ドラマー必見 プロに教わるブラシの使い方でドラムの演奏の選択肢を広げる方法

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こんにちは、ドラマーの野澤です。

久しぶりにドラムについて話していきます。今回ピックアップするのはブラシです。

ジャズというものがニューオリンズで形作られたときには(諸説ありますが…)、すでにブラシというものが使われていました。

そのため、どういうなりゆきでこの“ハケ”を、「ドラムの道具として使おう」となったのかは定かではありません。

しかし、今もなおジャズドラムにおいて使う頻度はとても多いのです。

そんな重要なブラシですが、ジャズを演奏するドラマーであればやはりできることに越したことはないですね。

というわけで、今回はブラシの使い方の基礎知識として必ずおさえておきたいポイントを見ていきましょう。

  • ブラシをなぜ使うのか
  • ブラシの使い所
  • 回し方(左手)
  • 叩き方(右手)
  • 参考になるCD、動画、教則本

これを順番に解説していきます。

それでは、そもそもなぜジャズという音楽ではよくブラシを使うのか、というところから見ていきましょう。

なぜブラシを使う必要があるのか

ドラムという楽器の演奏では、「スティックを使えばすむ話で、ブラシなんてなくてもいけるんじゃないの?」と思う人もいると思います。

結論的に言うと、スティックだけあれば大体のシーンで事が足ります。ジャムセッションや時にはライヴでもブラシの出番がないまま終わることもないわけではありません。

それなのに、なぜブラシのテクニックが必要か。

それは、選択肢が増えるからです。

選択肢が増えるとどういうことができるかというと…

  • 静かな雰囲気を作れる
  • バラードが演奏できる
  • スティックとの対比を作れる

静かに演奏できるのはとても大事なことです。

なぜならドラムも含めてジャズで使用される多くの楽器はアコースティック楽器であるために、電子的に音量をコントロールしにくいという特徴があります(ライブ時にマイクなどで音を拾って音量を上げますが、あまり電子的に音量をいじると細かなニュアンスが崩れることもあるため)。

そのため、ほか楽器にくらべて大きな音を出しやすいドラマーは、周囲と自身の音量に気を使わなければなりません。

なので「この曲はうるさくしたくないな」と思ったときがブラシの出番です。

また、バラードを演奏するときはブラシは必須と言っていいでしょう。

最悪、バラードではドラマーが参加しなくても成立しますが、みんなが演奏しているとkにステージ脇で演奏風景を見るのは悲しい…。

一緒に演奏したいですよね。ブラシが扱えることで、曲ごとの対応力が格段に上がります。

そして最後に、ブラシとスティックを曲の中で使い分けることができるようになります。

これがドラマーにとってはかけ引きがあって面白いところです。じゃあ、どうやってブラシとスティックを演奏の中で使い分けるのか見ていきましょう。

ブラシとスティックを使い分ける

ここで明確にしておきたいのが、ブラシにできることと、スティックにできることを理解しておくことです。

ブラシにできること

  1. 静かに演奏できる
  2. スネアでリズムを刻む

スティックにできること

  1. 盛り上げることができる
  2. シンバルでリズムを刻む

最初はシンプルに捉えてみましょう。

ブラシとスティックを使い分ける場合、どのタイミングで切り替えるべきなのか判断するときは、下記のように考えてみるといいかもしれません。

曲が始まる前に、この曲は静かな雰囲気の曲だなと思えばブラシからスタートです。または誰かが出したイントロのトーン、テンションが低いところから始まっていればスティックを持っていたとしてもブラシにサッと持ち替えることもあります。

なのでまずは演奏直前に考え、曲や出だし次第で使うものを選んでください。

では曲がブラシで始まったとしましょう。

ソロが盛り上がればだんだんとバンドもテンションが高まってきますよね。

そうなった場合、スネアよりシンバルのほうが音がよく通りドライヴ感も増すので、盛り上げていきたいならスティックの方が有効になっていきます。

大体切り替えるタイミングはコーラスの区切り、新しいコーラスに突入するときにはスティックに切り替えてバンドを大きくプッシュします。

特にブラシで2フィールを演奏していて4ビートからスティックにすると、より推進力とパワーが出ますね。

毎回それだとマンネリ化するので、時には切り替えが分からないように音色が自然に切り替わるように変えるときもあります。

ただタイミングを逃すとバンドがあったまってきたのに、ドラムのせいでそれ以上盛り上がらなくなり、みんながもがき苦しむ地獄の1コーラスになるかもしれません。。

一応その打開策としては手前のコーラス以上に、

  • コンピングの量を増やす
  • フィルを増やす
  • ブラシでそのまま4ビートにいく
  • 何か仕掛けを作る

です。

そうすればごまかしというより音楽的に違う方向に進んでいくのでそれはそれでアリになっていきます。

そしてスティックからブラシに持ち替えるタイミングとしては2パターンです。

  1. ベースソロになった時
  2. テーマに戻った時

これ以外で替えることもアリですが、他のパートのソロに入ってまたブラシに持ち替えて盛り上がってきたらまたスティックに持ち替えて…、となると曲が全体的に長くなってしまいますし展開がワンパターン化して曲の面白さがなくなってきます。

