実はブルーノートのアルバムだった?レーベルのコンセプトと少し変わったアルバム7選

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こんにちは野澤です。気がつけばもう年末に差し掛かり2025年が見えてきましたね。

次の年のスケジュールも埋まりつつ2025年のカレンダーを見ていると、特に年の瀬の近づきを感じます。

さて今回はブルーノートレコードのアルバムからリリースされたものの中で、ジャケやサウンドがブルーノートっぽくないものをピックアップ。

ブルーノートのサウンドはさまざまな要素から独特の“ブルーノートサウンド”を醸し出しており、聞く人が聞けばすぐに分かるようになっています。

しかし、中にはこのブルーノートサウンドっぽくないアルバムも存在し、ジャケの見た目またはサウンドがブルーノートのコンセプトと全然違うと「このアルバムブルーノートだったの?」と面白い発見があって聴いていると新鮮に感じます。

今回は違った角度からアルバムをピックアップしていきますね。

チャーリー・ラウズ「Bossa Nova Bacchanal」

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ユニバーサル ミュージック

デュークエリントンビッグバンド、ディジーガレスピービッグバンド、そしてセロニアス・モンクのバンドで活躍していたサックスプレイヤー、チャーリー・ラウズのアルバムです。

ビバップからハードバップまで硬派に活躍していたラウズですが、自身のアルバムではボサノバのアルバムをブルーノートからリリースしました。

チャーリー・ラウズ自身はさまざまなアルバムをリリースしていますがブルーノートでのレコードはこれが最初で最後です。

ジャズを専門とするラウズですがボサノバやラテンのリズム、ハーモニーに積極的に取り組んだものになり、バンドメンバーもギターのケニー・バレルのみがジャズミュージシャンで他のメンバーはブラジル系音楽のミュージシャンになっています。

ブルーノートのいわゆる4100番台のアルバムで1960年代のアルバム。

しかしジャケットのデザイン、サウンド、コンセプトどれをとってもブルーノートっぽくありません。

内容はとても爽やかでBGMとして聴いても楽しい1枚となっています。

最後の曲だけはボーナストラックでスイングの曲をレコーディングしていて、ここだけブルーノートっぽい色が出ていますね。メンバーはフレディ・ハバード(Trumpet)マッコイ・タイナー(Piano)ボブ・クランシャウ(Bass)ビリー・ヒギンズ(Drums)という豪華メンバーなのでこれはこれでレアな音源です。

アイク・ケベック「Easy Living」

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ジャケットがブルーノートっぽくないというコンセプトで選んでみました。

テナーサックスプレイヤーのアイク・ケベックの「Easy Living」。見た目はコンピレーションアルバムにも見えますがしっかりスタジオでソニー・クラーク(Piano)、ミルト・ヒントン(Bass)、アート・ブレイキー(Drums)がリズム隊として参加しています。

デザイン要素的にはブルーノートなのに色使いや要素の配置が大分異なります。

音楽の中身としてはブルーノートらしい作品で、洗練されていない土臭いようなブルースだったり勢いのあるスイングの曲など割とブラックミュージックなジャズです。

アルバムの最後の最後で”Easy Living”を演奏していますがこれが渋くてとても最高なテイクとなっているので必聴なアルバムです。

the 3 sounds「Moods」

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ふたたびブルーノートっぽくないジャケット。

このテーマであればやはりスリーサウンズのジャケ。

3soundsのアルバムデザインはどれもブルーノートらしさはそこまでありません。

しかしこれにいたってはなぜこのデザインにしたのかわかりません。。

写真ではなくイラストでのアルバムはこの時代のブルーノートにしてはかなり珍しいです。

音楽の中身もブルーノートの感じとは少し違う気がします。

リバーブや音質の仕上がりはブルーノートな感じがしますがピアノトリオのサウンドはとてもライトでブルーノート特有の泥臭さはありません。

ピアニストのアーマッド・ジャマルやオスカー・ピーターソンが好きな方はハマりそうなサウンドなので興味ある方はぜひ聴いてみてください。

アンドリュー・ヒル「Grass Roots」

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ブルーノートレーベルでマニアックなプレイヤーといえばピアニストのアンドリュー・ヒル。

