【金村盡志】直接的に、直感的にはき出すフレーズがジャズを創る

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ジャズにかかわる人材に、

「ジャズ」「音楽とは」を一切の制約なくインタビューする「INTERVIEW WITH」シリーズ。

1回目は、トランペットプレイヤー金村盡志(かねむらつくし)さん。

ライブの際の真剣そのものの表情とは違う、笑いの絶えない人柄や、

音楽教室を運営する人間から見るまで迫ります。


金村盡志1
金村 盡志(かねむら つくし)
1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。

━━今日はよろしくお願いします。まず、現在使用されている楽器からお聞きします。

はい、僕が使用しているのは、トランペットとフリューゲルホルンの2種です。

トランペット
今日持ってきたのはトランペットの方で、Bach(バック)というアメリカのメーカー製。

吹奏楽からジャズ、クラシックなど、音楽業界全般でポピュラーに使用されている楽器です。

モデルは180ML37というモデルで、言ってみれば“普通中の普通”(笑)。

ガ●ダムで言えばジム、かな。

━━非常に分かりやすいです(笑)。Bach180ML37のどういうところが気に入ったんですか?

以前、某メーカーのハイエンドモデルを使用していて。コントロールはいいものの、音色が求める方向と変わってきたので新しくしました。

個体差もあるので、このモデル全般が同じという訳ではないですが、トランペットらしい、融通の効いた色気のある音色が気に入っています。

購入時期は、ちょうどニューヨークに留学する前のタイミングで、この際乗り換えよう、という心持ちも影響していたかもしれません。

━━ちょうど心機一転する機会でもあったんですね。随分使い込まれているようですが、オールドな楽器なんでしょうか。

一応、80年代後半に製造されたUSEDの楽器として購入したんだけど、購入したときはもっとキレイで…。

高校生くらいのときにトランペットを演奏していた先輩から「銀色の楽器は、あんまり拭くとはげるらしいぜ」と、言われたんだよね。

ベル部分
それで、このモデルを購入した後にその話を思い出して、じゃあ基本的な手入れだけで拭かずに置いておくか、なんて思っていたら、だんだんと黒ずんできて…。

持ち替え用のフリューゲルホルンは知り合いから借りたものを使用していますが、約60年ほど前に製造されものながら状態がよくてピッカピカなんです。

なぜかと言うと、使った後にクロスできちんと拭いているから…。

確か先輩に拭くなと言われたと思うんだけどなあ…。銀色の楽器を持ったミュージシャンは、みんなしっかりクロスで手入れをした磨きをかけたほうがいいとアドバイスしておきます。

━━(笑)初めてライブハウスで拝見したとき、ビンテージ楽器かと思いました。

よく言われます(笑)。そのたび、小さい声で「手入れしてないだけで…」と話しています。

今からでも手入れすればある程度キレイにできるそうなんですが、音質が変わるのが怖くて。このままでもいいか、と開き直りました。

━━マウスピースはどのようなものを使用されていますか。

モネットのマウスピース
モネットというメーカーの、Resonance B2S3W PRANA というモデルを使用しています。

2017年の秋頃からモネットの別モデルを使用していて、少しずつ慣らしていって、少しキツイ設定の現在のモデルに変更しました。

━━ちなみに、さきほどの先輩からアドバイスを受けた(?)ときから、使用楽器はトランペットなんですか?

そうです。中学生から吹奏楽部で、現在まで使用楽器はトランペットのみです。

中学校の校則で、なにかしら部活に入部しなくてはいけなくて、当時はそんなに音楽好きではなかったんだけど、一番厳しくなさそうなのが吹奏楽部だったので入部しました。

こんなこと話して大丈夫かな!?(笑)

━━大丈夫です(たぶん)。吹奏楽には、フルートやサックス、クラリネットなどもあると思いますが、トランペットを選んだ理由はどのようなものでしょうか?

