文章力が低下しています。
僕の。
年を経るごとに頭の中で馬と鹿が駆け回るようになり、会話の端々に「あれ、あれなんだけどさ」とか「あー、そうそう、あのー、あれどうなっているんだっけ」とか「なんだっけこれ、あれだよねこれ、そうだそうだ。これ、それとおなじあれじゃん」などといった“あれ”、“これ”、“それ”が見受けられるようになりました。
お仕事は編集者とライターです。言葉を扱う仕事です。
しかし、文章表現においても「これ、なんて表現するんだっけ、“です”、“であります”、“そうです”? どれだっけ?」のように、正しい表記を思い出せなくなりました。
そこで、あるものを新調することに。
類語辞典を最新版に
類語辞典です。
新人のときはよくお世話になっていましたが、最近は登場回数が減っていました。
初心忘れるべからず…。
言葉の意味を調べる国語辞典などとはちがい、日本語表現の言い換えや近しい言葉の使用例を調べることができる辞典です。
中面はお見せすることができませんが、たとえば「個体がぶつかって起こる音を表す語」という言葉の表現は69種類掲載されています。
類語辞典の使い方の実例
「奪う」という日本語表現で一例を挙げます。
奪うは、相手の意志に反して取り上げること。
マンガなどでも「奪う」という言葉はよく使用されますが、なんでもかんでも同じ意味で使用していいという訳ではありません。
本来的には、主語や状況によって同じ意味の言葉を使い分ける必要があるからです。
王位、つまり国の主権を「奪う」場合は、正確には「簒奪(さんだつ)」と表現します。
“王位を奪う”はNGな訳です。“王位を簒奪する”が正しい表現です。
また、行動によっても「奪う」は変わります。暴力によって「奪う」場合は「強奪」です。
“銀行から現金を奪う”はNGです。“銀行から現金を強奪する”が正解です。
また、もともと自分が所有していたものを取り返す際は「奪回」です。「奪還」も同じ意味として使用できますが、土地を取り返す場合であれば後者の使用が推奨され、前者はほとんど使用されません。
このように、同じ意味の言葉でも使用するシーンによって表現が変わる、これを網羅するのが類語辞典です。
広辞苑などでも同じように調べられますが、類語辞典のほうが、上記のような表現を探しやすくなっています。
一文の中に同じ表現が重複したり、同じ段落に重複するのは読み手によい印象を与えません。
近年は細かな表現には着目せず、より平易に文章を執筆することが求められますが、知っていて選択することと、知らずに選択することでは表現力に大きな差が出ます。
モジカルは趣味のサイトなのであまり気にしないようにしていますが、お仕事で納品する文章に関しては、僕も結構気を遣っているんです…。
マンガなど、時代や舞台の設定が多岐にわたるものでは特に気にしたほうがいいものです。
編集者ならば類語の表現は注意を払う部分。
イラストだけではなく、文章にも気を配ってあげると審査なども通りやすくなるかもしれませんね。
ほかにも、副業でライターを営んでいる人の中にはこういった表現を使い分ける人が多くありません。
同業者との違いを見せつけるためにも、一度使用してみてください。
劇的な変化を手軽に演出することができます。
自分は角川の出版物を使用していますが、類語辞典は索引方法や表記が出版社によって異なります。
また、掲載される言葉もちがうことから、専門的に使用したい人は何冊か出版社ちがいで持っているといいでしょう。
数万円もするようなものではないので、投資効果は顕著に表れるはずです。