割と聴く人を選ぶ難解な音楽をするので聴くときは心して再生する感じのアーティストと言えるかもしれませんね。

ですが一度彼の世界に入るとリピートしたくなるような中毒性があります。

アンドリュー・ヒルは60年代半ばから70年代までブルーノートで多くのアルバムを残していますがどれもブルーノートらしさがあるジャケットです。

これだけは唯一ポップな仕上がりになっていてブルーノートらしくないジャケットの仕上がり。

メンバーはリー・モーガン、ウッディー・ショー(Trumpet)、ブッカー・エルビン(T.Sax)、ジミー・ポーター(Guitar)、ロン・カーター、レジー・ワークマン(Bass)、フレディ・ウェイツ(Drums)という強者揃いです。

中身はジョー・ヘンダーソンのようなゴリゴリ系のハードバップの曲が揃っていますがバンドサウンドのトーンは落ち着いていて意外と聴きやすい中身になっています。

むしろトランペットの歌うようなソロだったりコルトレーンのようにブローするブッカー・エルビンのサックスは聴き応えがあります。

ドナルド・バード「Electric Byrd」

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個人的にいうと一番ブルーノートっぽくない1枚といえばこちらでしょう。ジャケもブルーノートっぽくないというか70年代前半を思わせるジャケット。

トランペッターのドナルド・バードはハードバップをメインでやっていましたがここにきてエレクトリックのものをはじめました。

やりたいコンセプトとしてリズムセクションはループするようなフレーズでグルーヴを作り、その上でドナルド・バードがアドリブをとるというマイルス・ディビスの「In A Silent Way」に似たアルバム。

ちょっとマイルスの焼き回し感があるのと単純にこういう音楽よりハードバップの方が合ってるんじゃないかと個人的には思ってしまいます。。

レビューは低くないというか結構好みが分かれているので聴く人が違えば良さがわかるかもしれませんが、ハードバップのドナルド・バードが好きな人はちょっと違う印象をこのアルバムで受けるでしょう、ぜひご自身の耳でチェックです。

ホレス・シルヴァー「In Pursuit of the 27th Man」

どうしてこういうジャケットになってしまったのか。。

オシャレ度は全くなくシンプルなような、アーティステックなようなジャケットになっていますが、、中身はとても素晴らしいです。

アルバム全体的には名ピアニストであるホレス・シルヴァーらしいファンキーな内容になっていてブレッカー兄弟が参加してとてもフレッシュな演奏です。

私の大好きなミッキー・ローカーもドラムで参加していてホレスとの相性がいいベースのボブ・クランシャウもエレキベースで参加しています。

この時のトランペットのランディ・ブレッカーはリー・モーガンのようなヒップな感じもありますしサックスのマイケル・ブレッカーも艶やかでオシャレな音色に仕上がっています。

それを鼓舞するようなホレスの16分の細かいコンピングもカッコいいです。

アルバムトータルのサウンドもパリッとしていてブルーノートのイメージはそこまで感じませんがお馴染みのヴァンゲルダーのスタジオでレコーディングされているというので驚きの1枚。

リッチな音質に仕上がっています。

トニー・ウィリアムス「The Story of Neptune」

クラシックによくありそうな見た目をしていますがゴリゴリのジャズCDです。

マイルス・ディビスの第2黄金期バンドの時のドラマーであるトニー・ウィリアムスのアルバム。

1993年にリリースなのでロックドラムのような大きいセットを使っています。

個人的にはロックドラムのようなバスドラムの音色だったり無機質なキンキンしたシンバルの音色が得意ではないのですがトニーは例外です。

メンバーはトランペットにウォーレンス・ルーニー、ピアノにマルグリュー・ミラーという個性が強いメンバーが参加しています。

サイドで参加しているこの2人の演奏にも注目です。

トニーといえば「Life Time」のようなフリーだったりアバンギャルドのイメージがありますがこのアルバムはしっかり曲として成り立っていますしメロディも綺麗なものが多いです。

その綺麗さや雰囲気を演出させるレコーディングの仕上がりになっていて聴き心地としてはサラサラしてとても滑らかなサウンドです。

トニーが暴れるようなドラムを叩いても綺麗にまとまって聴こえるのでくどさを感じません。昔のブルーノートの音質感ではなく今のブルーノートのサウンド寄りのデジタルな感じがします。

 

以上。

前回紹介したアルバムやソニー・クラークの「Cool Strutin’」やキャノンボール・アダレイの「Somethin’ Else」、デクスター・ゴードンの「Our Man In Paris」などがブルーノートレーベルらしいアルバムだと個人的には思っているのですが、少し掘りさげるとちょっと変わったコンセプトで世に出しているアルバムも結構ありますね。

全てはミュージシャンに寄り添うというブルーノートのコンセプトから来てるのかもしれません。ぜひ今回のアルバムも楽しんで聴いてみてください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。