2020年にジャズドラマーが一番聴いたアルバム

去年からコロナでいろんなイベントごとは中止になり、日本だけでなく世界中のミュージシャンが演奏活動ができなくなってしまいました。

そんな中でも新しいアルバムを出してくれるミュージシャンがいたので、それを聴いて自分のモチベーションに繋げながら去年も頑張れた気がします。

なので今回は2020年に一番聴いたアルバムをご紹介しようと思いますが、今回も選びきれないのでいくつかご紹介したいと思います。

2020年に聴いたアルバム5選

ジョシュア・レッドマン、ブラッド・メルドー、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイド「Rounagain」

アルバムリリース段階でテンションがかなり上がりました。

なんといってもこのメンバーで集まるのはかなり久しぶりです。

サックスのジョシュア、ピアノのメルド−、ベースのマクブライド、ドラムのブライアン・ブレイド。ジャズファンなら名バンドに挙げたくなるメンツです。

若い頃は一緒によく演奏していましたが、しばらくの間それぞれ自身のバンドやほかのミュージシャンのバンドで活動していたため、このメンバーで聴ける機会はありませんでした。

それでも、みんなベテランになってまたこうやって集まれるのがいいですよね。

アルバムとしてはみんなのオリジナル曲を持ち寄ってレコーディングしたものになります。

  1. Undertow (ジョシュア・レッドマン)
  2. Moe Honk (ブラッド・メルドー)
  3. Silly Little Love Song (ジョシュア・レッドマン)
  4. Right Back Round Again (ジョシュア・レッドマン)
  5. Floppy Diss (クリスチャン・マクブライド)
  6. Father (ブラッド・メルドー)
  7. Your Part To Play (ブライアン・ブレイド)

メンバー全員がベテランになり、各々のプレイスタイルがかなり確立されているので曲を聴くと誰がどの曲を作ったのかなんとなく想像できます。

特に4曲目の”Right Back Round Again”はジョシュアの曲らしさが出てますね。

1曲1曲がコンパクトでアルバム全体でも45分くらいしかないのですが、ライヴを聴いているかのようなかなり濃いインタープレイをしていています。

一時代を築いてきたプレイヤーがこうしてまた新しいアルバムで素晴らしい演奏を聴かせてくれるのは今まで聴いてきたリスナーにはかなり嬉しいアルバムです。

ベン・ウェンデル「High Heart」

テナーサックスのベン・ウェンデルのアルバムです。

曲としては今までの感じと特に変わらないので前に出てた「Frame」や「シーズンズ」と曲の雰囲気は似ています。

ですが今回のポイントはアンサンプルの編成です。サックス、ボーカル、ピアノ、フェンダーローズ、ベース、ドラムといった構成です。

この曲のテーマ部分はボーカル、サックスとピアノ、ローズのかけあいで成り立っていますね。ソロはみんなでトレードしながら発展させる今どきのスタイルで展開しています。

このボーカルのマイケル・マヨという人は初めて聴きましたがインストのコンセプトにかなり近い感じでスキャットをするので驚きました。

そしてドラムはベン・ウェンデルの盟友ネイト・ウッドです。

2人はKneebody(ニーバディ)という別のバンドでも活動しています。こちらの方がよりエレクトロな感じですね。

なので今回のアルバムはアコースティックなサウンドに寄せつつkneebodyのような空気感を持たせるためネイト・ウッドが起用されたのかなと思っていますがかなり今回のアルバムにハマっている感じがします。

このアルバムも短めで45分なのであっという間に聴けて何度もリピートして聴いてたアルバムです。

ジェラルド・クレイトン「Happening: Live at The Village Vanguard」

ジェラルド・クレイトンが初めてブルーノートレーベルで出したアルバムです。

ブルーノートファミリーに仲間入りして最初のアルバムがライヴレコーディングとはなんて渋いアルバムなんだ。。と最初は思いました。

昔は普通でしたが今どきそうやって売り出すことがないので逆に新鮮な感じになります。

普段ニューヨークのライヴハウス、特にヴィレッジバンガードでは1日だけそのバンドが出演ということは少なく1週間くらい毎晩同じバンドが出続けます。

ジェラルド・クレイトンもその公演に合わせてライヴレコーディングをして、その中から7曲選んでCDにしました。

  1. Patience Patients
  2. A Light
  3. Celia
  4. Rejuvenation Agenda
  5. Envisionings
  6. Body and soul
  7. Take the Coltrane

3曲ほどスタンダードをやっているんですが”Celia”も”Tale the Coltrane”もソロになると原曲がわからなくなるほどみんな自由にプレイしています。

こうやって聴くと自分がまだ型にとらわれているなぁと痛感してしまいますね。

アルバム自体は長いですが、聴きやすいジェラルド・クレイトンのオリジナルとスリリングなスタンダードのバランスがよくて何度も聴けるアルバムです。

イマニュエル・ウィルキンス「Omega」

今勢いあるアルトサックスプレイヤーイマニュエル・ウィルキンスのアルバムです。

名前はネットでよく見かけるのでちょくちょく動画は見ていたのですが、やっぱり彼の音楽を作品として聴きたい!と前から思っていました。

その矢先にブルーノートから出るということでかなり心待ちにしていたアルバムです。

今までテナーサックスプレイヤーが一強の時代でしたがローガン・リチャードソンが出てきてから少しずつ流れが変わってきてから今ここに行きついていると思います。

みんな新世代のミュージシャンですがアルバムの一曲目からやられたーとなるような熱い演奏がくり広げられます。本当にこの世代のミュージシャンはテクニックだけじゃなくて音楽性もしっかり深いのが驚きですよね。。

そしてちゃんと今まで活躍してきたミュージシャンに敬意を払っているのがすごくわかります。

曲もアコースティックでコンテンポラリーで自分にはかなりドストライクなサウンドです。

新世代のミュージシャン恐るべし。。

BIGYUKI「Greek Fire」

2016年に出たピアニスト、ユキさんのアルバムです。トラディショナルジャズ、またはイマニュエル・ウィルキンスのようなコンテンポラリージャズの系統ではなく、現代のエレクトロなサウンドとビートで攻めたアルバムになっています。

かなりダークで危険な香りがするのでハッピーとは真逆のシリアスミュージックです。

聴くのにエネルギーは使いますが、ユキさんがどれだけ真剣に音楽と向き合っているのかが聴いていてバシバシ伝わってきます。

これも40分ちょいのアルバムですがかなり内容の濃いアルバムです。

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ユニバーサル

以上2020年に聴いたアルバム5選でした。

コロナのせいで仕事に行く際は必ず車で通勤してたので行き帰りにかなり聴きました。

ですが今でもまだ聴いているアルバムたちなのでどれも聞き飽きないアルバムです。

ぜひ聴いてみることをオススメします!



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。