Have Yourself a Soulful Little Christmas | 今年のクリスマスに最適なケニー・バレルのアルバム

ケニーバレル「Have Yourself a Soulful Little Christmas」

パーソネル

ケニー・バレル(Guitar)+オーケストラ

アルバムトラック

  1. The Little Drummer Boy
  2. Have Yourself A Merry Little Christmas
  3. My Favorite Things
  4. Away in a Manager
  5. Mary’s Little Boy Chile
  6. White Christmas
  7. God Rest Ye, Merry Gentleman
  8. The Christmas Song
  9. Children Go Where I send Thee
  10. Silent Night
  11. Twelve Days Of Christmas
  12. Merry Christmas Baby

アルバムのジャケットもさることながら選曲もクリスマスの名曲がほとんどになります。

ライトな層にも向いているアルバム

選曲のほとんどがクリスマスソングだったりよく知られている「My Favorite Thing」などキャッチーで聴きやすい曲ばかりで、難しいことを考えず頭を空っぽにして聴けるアルバムです。

商業的な力もはたらいているのではと勘繰ってしまいますがジャズにうるさい人が聴いても納得できるくらい完成度が高いです。

なのでジャズを初めて聴くという人や普段ジャズを聴かない家族にジャズを勧めたいという人にはお家で流すにはちょうどいい、むしろ一流クオリティのジャズをみんなで楽しめるいい機会だと思います。

この時期クリスマスソングといえば世の中にジャズが溢れている時期です。特にシナトラは何度聴いたかわからないくらい流れますよね。

他にもクリスマスに便乗してくるジャズっぽいエセジャズもあったりするのでこの時期のビジネスミュージックはタチが悪いです。そんなものを聴くぐらいなら迷わずこのアルバムを手に取りましょう。

通して聴いても12曲で40分弱なら短いながらもボリュームを感じるアルバムです。

ギターフィーチャーのアルバム

ケニー・バレル好きはさらに楽しめるアルバムです。

なぜなら今回のアルバムはギターがしっかりフィーチャーされたアルバムになっています。

曲によってビッグバンド、ストリングス、コンボなど形態を変えて曲が進んでいきますがどれもケニーバレルが常にスポットがあたるように聞こえます。

1曲目の“The Little Drummer Boy”はボレロのリズムで曲が進むにつれてブラスセクションが増えていき本当にクラシックのような壮大なアンサンブルになります。

壮大になっていくまでをケニーがギターソロで引っ張っていくのですがこのブルージーで洗練された音色が最高にイカしてます。

3曲目の“My Favorite Things”も3拍子ではなく4拍子で疾走感のあるファストスイングにアレンジされていて全面的にギターが引っ張っていくような構成になっています。

メロディをとってもギターソロをとっても本当にカッコいいの一言に尽きますね。

バラードの“Have Yourself A Merry Christmas”や“Silent Night””The Christmas Song”は同じ音色なのに渋さが前面に出てくるケニーのギターがいいですね。

ケニー・バレル単体で聴いても十分満足できる内容です。

しっかり練られたアルバムの構成

こういうのに限らず大体この時代のジャズのアルバムは曲順など気にされるこがありません。コンピレーションアルバムなど本当に詰め込んだだけのようなこともあります。。

しかしこのアルバムは短いながらも構成がよくできています。

1曲目はブラスで壮大にいった後2曲目でしっとりと聴かせてその後にパンチのある曲を持ってくるという流れを序盤の3曲で作っているので自然と引き込まれます。

クリスマスソングの中でもラテンの曲をピックアップしたMary’s a little Boy Chileや、ビッグバンドアレンジでお腹いっぱいになったところに聴きやすいコンボでのアレンジのWhite Christmas 。

Silent Nightはゴスペルを感じさせるアレンジだったりTwelve Days Of Christmasはクラシックの室内楽を思わせるイントロからジャズに繋がっていく感じが印象的です。

バラエティにとんでいながらもリスナーが次にどういう雰囲気の曲が欲しいのかよく分かっているかの様なかなり聴いている人に寄り添った構成になっているのが見事です。

私みたいなジャズオタクからクリスマス気分を味わいたいライトなリスナーでもどんな人が聴いてもいいと思えますし、幸せな気持ちにさせてくれるアルバムなので本当にクリスマスにぴったりです。

クリスマスといえばシナトラという流れも最高ですがこっちの大人を感じさせるアルバムも最高です。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。