こんにちは野澤です。花粉症が年々ひどくなり最近はティッシュが手放せなくなってきました。
それでももうお花見シーズンなのでカメラ片手に桜を撮りに行きたいものです。
さて今回は名ピアニストのハンク・ジョーンズのトリオをドラマー目線でご紹介してみようと思います。
そもそもハンクジョーズがどういうピアニストか知らない方のために軽くご紹介しておきましょう。
ハンク・ジョーンズ(1918-2010)
アメリカのミシシッピ州で生まれミシガン州で育った7人兄弟の長男です。弟にはトランペッターのサド・ジョーンズ、ドラマーのエルビン・ジョーンズと、いずれもジャズファンなら誰もが名前を知るようなプレイヤーがいるというなんともすごい家族ですね。
ピアニストとしても活躍しましたがアレンジャーコンポーザーという立ち位置でもジャズ界に貢献しました。
その貢献がアメリカのジャズの組織に認められてたくさんの表彰を受けています。これだけ国の組織から表彰されるミュージシャンはなかなかいないかもしれません。
ハンク・ジョーンズのルーツ
ピアノを幼少期から始めたハンク・ジョーンズの原点はファッツ・ウォーラー、アート・テイタム、アール・ハインズ、テディ・ウィルソンなどラグタイムピアノやビッグバンドで活躍したピアニストたちから影響を受けています。
ジャズが生まれた時代に活躍したピアニストたちがルーツになっている上でビバップを発展させたチャーリー・パーカーやキャノンボール・アダレイの「Somethin’ Else」のアルバムに携わるなど多くのバップミュージシャンとビバップという音楽と自身のスタイルを築き上げてきました。
なのでそれはもう音の説得力が桁違いです。ジャズの原点を大事にしたリアルな音楽を発信しているので彼を参考にしている現代のジャズミュージシャンも結構います。
演奏スタイル
ラグタイムのようなスタイルが彼のオハコですが他のピアニストとは違って優しさを感じるタッチ、トーンは落ち着いているけどきらびやかな音色を感じるピアニストです。ビバップの弾きまくるスタイルでも大人の余裕を感じます。
カウント・ベイシーのようにスペースをとってソロを弾くスタイルもめちゃめちゃセンスがいいです。
どう弾いてもハンク・ジョーンズにしか聴こえないのにこれが極上のジャズだというサウンドを常に放っている歴史的なジャズピアニストです。
そんなレジェンドのハンク・ジョーズのピアノをどういうドラマーが支えたのか。ドラマー目線で彼のアルバムを2枚ピックアップしてみようと思います。
オススメのアルバム
The Great Jazz Trio「Collaboration」
ハンク・ジョーンズは1970年代から”The Great Jazz Trio”というバンド名でも活動していて主にロン・カーターとトニー・ウイリアムスのトリオで演奏していました。
そのハンク・ジョーンズのグレートジャズトリオに弟のエルビンがドラマーとして入ったアルバムがこの「Collaboration」です。
アルバムのジャケットも兄弟でおでこを合わせて見つめているジャケットになっていてジャズファンにはたまんないですね。
ベースにはリチャード・ディビスというエルビンの一番のお気に入りベーシストを呼んできています。優しいピアノのハンク・ジョーンズと激しいドラムのエルビンがどういう風にマッチするのかも期待して聴くと面白いかもしれないですね。
内容は全編スタンダードでその中に“Summer Time”も入っています。”Summer Time”といえば映画「Porgy And Bess」のオープニング曲ですね。
ハンク・ジョーンズも過去に「Porgy And Bess」というアルバムをレコーディングしておりその時のドラムはエルビンに頼んでいます。なので今回はその時のセルフオマージュとして入っている曲なのでそれも過去のアルバムと比較して聴くとより楽しめるかと思います。
ほぼどの曲もエルビンが好き放題やっていてそれを優しく、ときにはその悪ふざけに乗っかるようなピアノで音楽を作っていく様がアルバムに込められています。
兄弟が戯れあっているようですごく微笑ましいハッピーなアルバムです。それでも演奏テクニックはもの凄いので高度な遊び方をしています。。
もちろん曲によってエルビンもトーンを使い分けているので”Long Ago And Faraway”ではリチャード・デイビスのアルコを引き立てていますしハンクジョーズのソロになっても淡々とブラシでグルーヴとムードを作っていきます。
自身のソロになっても次に繋ぐような情緒的なソロをとるのでエルビンの魅力がよく出ているアルバムですね。そしてこれがまさかのエルビンの遺作にもなります。
「The Trio」
これは割と初期の頃のハンク・ジョーンズのアルバムでタイトルも「Trio」というすごく直球な名前になっています。
アルバムが出た当時はまさにピアノトリオが好きなジャズファンにはたまらないアルバとして世に浸透しました。
バド・パウエルのピアノトリオのようなスタイルをとっていますがハーモニーの面もメロディの発展の仕方も周りのミュージシャンを上回っていて革命的な進化を遂げたアルバムと言われています。
このアルバムではドラマーがケニー・クラークが参加しています。ケニー・クラークといえばビバップドラムのスタイルを作ったドラマーとして有名なドラマーです。
このアルバムでは全編ブラシで演奏されていてスネアとハイハットとバスドラだけでレコーディングしています。途中ライドも出てきますがほぼ楽器がこの3つだけなのに最初から最後まで音楽的で全く退屈しません。
そして大体どの曲もドラムソロが入りますがこれがまたとてつもないのです。ブラシでスネアだけを演奏しているのですがこれがリックとか手グセフレーズではなくしっかりその場でクリエイティブに演奏しているので常にフレッシュな感じに聴こえます。音色やリズムもはっきりしてエッジが立っているのでかなり気持ちいいです。
ハンク・ジョーンズのマイルドな感じにすごくフィットするドラミングでこれは個人的にも名盤認定しています。
今回はハンク・ジョーンズを引き立てるドラマー2人とそのアルバムをご紹介しました。この2枚を改めて聴きこみましたが理想のピアノトリオのサウンドが詰め込まれた内容です。ハンク・ジョーンズの引き出しの多さと彼の音色や音づかいには本当に脱帽しました。
エルビンが好き放題やってもサウンドをまとめられたりスムーズにグルーヴを作ってくれるケニー・クラークだとさらに疾走感が増します。
ドラマー目線で見て感じたのはハンクジョーンズを支えるドラマーがすごいということだけではなく、ハンクがドラマーの本領を発揮させるのが上手いということでした。恐るべしハンク・ジョーンズ。。