚ピックアップしようと思います。
チック・コリア「The Musician」
パーソネル、アルバムトラック
Disc1– 1.Captain Marvel 2.Light As A Feather
- フランク・ギャンバレー(Guitar)
- スタンリー・クラーク(Bass)
- レニー・ホワイト(Drums)
3. I Hear A Rhapsody
- ゲイリー・ピーコック(Bass)
- ブライアン・ブレイド(Drums)
4.Spirit Rides 5.Special Beings
- ジョン・マクラフリン(Guitar)
- ケニー・ギャレット(A.Sax)
- ジョン・パティトゥッチ(Bass)
- ブライアン・ブレイド(Drums)
6.I’ve Got the World On a Strings 7.Spain
- ボビー・マックファーリン(Vo)
Disc2– 1.Overture
- ゲイリー・バートン(Vib)
- ハーレムストリングスカルテット
2.Your Eyes Speak to Me
- ゲイル・モラン・コリア(Vo)
3. If I Were A Bell 4.Nefertiti
- ウォーレンス・ルーニー(Tp)
- ゲイリー・バーツ(Sax)
- エディ・ゴメス(Bass)
- ジャック・ディジョネット(Drums)
5.Zyryab 6.Mi Nina Lola
- ジョージ・パルド(Sax)
- カーレス・ベナベント(Bass)
- ニーニョ・ホセレ(Guitar)
- ジェフ・バラード(Drums)
- コン・チャヴィカ(Vo)
Disc3 1. CC’s Birthday Blues 2.Caravan
- ウイントン・マルサリス(Trumpet)トラック1のみ
- マーカス・ロバーツ(Piano)
3.Hot House 4.Dolphin Dance 5.Cantaloupe Island
ハービー・ハンコック(Piano)
6.Ritual 7.Silver Temple
- エリック・マリエンサル(Sax)
- フランク・ギャンバレー(Guitar)
- ジョン・パティトゥッチ(Bass)
- デイヴ・ウェックル(Drums)
チック・コリア生誕70歳を記念して作ったブルーノートでのライブアルバムです。何日にも分けてライヴを行ってその中からセレクトされているので豪華メンバー盛り沢山になっています。
アルバムとしてはお高く感じるかもしれませんが絶対損はしない超オススメアルバムです。
チックの音楽を凝縮させたおいしいとこどりのアルバム
こんなにもメンバーが多いのはチックが積み上げてきた音楽があるからこそです。
まずはReturn To Foreverでのメンバー。70年代を代表するフュージョンバンドでの演奏です。
当時のメンバーですがさらに深みが増したサウンドになっています。
次は個人的に大好きなFive Piece Band。今回しっかりフィーチャーされていて当時好きだったバンドサウンドが十分に味わえる演奏です。
Five Piece Bandで一度アルバムを作っていますがそのアルバムではドラマーがブレイドではなくヴィニー・カリウタでした。
個人的にはブレイドでの演奏が好きだったので今回このメンバーで大満足です。
ボビー・マックファーリンとの演奏も聴きどころです。この当時進めていたデュオでボビーの自由な想像力とそれにすぐ反応するチックの機転の良さがわかるデュオです。
スペインは出だしから雰囲気が出来上がっていてそこからテーマに繋がっていくシーンは最高です。
Disc2の始めはゲイリー・バートンとのデュオにストリングスを混ぜてクリスタルサイレンスのアルバムをより広げる世界になっています。
3,4曲目はマイルスを思い出させるような選曲と人選で本物のマイルスバンドを思わせるかのようなサウンドです。
チックは後期のマイルスバンドでもっとエレクトリックなことをやってましたがこういうアコースティックなマイルスバンドにも憧れていたのかなとつい思ってしまうほどマイルスへのリスペクトを感じます。
Disc3ではなんとウイントン・マルサリスとマルサリスバンドのピアニスト、マーカス・ロバーツの共演。
ウイントンのニューオリンズを感じさせるサウンドはさすがです。ここでの“Caravan”の選曲もウイントンファンなら聴きたくなる選曲ですね。
その後にはハービーとのデュオ。3曲中2曲はハービーのオリジナルでこの2曲を聴いてわかるのが友として同じ時代を歩んできた尊敬するピアニストとしての選曲だなと感じました。
最後はエレクトリックバンドでのメンバーで派手に締めくくりアルバムを聴き終わった時にはつい拍手をしてしまうほどCDで聴いていても臨場感があります。
どれもこだわって演奏しているのですがチックのジャンルの幅広さに改めて驚かされるアルバムです。
さすがに一気に通して聴くには大変ですが通して聴いても飽きない編成と曲順の構成になっています。
チックのコミュニケーション能力すごさ
バンド形態がデュオ、トリオ時もっと言えば大状態のエレクトリックバンドではそれぞれアンサンブルの仕方が違います。
全部チックの音楽なのでチックがバンドのことを把握しているのは当然のことのように思えますが、これだけたくさんそして色んな音楽性を持ったミュージシャンとアンサンブルするとなるとコミュニケーション能力がずば抜けていないと成立しません。
例えばブライアン・ブレイドとデイブ・ウェックルではプレイスタイルが違うのは明白でグルーヴ感、音色、コンピングの仕方もまるで違います。
ジャック・ディジョネットとのバンドはマイルスがテーマになっているのでコミュニケーションだけでなくコンセプトまで違います。
ドラマーだけでなくウイントンやエレクトリックバンドが同じディスクに収録されてるということだけでも音楽性に振れ幅があるのがよくわかりますよね。
なのでどこまで自分がバンドメンバーやその楽曲のスタイルに寄せるのかはバランスが難しかったりするはずです。
それなのにチックは迷いもなくみんなの音楽性に沿うようにアイデアをポンポン提示していくのでバンドサウンドがすごくナチュラルに展開していきます。
コミュニケーション能力だけでなくチックのサウンドもアンサンブルに関わってきているのではないでしょうか。
チックはジャズピアニストにしてはサウンドが明るくてタッチが軽いのでそれで毛嫌いしているリスナーもいたりします。
ですが逆にクセがないことを生かしてどんなメンバーのサウンドにもフィットさせるのがチックの長所だと個人的に思います。
チックはバンドごとにサウンド自体を変えるというよりは、そのメンバーとコンセプトに対してどういう距離感でどうアプローチするかでバンドのサウンドをまとめているのではないかと今回のアルバムを通して聴いて改めて感じました。
臨場感が高まるMC
ライヴレコーディングなので曲の間に少しMCがはさんであったりします。
チックがメンバーのことをどう思っているのか、逆にメンバーからチックにコメントがあったりボーカルのボビー・マックファーリンが演奏し終わった後に「Chick Corea!!!」と叫んでいるところも愛を感じてこみ上げてくるものがあります。
演奏も素晴らしいですがこういうMCも含めて聴くと70歳を飾るライヴを一緒に共有できた気持ちになりますね。
そして聴き終わった時にはチックの音楽、そして全てを包み込むような人柄に感謝したくなるのをアルバム通して実感します。