ジャズはスタンダードだけじゃないオリジナル曲の美しい現代プレーヤー

ジャズと言えばアドリブがメインというイメージが強いようですが、実際のところ、曲そのものもとても大事なんです。

一部のジャズを除いて、アドリブであっても勝手に演奏している訳ではなく、基本的には曲の要素に沿って演奏しています。

コード進行が素敵であったり、テーマのメロディが綺麗だったりすると、それに沿ったアドリブ演奏が展開されるため、お気に入りの曲となっていきます。

古くから演奏されているジャズのスタンダードナンバーはどれも綺麗なメロディーで、アドリブも美しいものが多いですよね。

ですが、現在はスタンダードナンバーばかり演奏していながら著名なジャズミュージシャンというのは多くありません。

オリジナル曲で勝負しているジャズプレイヤーの方が多いのです。

プレイヤーの技量だけではなく、作曲のセンスやコンセプトなど、トータルの音楽力がリーダーアルバムに如実に表れます。

そんな中、プレイはいいのに曲がよくわからない、サイドで参加しているときはいいのにリーダーになると地味だ、とかということもよく見受けられるようになりました。

【あくまでも個人的意見ですのであしからず…(汗)】

せっかく、ジャズを聴いて興味が出て、もっと好きになりたいのに聴いても曲がよくわからないとなると敬遠したくなってしまいますよね。

アドリブも大事ですが曲そのものがいいと思えないと、音楽はなかなか楽しめないものです。

【何度も言いますがあくまでも個人的意見です。聴きにくいだけで嫌いなわけではありません…。(汗汗)】

ジャズは一般的によく聴かれる音楽ではなくなってきているようです。

そのため、今はどういうジャズが流行っているのかわからないし、何を聴いたらいいのかわからないという人も多いでしょう。

今回は個人的に思う、作曲センスがいい現代のプレイヤーに焦点をあてて紹介していきたいと思います。

聞いたことがないプレイヤーがいればぜひチェックしてみてください。ジャズの楽しさが広がること間違いなしです。

今回は、

  1. 聴きやすいのを聴きたい
  2. ガンガン盛り上がるのを聴きたい
  3. 美しいのを聴きたい

とタイプ別に分けていますので自分の求めているものと照らし合わせてチェックしてもらえればと思います。

それでは早速見ていきましょう。

聴きやすいのを聴きたい

ジョン・エリス

まずはジョン・エリスというテナーサックス奏者です。

彼の楽器の音色はとても柔らかくて優しく歌うような感じで、曲もそういうコンセプトで作曲されていることが多いです。

無理にシステマティックではないのでメロディラインが覚えやすく何回か聴くと口ずさめるような曲が特徴的です。

普段ジャズミュージシャンは、演奏する際にプレイヤーそれぞれが好きに演奏しています。

しかし「譜面に書いてあるリズムのところだけ合わせてね」というキックというルールを守って演奏します。

そのキックが出てくると基本的にはみんなでそこの部分に合わせてリズムを演奏するので、それぞれが好きに演奏していても1つにまとまる瞬間ができます。

そのキックをメロディの間に入れたり、展開する前に効果的に入れて曲が成り立っているのですが、アドリブを取るときもその部分が生きていると、自然とまとまる瞬間ができて聴いていて気持ちいい所でもあります。

そして何よりのオススメポイントとしてはトラディショナルな雰囲気なのに、新しい感じがするということです。多分メロディの感じがトラディショナルで、フィールやコード進行が現代的なのでそう感じるのでしょう。

昔のジャズが好きな人でもスッと入り込める部分があって、新しいものを感じさせるという作曲センスを持ったプレイヤーです。

オススメアルバム

・「It’s You I Like」

・「By A Thread」

カミラ・メッザ

ギタープレイヤーであり素晴らしいボーカリストでもあるカミラ・メッザです。南米出身の影響もあってブラジリアンをルーツにしています。

作曲能力が高いのはもちろんですが、スタンダードやブラジルの曲を彼女自身がアレンジしたものがすごくよくて、聴けば聴くほどよく作られているなと惹きつけられます。

どのアルバムもサウンドが明るく仕上がっていて聴きやすく、曲順も自然で一曲がわかりやすいです。

バンド全体の音量のダイナミクスの変化、ギターでベースまたはピアノと同じメロディラインを演奏するユニゾンが効果的だったり、弦楽器の入れどころなどセンスが光っています。

オススメアルバム

・「Traces」

・「Prisma」

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Cd Baby Inc

ガンガンいくものも聴きたい人へ

Walter Smith III

最初に言っておくとオラオラしている感じではなく、知的な感じで音楽的に攻めています。

プレイスタイル的にはバランス型で音数多く吹いてブロウするときもあればメロディックに歌ったりもします。

ただ沢山吹くだけではなくバックとのつながりを常に意識しているのでアンサンブル重視のプレイヤーです。

常に吹いているように見えるかもしれませんがリズムセクションのやっているささいなことまで反応しています。

作曲も自分のメロディラインを活かすために、どういうことを他のプレイヤーにさせるかが明確になっていることが多いです。

もちろん全体的なアルバムのバランスを考えてプレイヤーそれぞれが自由にやってどうぞという曲もあります。ですがその中でもだいたいキックが散りばめられています。

 

メロディラインが微妙に複雑だったりしますが、かっこいいコード進行とサウンドが合わさって何度も聴きたくなるようなクセになるオリジナル曲がたくさんあるのでオススメなアルバムが多いです。