なのでブラシへの持ち替えのタイミングは静かになりやすいベースソロで持ち替えて、ベースソロが終わったらそのまま後テーマをブラシで演奏して曲を終わらせるのが王道ですね。

もちろんベースソロがないこともあるので、ラストテーマはブラシに戻りたいなと思ったらだんだんバンドをクールダウンさせ、ラストテーマに入るときにブラシに持ち替えましょう。

これは、まずは何より実践です。字面だけで習得するのは難しいでしょう。

というわけで今回は王道のブラシの回し方のパターンがバラードの時、2ビートの時、4ビートの時と種類があるのでこれをご紹介していきます。

ブラシの使い方(回し方編)

まずは回し方です。今回私が実際に使っている回し方をご紹介します。

主に左手で掃くように横に回すので先に左手を練習するといいと思います。

カウンタークロックワイズモーション

■使い所 バラードの時、2ビートの時
特徴 オープンなサウンド

スネアの円を時計に見立てて、まずは左手を4時の位置からスタートして8時まで反時計回り(英語でカウンタークロックワイズ)でブラシの根本を強くプレスして円を描くように回します。

コツはスネア一面をしっかり使えるよう、スネアフープに毛先が当たるか当たらないかのギリギリのラインをいくようにしましょう。

8時までくると力を抜いて根本をスネアから浮かせます。毛先8時から4時まで回しましょう。

回し方を覚えればあとは回すリズムです。

バラードのとき

  1. (表拍)プレスして4時→8時
  2. (裏拍)毛先で8時→4時

 

2ビートのとき

  1. 毛先で8時→4時     (1拍目)
  2. プレスして4時→8時(2拍目)
  3. 毛先で8時→4時   (3拍目)
  4. プレスして4時→8時(4拍目)

ミディアムテンポなど軽快な2ビートで演奏する時はスタートする位置が8時からになります。

ですがプレスする位置は4時で力を抜く位置は8時なので回し方は全く一緒です。しっかりカウントしながら練習しましょう。

個人的にはこのカウンタークロックワイズがオススメです。

理由としては平泳ぎのような腕が開く動きになるのでオープンなサウンドになります。

オープンサウンドの方がワイドに聴こえて明るいのでバンドでやっている時には安定感があると思います。

クロックワイズモーション

■使い所 バラードの時、2ビートの時
■特徴 包み込むサウンド

こっちの回し方は時計回り(英語でクロックワイズ)で回していきます。カウンタークロックワイズとは逆に8時から4時に回していきます。

バラードのとき

  1. (表拍)プレスして8時→4時
  2. (裏拍)毛先で4時→8時

2ビートのとき

  1. 毛先で4時→8時     (1拍目)
  2. プレスして8時→4時(2拍目)
  3. 毛先で4時→8時   (3拍目)
  4. プレスして8時→4時(4拍目)

クロックワイズでの回し方のメリットとしては、時計回りだと抱くような動きになるので包み込むようなサウンドになります。

音色としては少しダークになるので落ち着いた雰囲気になると思います。

カウンタークロックワイズにするかクロックワイズにするかは好みなのでどちらも試してしっくりするものを選んでみてもいいでしょう。

以下はちょっと難易度が高いものです。

8の字回し

この回し方は主にバラードで使います。そして左手に加えて右手も回します。

回す動きが右手と左手で違います。ですが右手左手プレスするポイントは一緒2時から10時の範囲というのを頭に入れておきましょう。それではまずは左手からです。

左手は反時計回り2時からスタートして10時までプレスします。そこからは力を抜いて毛先だけで文字通り8の字を描いてください。

8の字を描いたとき2時から10時の間が1拍目(3拍目も)、4時から8時の間が2拍目(4拍目も)になるようにしましょう。

右手は8の字を逆さまから描くようにしていきます。

なので8時からスタートして反時計回りに4時までいくようにして、4時から10時を直線で目指しましょう。

10時まできたらブラシの根本をプレスして2時の位置まで時計回りでしっかり回しましょう。2時まできたら直線で8時に移動させて1周です。

一気にやろうとすると混乱するので片手ずつしっかり練習してから両手で練習しましょう。

スワイプモーション

■使い所 4ビートの時
■特徴 一定のサウンドとグルーヴを出し続ける

9時からスタートさせて横一直線に3時まで持っていきます。そして3時まできたらまた9時までスワイプさせます。

この時のコツは移動している時はしっかりブラシの根本を押さえつけて筆で大きな『一』を書くように動かします。折り返し地点にくる頃に力を抜いてまたしっかりプレスして折り返しましょう。

