ジャズドラマーの解説するドラムで変拍子を演奏する方法

現代のジャズドラマーだったら避けて通れない変拍子。

セッションなんかで「All The Things7拍子で」とリクエストされることも少なくないので、なんでも求められる今の時代は変拍子ができたことに越したことはないですよね。

でも変拍子やったことない、できても3拍子のワルツぐらいしかできなくて困ってます…、という方に今回は見てもらいたい内容です。

変拍子をやる意味

そもそもジャズにおける変拍子で有名なのは、この曲”Take Five”です。

タイトル通り5拍子です。ジャズを演奏するのに拍子を変えて演奏するという発想に至ったのはだいたいこの曲が発表された1950年代後半頃からでしょうか。

その後変拍子というものが世間に認知されましたが、それでも変拍子の発展はまだまだ先の話でした。

このTake Fiveはソロパートが2コードだったので演奏しやすかったのですが、コード進行が移り変わるジャズスタンダードではまだ開拓されていなかったようです。

そして流れが変わってきたのは90年代頃から。

スタンダードの曲で拍子が変わったかのように聞こえるポリリズムを、トランペットプレイヤーのウイントン・マルサリスが取り入れ、本格的にマーク・ターナー(ts)ブラッド・メルドー(pf)たちが変拍子を本格的に取り入れて演奏しだしました。

マーク・ターナー “Moment’s Notice”(5拍子)

ブラッド・メルドー “All The Things You Are(7拍子)

ジャズで変拍子といえばこの2曲が代表曲と言えます。

そもそもなぜ変拍子を取り入れようとなったのでしょうか。

その理由としては縛りが欲しかったからです。俗にいう縛りプレイですね。

今まではどんなリズムであれ、どれも4拍子か3拍子でした。

これが変拍子になると不自然でノリにくくなり、フレージングも考えないといけなくなります。

この一筋縄ではいかない変拍子を使って、いかに自由に演奏できるかというチャレンジ精神が変拍子のブームを焚きつけました。

この時代ではもうスイング、ラテン、ワルツ、コルトレーンチェンジ、フリージャズ、フュージョンなどなど、多くの演奏スタイルがやり尽くされていました。

そのため、この変拍子というアイデアは90年代当時のミュージシャンには刺激的でニューヨークのミュージシャンやバークリーの学生たちがこぞって練習を開始します。

プレイするとわかりますが、フレージングが変拍子だと本当に、うまくいかないことが多いです。

なので変拍子とはどういうものなのか、仕組みを理解して練習していく必要があります。

というわけでもう少し変拍子のことを詳しく見ていきましょう。

よく演奏される変拍子は7拍子と5拍子

基本的にセッションなどで変拍子で曲をやろうとするときは、7拍子5拍子がほとんどです。

9拍子や11拍子なども存在しますが経験上かなりまれだと断言できます。

なので7拍子と5拍子をしっかり練習しておけば、セッションで困ってしまうということはあまりないでしょう。

7拍子の考え方

文字通り7拍で1小節なんですが、これを1,2,3,4,5,6,7とそのまま数える人は少ないのです。

どう捉えるかというと4拍子+3拍子の1,2,3,4,1,2,3で考えることが多いですね。

4拍子も3拍子も馴染みがあるので、これを交互に感じ取れるように練習したいところです。

あとは曲で演奏するコード進行やメロディなどが関係してくるので、これを変拍子とどう合わせていくのか、また考えていくのかを知っておく必要があります。

スタンダードの譜面を用意して4拍子の曲を7拍子に変えてみましょう。

7拍子は4拍子の1小節と比べると3拍も長いので、スタンダードの曲の1小節間をそのまま7拍子にしてしまうとかなり間延びしてしまいます。

なので最初の1小節目を4拍、2小節目を3拍に変えて2小節で7拍子を作ります。

変拍子 練習

ドラムはコードは演奏しないからそんなコード進行のことは関係ないねと思うかもしれませんが、偶数小節(3拍部分のところ)にコードが2個ある場合は3拍子を半分して1.5拍(付点4分音符)で2つのコードをみんな演奏します。

ドラマーもそれに合わせたリズムを演奏するのでコードチェンジのことも譜面で確認しているといいですね。

そして7拍子の場合はアップテンポであまりハネないイーブンのリズムで演奏されることが多いです。

5拍子の考え方

では5拍子の場合どうやるかというと3拍子+2拍子でとることが多いです。

ただ曲を演奏する場合は譜面の1小節間をそのまま4拍子から5拍子に変えます

5拍子の場合だと1拍増えるだけなので間延びはそこまでしないからでしょう。

なので1小節間にコードチェンジが1,3拍目に2個存在すれば最初のコードを3拍、2つ目のコードを2拍で考えます。

変拍子 練習

マークターナーの”Moment’s Notice”みたいに1小節目3拍、2小節目2拍で演奏することもありますが、それはかなりハードモードです。。

ひとまずは1小節を5拍に変えて練習してみましょう。

5拍子の場合だとアップテンポよりはミディアムくらいでスイングのようにハネて演奏することが多いです。

7拍子と5拍子を感じ分けるために

どっちも練習してると、どっちがどっちか混乱するのでこの2つの変拍子を使い分けるコツです。

7拍子の場合はフィールが4拍子がベースとなっています。そして5拍子の場合はフィールが3拍子のワルツがベースになっています。

叩き出したときに4拍子のフィールの感覚でいくのか、3拍子のフィールの感覚でいくのかそれだけでも気持ちが全然違うので何がベースになっているのか理解しておくことがとても重要です。

