楽器初心者が最初につまづく、移調楽器ってなんだろう

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移調楽器という言葉があります。 ジャズで用いられることの多い楽器では、トランペットやサックスなどが当てはまるのですが、この移調楽器というのがジャズの演奏を学ぶことに際して第一のハードルになるのですね。

今回は、ちょっとややこしいけれど、ジャズを演奏するなら必ず覚えておきたい移調楽器について書いてみましょう。

そもそも移調楽器とは

移調楽器とは、上にも書いたとおりトランペットやサックスなどのことを指します。

基本的な考え方は「その楽器のドの運指で演奏したときにCではない音が出る」という考え方でおおむね間違いはないでしょう。

例えば移調楽器ではないピアノのド(C)と移調楽器であるBbトランペットのド(Bb)とは異なる音ですが、それぞれの楽器に対応した楽譜では上記のようになります。

逆に実音でCの音をそれぞれの楽器で表すと上記のようになります。

なぜこんなややこしいことをするのかと言うと、演奏者の負担を減らすためです。

例えばジャズで用いられるトランペットはBb管が主流ですが、実際にはトランペットの種類はC、Eb、D管などが存在し、これらは主にクラシックの演奏で用いられています。

これらのトランペットを持ち替えて演奏する場合、同じ指づかいのものは同じ音符で書いてあった方が演奏者の側からすると楽だよね、ということでこのような表記になったようです。

トランペットに限って言えば、ジャズでトランペットを持ち替えるということはかなりのレアケースですから、なかなかその恩恵を感じることはないような気もします。

一方、比較的頻繁に持ち替えの行われるサックスでは移調楽器の楽譜表記の仕方は理にかなっているということになるかもしれません。

演奏者が絶対音感を持っている場合は逆に混乱する原因ともなりうるのですが、多くの演奏者はそうではありませんから、やはり移調楽器の存在には一定の合理性があるのだと思います。

移調楽器の種類

移調楽器の種類をおおまかに記しておきます。ジャズで用いられることの多い楽器では以下のようになることが多いものです。

Bb

トランペット(Bb) ソプラノサックス テナーサックス

Eb

アルトサックス バリトンサックス

移調のやり方

ジャズを演奏する場合は音符だけでなくコードネームの移調も必要です。

1.音符の書き換え

実音(=コンサートキー)で表記された楽譜を演奏するには読み替えなくてはなりませんが、多くの方はその場で読み替えるのに慣れていませんから、事前に書き換えておく必要があります。

特にジャムセッションで歌いやすいキーに書き換えた楽譜を持参するボーカリストは、それぞれBbとEbに書き換えた楽譜も用意しておくと良いでしょう。

ジャムセッションで実際に用意しているボーカリストはほとんど見かけることがありませんし、そういう人に直接文句を言う人もまずいませんが、内心「ボーカリストはしょうがねえな…」と諦められていることも少なくありません(笑)。

仕事ならまだしも、ジャムセッションで共演するプレイヤーはプロではないのですから、お互い気持ちの良い演奏をするためにその程度のマナーは必要でしょう。

実音→Bbへの書き換え

これはそんなに難しくありません。実音表記の音符を全音上げるだけです。

もし12キーの調号が頭に入っている人であればシャープ2つ増し(C→D)です。

実音:ドレミファソラシ

Bb:レミファ#ソラシド#

実音→Ebへの書き換え

実音表記の音符を短三度(半音が3つ分)下げます。

もし12キーの調号が頭に入っている人であればシャープ3つ増し(C→A)です。

実音:ドレミファソラシ

Eb:ラシド#レミファ#ソ#

2.コードネームの書き換え

楽譜を書き換える場合にはコードネームも書き換える必要があります。

書き換え方は上に書いたものと同じで、当然メジャーやマイナーなどのコードの種類は変わりません。

ちょっと話は飛びますが、個人的には音名はイタリア語(ドレミ)で、コードネームは英語で読んだ方が混乱しないかなと思います。

コードネームと音名が同じ英語で、しかも実音なのか移調楽器のキーで話しているのか、となってしまうとぱっと聞いてわからなくなってしまいます。

僕だけかもしれませんが(笑)。

以下は、実音から移調したコードネームの例です。左が実音、右がタイトルのキーに移調したコードネームになっています。

実音→Bbへの書き換え

C→D

C#(Db)→D#(Eb)

D→E

D#(Eb)→F

E→F#(Gb)

F→G

F#(Gb)→G#(Ab)

G→A

G#(Ab)→A#(Bb)

A→B (A#)

Bb→C B→C#(Db)

実音→Ebへの書き換え

C→A

C#(Db)→(A#)Bb

D→B

D#(Eb)→C

E→C#(Db)

F→D

F#(Gb)→D#(Eb)

G→E

G#(Ab)→F

A→F#(Gb)

(A#)Bb→G

B→G#(Ab)

 

いかがでしょうか?

こうして列挙してみると面倒そうに見えるかもしれませんが、一旦書き換えの仕方を覚えてしまえばだんだんスムーズに書き換えることができるようになってきます。

楽譜をその場で読み替えるにしても音符をスムーズに読み替えるのはちょっと難しいのですが、コードネームだけであれば比較的簡単に読み替えられるようになるかと思います。

現在はジャズスタンダードバイブルやリアルブックのBb版やEb版が出版されているので書き換えや読み替えの技術はそこまで必要とはされないのかもしれません。

しかしジャズではスタンダード曲でもコードチェンジを手書きで微調整することはままあることですから、そういった楽譜を読んだり書いたりする場合にはやはり必須となる技術です。

必ずしもすらすらと読み替えられなくとも良いのでジャズをやるのであれば必ず身につけておきたい知識ですね。



ABOUTこの記事をかいた人

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1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。