ブラシの使い方(叩き方編)

次は右手でスネアを叩きます。スネアを叩くコツはムチのように毛先をしならせてその反動で叩きます。これをタップと言います。

右手はバラードの時と2ビート、4ビートの時と2種類になります。

バラードのとき

(1拍目)真ん中(2拍目)3時(3拍目)真ん中(4拍目)3時

という順番で軽くタップします。タップ自体は簡単だと思うのでこれに左手のカウンタークロックワイズモーションかクロックワイズモーションをつけて練習しましょう。左手の始まりの位置は4時からスタートするので2ビートの時の動きと間違えないようにしてください。

2ビート、4ビートのとき

通常シンバルでパターン刻んでいる時と同じリズムを叩きます。

タップする位置ですが3時、真ん中、3時、真ん中の順番でタップします。やり方は以下の動画の感じで真似してみてください。

あとは2ビートで演奏したい時はこれに左手のカウンタクロックワイズモーションかクロックワイズモーションを足しましょう。

4ビートで演奏したい場合は左手のスワイプモーションをくっつけます。

以上が主な基本的なブラシの使い方です。まあ何より面倒で地味な練習ですが先にも記述した通り自分の選択肢を増やすためです。

ブラシをしっかり使える方が一緒に演奏するメンバーにとってもやりやすくなるのでコツコツと練習していきましょう。

あとは実践するだけですができるだけ参考にするドラマーを見つけて音源や動画、教則本が欲しいですよね。というわけで先人たちの残したものを頼りに練習していきましょう。

参考にしたい音源、動画、教則本

参考にしたいドラマーが出しているCDや教本、youtubeにあがっている動画を見て参考にしていきましょう。

フィリー・ジョー・ジョンズ

フィリーのブラシのテクニックの聴きどころはスティックに持ち替えるタイミングです。

テーマが終わってからすぐブラシからスティックに持ちかえることもあり、マイルスのソロが終わったタイミングでかえることもあります。

基本的なことですがシンプルでわかりやすいのでかなり参考になると思います。

マイルス・デイヴィス「1958 Miles」

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ソニーミュージックエンタテインメント

マイルス・デイヴィス「Relaxin’」

エルビン・ジョーンズ

エルビンのブラシテクニックもかなり参考になります。ブラシワークやフレーズなど注目して真似してみましょう。

・ジョン・コルトレーン「Ballads」

・エルビン・ジョーンズ「Elvin!」

 

グレッグ・ハッチンソン

グレッグのブラシテクニックもかなり参考になります。

動画で少しレクチャーしてくれているので参考にしてみましょう。

色んなブラシテクニックがあって、今回説明しているものと少し異なりますがおおよそ一緒です。

こちらのCDもオススメです。

・ジョシュ・アレッドマン「Compass」

クインシー・デイヴィス

同じくクインシー・デイヴィスもブラシの動画をあげているので参考になりますね。

ケンドリック・スコット

今回僕が説明したブラシのテクニックは、ケンドリックから直接教わった回し方なので、絶対参考になると思います。

・ケンドリック・スコット「Reverence」

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Criss Cross

・ダニー・グリセット「Promise」

1曲目の”Moment’s Notice”のブラシからスティックに持ち替えるまでのアプローチだったりスティックに持ち替えてからのブラシとスティックとの対比がすごく参考になります。

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Criss Cross

ユリシス・オーエンス

めちゃめちゃ速いチェロキーをブラシでいくというのはかなり勇気が入ります。

それを軽々とこのハイパフォーマスでできちゃうのがすごいですよね。

そんな超絶ブラシテクニックを持つユリシスは最近教則本も出しています。

「Jazz Brushes for Modern Drummer」

スティーヴ・スミス

スティーヴ・スミスのブラシの扱い方は今回私が説明したやり方に近いのでぜひ参考にしてみてください。

ベン・ライリー

「The Art Of Brushes」というブラシの教則DVDに入っているベン・ライリーの動画です。上の動画はトレイラーなので続きが気になる方はぜひ購入して一緒に練習しましょう。

・「The Art Of Brushes」

おまけ動画

ブラシだけでスネアソロを順番に演奏している動画です。

どうやっているのか回し方が複雑でわかりにくいですが、ブラシでできることがこんなにあるんだと驚かされますよね。

ブラシができるようになればジャズドラムの楽しみ方や色んなアプローチの選択肢が絶対増えるます。

スティックだけではなく、ブラシもしっかり取り組んでみましょう。



ABOUTこの記事をかいた人

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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。