ジャズの譜面はこう読みます

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今週のお題はジャズの譜面の読み方、ということなのですが今回はちょっと首をかしげてしまいました。

そもそもジャズの楽譜はシンプルなものが多いですし、ジャズだからといって特別な楽譜の読み方をするわけでもありません。ついでに余計なことを言えば僕は楽譜が苦手だし(笑)。

しかし今までジャズの演奏をしたことのない方にとっては、基本的に1枚かそこらの楽譜だけで、長い時には10分をゆうに越える演奏をすることのあるジャズの演奏は一体どうやっているものなのか疑問に思われることがあるようです。

まあ確かに言われてみればそうかもしれません。

というわけで今回はごく初心者の方へ向けて、ジャズの楽譜について解説してみようと思います。

もちろんジャズの曲と言っても曲の構造が複雑なものは今回説明することが当てはまらないこともあります。

そのため本記事で取り扱うのはあくまでスタンダード曲と呼ばれる一般的なものとします。

テーマとコーラス

ごくごく初歩的なことですが、この2つのキーワードは確認しておきましょう。

テーマ

これは曲のメロディ。つまり、譜面に記されている音符のことです。

初心者の方はとりあえず楽譜に書いてある通り演奏することができれば大丈夫でしょう。

多くのスタンダード曲は32小節とか36小節、長い曲で64小節など、キリのいい小節数がテーマとなっていることが多いです。

曲の始まりとアドリブソロの後に演奏され、それぞれ始まりに演奏されるものを前(まえ)テーマ、アドリブソロの後に演奏するものを後(あと)テーマと呼ばれます。

コーラス

変則的な曲を除く場合、基本的にはさきほど解説したテーマ1回分の長さが1コーラスに相当します。

もし「この曲のトランペットソロ、2コーラスやります」といったらテーマ2回分の長さのアドリブソロを演奏するということです。

ジャズではなぜこんなにシンプルな楽譜で長々と演奏を続けることができるかというと、テーマで用いたコードチェンジをアドリブのコーラスとして丸ごと繰り返しているからです(もちろん冒頭にも書いた通り例外はありますが)。

ちなみにブルースは1コーラスが12小節で、テーマを演奏する場合は2回で1セットの24小節として演奏されることが多いので覚えておきましょう。

コーラス数について

テーマと同じコードチェンジを何コーラスも繰り返すということは理論上(?)いくらでも演奏を続けることができますから、初心者の方にとっては何コーラスアドリブをすれば良いのか不安になるかもしれません。

原則的なことを言うならば、演奏で表現したいことがあるのならばコーラス数に構わず何コーラスでも演奏すべきですし、表現したいことがないのならダラダラと演奏を続けることはよくないでしょう。

あくまでジャムセッション超初心者向けのアドバイスをするとすれば、大体1~2コーラス程度を目安にしてみればいいでしょう。

もちろん演奏に少し慣れてきた方はそれ以上のアドリブソロを演奏することにもトライしてみると良いと思いますが、混雑しているジャムセッションであまりにも長々とやりすぎるともしかしたら、白い目で見られることもあるかもしれません(笑)。

そういえばニューヨークで参加したジャムセッションでは1人当たりのコーラス数がやたらと長く、しかもストーリーがどんどん展開していくのに度肝を抜かれたものです。

もちろん素晴らしい演奏技術を持った人が多かったのですが、なんというか1人ひとりのもつ演奏に対しての熱量が根幹から違うのかなと思ってしまいました。

逆にチャーリーパーカーが活躍したような時代のレコーディングでは、当時のレコードに記録できる曲の長さの問題から少なめのコーラス数になることが多かったようです。

ちなみにドラム、ベース、ピアノ、トランペットの4人編成で1人2コーラスずつソロを取ったとすると前テーマと後テーマを含めて合計10コーラス。

それにバース(この後バースとはなにかを解説します)を合計2コーラス含めたとしても12コーラスです。

1人2コーラスのソロというとどちらかといえばコンパクトな演奏ですし、ここではイントロやエンディングも除外していますが、全体的に見るとそれなりの長さの演奏になるということがお分かりいただけるかと思います。

バース

単に「バース」というと2つの意味があります。

1つは主にボーカリストがテーマの前に歌う“Verse” すなわちテーマの前奏部としてのバース。

もう1つはソリストとドラムが、4もしくは8小節ずつソロを交互に演奏する“Bars=小節”という意味でのバースです(ソリスト2人でソロを交互に演奏するVer.もあります)。

今回取り扱うバースは後者で、4バースとか8バースなどと各々が演奏する小節数がその呼び方として用いられます。

もちろんバースの間もコードチェンジはアドリブソロのときと変わりません。

1つの曲の譜面の進行をそのままに、交互に演奏するだけです。

当然ドラムの演奏の間もコードが進んでいくことに注意しましょう。

Donna Leeなどではバースの小節数をどんどん短くし、非常にスリリングな演奏になることもあります。

参考は、ウィントンマルサリスの演奏。アルトサックスとドラムのバースが、3分36秒~続きます。

バラードの場合

バラードのときはちょっと特殊かもしれません。

バラードは当然ながらゆっくりとしたテンポですから、ジャムセッションなどで演奏者が多い場合は1人、半コーラス(譜面半分の小節数)でソロを回すこともあります。

また後テーマが本来のテーマの後半部分から演奏されることも少なくありません。

初心者の方がバラードに挑戦することはあまりないでしょうから、あまり心配する必要はないかもしれませんが、一応書いておきます。



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1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。