オススメアルバム

・「Still Casual」

・「III」

ベン・ウエンデル

こちらも今勢いのあるテナー奏者です。

割とシステマティックに演奏するプレイヤーですが曲は聴きやすいものが多いです。

曲のテーマのメロディ部分をシンプルにしながらもバンドサウンドに厚みが出るようにプレイヤーそれぞれに弾くフレーズが割り当てられています。

特にベースとピアノのユニゾンを多用することがあります。

ベン・ウェンデル自身もユニゾンを吹いてフレーズを強調したり、またはユニゾンに違うフレーズをかぶせて違う展開に持っていったりうまくユニゾンを使っています。

ベン・ウェンデルはテーマの前後にある間奏部分で何度も同じフレーズを繰り返し吹くことが多いです。繰り返すことによってバンドが一つにまとまるので繰り返すフレーズを大事にしているのだと思います。

特にこのようなエンディングのドラムソロで有効ですよね。他のプレイヤーの機転も効いていてさらに音楽の幅が広がっているのがわかります。

どの楽器のパートを取っても面白いことをやっているのでそれぞれの楽器にフォーカスしながら聴くと何度でも楽しめますね。

曲が聴きやすくアンサンブルの中身が凝っていると繰り返し聴きたくなるものです。

オススメアルバム

・「Seasons」

・「What We Bring」

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コアポート (コロムビア)

美しいサウンドが聴いてみたい人へ

マイク・モレノ

マイク・モレノというギタリストは、とにかく音色が美しく独特なサウンドを持つプレイヤーです。

彼の演奏をしばらく聴いていると、割と使うフレーズはパターンが決まっているような気がしますが、間の使い方のセンスがあって不思議と毎回新鮮に聴こえます。

ちなみに同じフレーズを多用しているだけで引き出しがそんなにないんじゃないのかと失礼なことを思うくらい、彼のフレーズは頭に残りやすいのです。

ですが一度日本の友人がマイク・モレノのレッスンを受け、その通訳で横にいたときにレッスン内容を見ていたんですが、かなりビバップに精通しているんだなと驚くほど良くわかりました。

しかも運指のバリエーションが素人目から見ても相当引き出しがあってトップレベルはやっぱり違うなと痛感したものです。

そんな彼が作る曲はダークで美しいものが多いです。基本的にはギター、ピアノ、ベース、ドラムのカルテットで活動しています。

ハーモニーの流れが美しく、メロディーの雰囲気とコードが一体となって曲が展開されていきます。このライヴ映像の1曲目でそれがよくわかりますね。

テーマは凝ってソロに入るとワンコードまたは4つくらいのコードを繰り返してアドリブパートを聴きやすくしたりすることもやっています。

全体的なバランスをとりつつコード進行+音色の美しさの魅力があふれる曲を作っている素晴らしいギタリストです。

オススメアルバム

・「Lotus」

created by Rinker
Cd Baby Inc

・「Another Way」

アーロン・パークス

今のジャズ界には欠かせないピアニストです。アーロンもマイク・モレノと同じように美しい音色と独特のリズム感を持っています。

本人としてはタイム感が正確になりすぎないようにリズムの練習はほどほどにしているらしいです。

メトロノームのように正確になってしまうとこの独特のリズム感が整われて個性が薄くなってしまうからでしょう。

テンポに忠実というより一緒に演奏しているプレイヤーに寄り添って演奏しています。

アーロン・パークスは自己のバンドの形態は固定せず、自分がやりたい音楽に合わせてどんどん変えてきていますが基本はピアノトリオかそれにギターを入れたカルテットが多いのが特徴です。

アーロンのオリジナルは慣れないとダークに聴こえるかもしれませんがアップテンポもバラードもとてもメロディが綺麗です。

 

この”Nemesis”という曲のイントロ部分のピアノは雨を表現していてギターは雷をイメージして書いたそうです。

情景も見えるような曲作りをしているので雰囲気がありますよね。

そして同じ音をずっと繰り返し弾いていますが、その音を軸にコードだけ変わっています。

軸になる音をコモンノート、日本語では共通音と言いますが、コモンノートが続くことによって音楽がとどまっているように聴こえます。

それでいてコードが変化して曲が動いていくので、とどまっている音と動いているコードの対比で曲の面白さが増しています。

今はLittle Bigという名前で自己のバンドを進めています。

周りのメンバーはまだあまり知られるメンバーではないですがアーロンの世界観がたっぷり味わえるサウンドをみんなで作っています。少しエレキな感じとピアノのアコースティックの感じが上手く混ぜ合わさっていますね。

オススメアルバム

・「Invisible Cinema」

・「Little Big」

まとめ

今回挙げたプレイヤー全員に共通することですが、テーマのメロディとコード進行のバランスがとてもいい感じに作曲されています。

テーマ部分が凝っていたらソロの部分をシンプルにしたりするなど、全体的なバランスも考えているので聴く方も飽きずに最後まで聴いていられますね。

そして曲に入れるキック、ユニゾンの使い方を心得てバンドを自然に作曲者のやりたいサウンドに仕上げています。

各アルバム、曲はどれも素晴らしいので本当に必聴物です。

現代のジャズプレイヤーたちの名曲を楽しんでいきましょう。



ABOUTこの記事をかいた人

野澤 宏信

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。