練習の仕方

それでは具体的な練習の仕方です。まず紙を用意して7拍子の場合なら1,2,3,4|1,2,3と書いてみましょう。手間を感じるなら下の画像を使ってみてください。

変拍子 練習

そしてその数字の下にパターンを4拍子側と3拍子側で書き出していきます。

できたら2枚用意して、1枚はリズムパターン+コンピング用、2枚目はフィルイン用としてフレーズを作っていきましょう。

リズムパターンは4分音符と8分音符でビートを作るライドシンバルと、コンピングのスネアを考えてみましょう。

もう1枚はフィルインを考えていきます。

7拍子の場合4拍はビートを刻んで後半3拍でフィルをすることが多いです。なので特に大事なのは3拍子側のほうです。

3拍で収まるようにフィルインを何パターンか考えてみるといいと思います。

4分音符,8分音符,3連符で作るようにしましょう。16分音符だとさすがにテンポによっては速すぎるのでなるべく使わないほうがいいかもしれません。

何日かいくつか書いて練習すればパターンが見えてくるので、それができるようになれば4拍子の方もフィルインにしてみて今まで考えた3拍子のフレーズを足してみましょう。

5拍子の場合だと1,2,3|1,2と書いて同じ要領でパターンとフィルを書いて練習していきます。

ここで大事なポイントです。

絶対カウントしましょう! カウントしながらじゃ演奏できないと思うかもしれませんが、自分が正しく演奏しているか判断するためには口で数えながら練習するのが間違いないです。

それとメトロノームも活用しましょう。今は電子のものだと4拍+3拍などすぐに設定できるのでしっかり変拍子が練習できるメトロノームを用意したいですよね。

変拍子に慣れた時の落とし穴

変拍子慣れてきたなと思ったら注意することがあります。それは1小節で完結しすぎないようにすることです。

毎回完結してしまうと不自然になって次の小節とのつながりがなくなってしまいます。

つながりがなくなるということは音楽が進まないということを意味しているのでそれは避けたいですよね。

それを避けるために手っ取り早く解決するには小節の頭の1拍目を重く感じ過ぎないことです。

自分が迷子にならないようにどうしても目印をつける感じで1拍目を強く叩きがちです。

そうすると小節に縛られてしまい、小節のオリに閉じ込められている感じになってしまいます。

なので1!,2,3,4,1!,2,3じゃなくフラットに1,2,3,4,1,2,3と心で感じてプレイできると聞こえてくる音もナチュラルになっていくでしょう。

それと7拍子の後半の3拍子の所も注意が必要です。慣れてくるとそこの部分は付点4分音符でしか演奏しなくなって惰性になってしまうので、違うリズムが出てくるように意識を向けておきましょう。

そしてある程度変拍子が慣れてくればビッグセブンまたはビッグファイブを感じましょう。ビッグセブン、ビッグファイブとは感じ方を2小節で7拍子または5拍子でとることです。

,2,,4,,6,|1,,3,,5,,7 というように黒丸になっている数字を強く感じます。

口で1,2,3,4,5,6,7とカウントしながら黒丸のところを手拍子するとわかりやすいです。そうすると1小節目から2小節目になると拍の感じ方が逆転して3小節目の頭で感じ方が1周します。

黒丸を数えると2小節でちょうど7つありますよね。2小節かけて大きい7拍をとるのでビッグセブンと呼ばれるわけです。

こうすることによってもっと長い間隔で変拍子を感じれるので、かったるさや単調を避けられます。なのでこの感じ方を身につけて縛られないように楽しく演奏したいですね。

一緒に練習できるオススメ音源

人といきなり実践していいですがまずはシミュレーションしたいですよね。

腕試しになるかもしれないので私が今まで練習でお世話になった曲をご紹介しておきます。7拍子のほうが圧倒的に多いですが是非一緒に練習してみてください。

 ■ジョナサン・クライスバーグ “Stella By Strarlight”(7拍子)

ロバート・グラスパー “Beatrice”(7拍子)

アリ・ホーニグ “Moment’s Notice”(7拍子)

ウィル・ビンソン “Albemarle”(5拍子)

(apple musicにあります)

アンドレ・チェッカレリ “Ameskeri”(5拍子)

他にもたくさんあると思いますが、今思い出せるのでこれだけでした。。

テンポが速い場合はyoutubeの再生速度を0.75にすると丁度よく演奏できると思います。

はっきり言って変拍子は慣れです。

最初は難しいですが感じ方が慣れれば4拍子と変わらない感覚で演奏できるようになってきます。

近道はないと思うので頭と体の感覚を使ってめげずに定期的に練習していきましょう。



ABOUTこの記事をかいた人

野澤 宏信

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。