ロック・ポップスとジャズドラムのちがいを実例付きで解説

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ドラムという楽器を演奏している人の多くは、ロックやポップスといったジャンルを演奏していることが多いですよね。

そしてだんだんとスキルが上がるにつれ、興味を持つのがジャズです。

しかし、実際に演奏してみようとしても、ロック・ポップスとこまかな部分に違いがあり、なかなか実際の演奏に踏み込めない人もたくさんいると思います。

今回は、ドラムの演奏経験はあるけれど、ジャズの知識はあまりない方向けにロック・ポップスと、ジャズでの演奏の共通点や違いを解説していきます。

この部分を抑えれば、ジャズドラムへの第一歩を踏み出すことができるかもしれませんよ。

ドラムの役割は3つの要素

まずはバンド内におけるドラムの基本的な役割の確認です。

この部分をおろそかにしてはいけません。

ドラムには主に3つの役割があります。

それが、

  1. 一定のリズム、グルーヴで曲のビートを支える
  2. フィルインを入れて曲を盛り上げる
  3. 曲の雰囲気を変える

です。

この3つはどのジャンルでも同じく必要ですが、ジャズでは顕著にドラムに求められる役割でしょう。

それぞれ解説します。

一定のリズム、グルーヴで曲のビートを支える

まずはビートです。

ロック、ポップスであれば、主に8分音符を軸にした8ビートや、16部音符を基準にした16ビートと呼ばれるリズムを使うことが多いでしょう。

最近の音楽チャートにのるような曲は、ほとんどの場合8 or 16ビートです。

一方、ジャズでは4分音符をしっかり出す、4ビートと呼ばれるリズムを使うことが多くなります。

ジャズにおいていは、ハネるスウィングフィールで演奏することが多いため、基本的には8分音符もハネて演奏するのも特徴です。

ジャズを演奏したことのないドラマーの方は、ここに抵抗を感じる人が多いようです。

なぜ抵抗があるのかは後ほど説明しますが、一定のリズムをバンドに提供するという役割においては、ロック・ポップス、ジャズのいずれでも一緒ですが、ビートの種類と感じ方(フィール)という点では違いがあるということを覚えておいてくださいね。

フィルインを入れて曲を盛り上げる

この言葉はドラマーの方ならよく耳にしますよね。

フィルインとは、曲を盛り上げてバンドのサウンドをカッコよくしたり、次の展開につないだりするリズムやフレーズのことを指します。

おおむね、フィルインが入る場所は曲が展開するセクションに入る前の小節です。

そうすることで、バンドをスムーズに次の展開に導いてあげることができるようになります。

ドラマーにとっては美味しい部分だったりするので別名“おかず”とも呼ばれたりしますね。ロックポップスをやってきた方は同じ感覚で取り組んでください。

違いとしては、ここもフィールの違いがあります。

ロック・ポップスでは8分音符16分音符がリズムの元になっていますが、ジャズの場合だと3連符や6連符が元になります。

実例を交えて見ていきましょう。

曲の雰囲気を変える

8ビートの右手を、ハイハットからライドシンバルに変えたり、フロアタムに変えたりするだけで曲の雰囲気は大きく変わります。

マイケル・ジャクソンのBlack or Whiteが参考になります。PVのインパクトが大分ありますが、そこはスルーで(笑)。

3:48あたりまで飛ばしていただいて、4:20辺りから曲の雰囲気が変わります。

これは右手をハイハットからフロアタムにして、雰囲気が重くなっているためです。

音楽では雰囲気を変えることをカラーを変えるといいます。何色とは判断しづらいですが、明るい色・暗い色・軽い色・重たい色と捉えている感じです。

ジャズも同じように、ドラムを起点にカラーを変えることができます。

1:08の所から曲の雰囲気が変わっています。

この場合はブラシからスティックに変えていますね。

ただ、それだけではなく、リズムもフワッとさせてこの曲のこの部分のカラーを作っています。

その後ソロに入ったときに4ビートになり、流れが進んでいく感じがしますよね。これがカラーを変えるという、ドラマーの役割です。

大まかに一定のリズムを演奏して曲の土台を支えることと、フィルインで曲を盛り上げたり雰囲気を作ったりすることによって、ドラマーには音楽自体を支えるという役割があります。

ジャンルによって種類はちがくとも、ビート・フィルイン・カラーのこの3つは、どれも共通していることで、どんなドラマーも同じことを考えながら演奏してるはずです。

では、なんで同じことをやっているのにジャンルによってこんなに違いがあるのでしょうか。

それは演奏手法によって異なってきます。

演奏の仕方の違い

ここでもう一度、8ビートとジャズでよく演奏するスイングビートを比べてみましょう。

ロック・ポップスにおいて重要な楽器は、右足のバスドラムと左手のスネアです。

拍でいうと1,3拍目にバスドラム、2,4拍目にスネアがくると「ドン、パン、ドド、パン」という感じになり、いわゆるな8ビートに聞こえますよね。

クイーンのWe Will Rock Youは、まさに同じビートです。右手の存在がなくても充分雰囲気が出ていますね。

一方、ジャズでは右手を使用してライドシンバルで4ビートのリズムを刻み、ハイハットを左足で2,4拍目に踏んでリズムを出していきます。

面白いことに、ロック・ポップスとは真逆の手足なんです!