これも、また自分の評価を落とすようであれなんだけど…。一番操作が簡単そうだったからという…。

バルブ3つだけで運指を気にしなくてよさそうだし、ホルンやチューバと比べるとだんぜん軽くて。操作がかんたんで軽くて負担がないなんて、最高だ! と思って…。

━━(笑)こんなに笑ったインタビューは初めてです。プロになろうと意識し始めたときも、トランペットから持ち替えるという考えはなかったんですね。

金村盡志ライブ1
スタートはあまり褒められたものではないかもしれませんが…、音楽という媒体を通して何かを表現しようと考えたときに、一番扱いに慣れたトランペットから変えようとは思いませんでした。

そもそも、まだトランペットを最大限扱えているか怪しいもので、これ1本で手一杯という考えもあったね。

━━吹奏楽からジャズに転向したきっかけはありましたか。

さきほどの「銀色の楽器はみがくと…」の先輩からジャズを紹介されたのが最初です。いいものも悪いものも受け継ぎました…。

そのうちオムニバスのジャズCDなども借りて、聞き込んでいくうちにこれをやってみよう、という考えになって。

高校2年生くらいのときだったかな、地元のアマチュアビッグバンドに参加するなどして、すこしずつのめりこんでいきました。

━━実際に音楽で飯を食っていこう、と強く意識したのはいつごろですか?

高校生のときです。これは高校の吹奏楽部の先輩がそう言っていたというのも影響していて。その人が「プロになったら…」という話をよくしていて、少し憧れもあったのかもしれない。

あとは、母がピアノ教室を開いていたので、専業のミュージシャンとして活動している人が周囲にたくさんいたんだね。なかには、僕に少し指導してくれた人もいて。

だから、職業としての音楽家になるのに壁というか、敷居の高さみたいなものは感じませんでした。

━━ここから、少し専門的なお話へと移行していきます。金村さんの考える、ジャズの魅力とはどのようなものでしょうか。

事前の質問表で非常に悩んだ項目ですね…。

金村盡志2
毎日ジャズばかり聴いていると、たまに、今日は聴きたくないな、と思うときもあるんです。

そんなときはダフトパンクなどを聴いているんですが、しばらくしてもう一回ジャズを聴くと「ああ、やっぱりこれだな」って。

ジャズって、日本では昔の音楽という認識が強いようなんですね。人にジャズの話をしたとき、連想しているイメージは古風なスタイルであることが多いんです。

ある種、伝統的音楽という認識は間違っていないと思います。ウィントン・マルサリスのように昔ながらの流れを汲んで、それをまた新たな境地に昇華させる、というスタイルも大好きな音楽の1つです。

でも、僕が一番好きなところは、そういう伝統的な下地の部分ではなく、演奏者が歌いたいと思ったことを、その場ですぐに音に出して表現できる、というところです。

これはなにもジャズではなくても、他の音楽でもできることなんですが。クラシックであれば、譜面に書かれたメロディーに、自分の気持ちを投影して演奏すればいいので。

それでも、なぜジャズか。それはもっと直接的に、直感的にはき出せる、というところが好きなんだと思います。

今、ベーシストとドラマーがこういう風に演奏している、ならば僕はこう吹こう、とか。

そして、それに対してまた他のプレーヤーも反応して。もっと極まっていくと、そのように意識しなくても一体となって演奏できるようになっていく。

例えるなら水の流れのような。

別々の支流から流れてきた水が、1つの川のようになる感覚というか。水は合わされば境界線のない、1つのものになります。

流れが岩にあたれば、その部分がはじけて、また水の流れに加わっていく。そして加わった水は勢いを増す、なんていうとちょっとかっこよすぎますが。

こういった感覚はジャズならではのものではないかと思います。ほかのジャンルの音楽を聴いてからジャズを聴くと、そういう部分が一層際立って意識できる。

それが、リスナーとしても、プレーヤーとしてもジャズの魅力の一側面だと感じています。

次ページからは、もう少し深いジャズと芸術のお話です。



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FM小田原にて毎週火曜 夜7時から1時間のJAZZ専門ラジオ番組「JAZZ ROOM」のラジオパーソナリティを担当。モジカル前身のジャズ専門サイト・CDショップ「AOI JAZZ」の企画をしました。