なので、今まで意識していた手足とは逆になるので、また初心にかえった気持ちになるかもしれません(笑)。

動画では左手も入れていろいろやっていますが、中心になるのは右手と左足です。

ちなみに、日本ではこのジャズのリズムパターンのことをシンバルレガートと呼んでいますが、少なくともアメリカでは通じません。

実際にアメリカにいたときに「シンバルレガートが〜」という話を現地のミュージシャンにすると、首をかしげられるばかりでした。

向こうでは“シンバルパターン”“スイングパターン”“4ビートリズム”と呼ばれることが多いので注意が必要です。

少し話が逸れましたが、メインは右手のライドシンバルと左足のハイハットということは覚えておきましょう。

ジャズにおいての右足のバスドラムは、人や状況によってですが4部音符で踏むこともあります。

ただ、決して4部音符で踏むときは音量は大きくぜず、つま先で体感1センチ動かして軽く踏みます。

羽でなでるくらい軽く踏むので、この動作をフェザーリングと呼びます。

ジャズのベースはロック・ポップスで使用されるエレクトリックベースではなく、オーケストラなどでも演奏されるより太い低音のウッドベースのプレイヤーが多いため、バスドラムの音量が大きいと低音がぶつかってベースの音程を消してしまいます。

バンド内のプレーヤーは、ベースの音を頼りにソロをとったりコードをつけています。

他のプレイヤーにベースが聞こえなくなると、とても大きな障害を生むのでジャズでは極力小さく踏みたいですね。

最初は難しいですがやったことがなければ練習しておいたほうがいいでしょう。

そして左手です。

右手、左足、右足で一定のリズムを叩いて土台を作り、左手は別の役割を担当します。それはコンピングと呼ばれます。

コンピング

コンピングとは合いの手のことです。

会話でいう相槌ですね。

皆さんが人と会話をしているとき、話している相手の顔だけを見て、なにも声を出さないということはあまりありませんよね。たいてい、相づちを打っていると思います。

黙って話を聞いているだけだと、恐い人か話に興味のない人みたいで嫌な感じを与えてしまします。

これはジャズの演奏でも同じです。ビートをしっかり刻んでいる上で、左手でソリストのフレーズに相づちを打つように応えてあげます。

ジャズは会話をするんだ、とよく言われます。

ソロを演奏する人が話し手で、伴奏する人たちやコンピングする側が聞き手に例えられるからです。

ドラマーは伴奏楽器であるため、1曲を通してほぼ聞き役側なのでコンピングはとても大事なのです。

最初はどうしたらいいかわからないと思うので、まずはスイングフィールを叩きながら2拍目か4拍目の裏に左手でスネアを入れられるように練習しましょう。

そして、あまり速くないミディアムスイングの曲を流しながら自分のここだと思うポイントでコンピングを入れてみるのがいいですよ。

慣れてくれば、ソリストがブレスを取っているところや、間を取っているところで入れてあげると成立しやすくなります。

コンピングはドラマーだけではなく、ピアノやギターもおこないます。

この2人は和音(コード)をリズムにのせてコンピングしているので、曲を聴くときはこれらの楽器も一緒に聴いてあげるとコンピングの参考になりますね。

体で覚えたものが自分のフレーズ(ボキャブラリー)となっていくので、初めのほうは積極的に入れていきましょう。

教則本も使って練習すると、ボキャブラリーを増やしやすいのでオススメです。

ロック・ポップスにはないコンピングは、ジャズ初心者の方の目が行きがちですが、ビートをしっかり出すということもとても大事です。

これからジャズに取り組んでいこうと思っているドラマーの方は、まずしっかりスイングリズムを体に入れてからコンピングにトライしていきましょう。

違いを知ってジャズに取り組む

ということで、今回はロックポップスとジャズドラムの違いについて解説してきました。

ドラマーの役割は「一定のリズムを演奏しながらフィルインでバンドをまとめていく」ということはほぼ同じですが、1曲を事前に練ってメロディや歌詞をメインに聴かせたいロック・ポップス、曲を軸とするが楽器同士のコミュニケーションを通じて即興を広げていくジャズとで、演奏の仕方が変わることがわかりましたね。

これから真剣にジャズドラムに取り組んでいきたい方は、しっかりスイングフィールを抑えてコンピングに取り組んでみるといいですよ。

レジェンドと呼ばれるドラマーの演奏をよく聴いて、練習するときは自分のシンバルパターンをスマホやレコーダーで録音して聴き返すと上達がいっそう早くなります。

ぜひ、ジャズドラムに取り組んでみてくださいね。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。