ドラマー野澤宏信が選ぶ2024年オススメのアルバム5選

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こんにちは、野澤です。気がつけばもう2024年も終わろうかという時期になってしまいましたね。

今年もあっという間に過ぎていきましたが個人的には病気を繰り返したり手術をするなど、散々な年になってしまいましたので健康祈願しながら来年を迎えたいと思っている日々でございます。。

今回は今年最後というのもあり今年よく聴いたアルバムと個人的にオススメのアルバムを5枚ほどご紹介したいと思います。

ジョー・ファンスワース「In What Direction Are You Headed?」

24年下半期にに聴いたアルバムからご紹介です。

ニューヨークで活動するベテランドラマーのジョー・ファンソワースのリーダーアルバム。

ここ最近この方の活動は目覚ましくブラッド・メルドー、エメット・コーエン、エリック・アレキサンダー、バスター・ウィリアムス、ウィントン・マルサリスなど多くの一流ミュージシャンと演奏しています。

スタイルとしてはトラディショナルジャズをベースにしていてフィリー・ジョー・ジョーンズ、アート・ブレイキー、マックス・ローチなどのバップ系のプレイです。

メンバーは最も若手で活躍するアルトプレイヤーのイマニュエル・ウィルキンス、コンテンポラリージャズを形成したギタリストのカート・ローゼンウィンケル、今ノリに乗っていてブルーノートが推しているピアニストのジュリアン・ロドリゲス、ブランフォード・マルサリスバンドで活躍するベーシストのロバート・ハースト。

クセが強そうなメンバーばかりですがプレイスタイルや世代の幅が広く、どのような演奏を繰り広げるのか聴く前にワクワクしました。

ジョー・ファンソワースのプレイスタイルはバップなのにアルバムの中身は割とコンテンポラリー系の曲ばかりなのも興味を惹かれました。

カートの曲が多く”Terra Nova”、”Filters”、”Safe Corners”の3曲が収録されています。

イマニュエルの曲も入っており”Composition 4″が収録されてコンテンポラリーのサウンドを感じるアルバムになっています。

本人のコンセプトとしてもオールドスタイルではなく現代のジャズを取り入れて新しいジャズをやりたいという意思があるので、モダンな仕上がりになっています。

実際にコンテンポラリーに混ざるファンソワースのサウンドも自然でバップとコンテンポラリーが混ざると思った以上に聴きやすいです。

スイングするときのジャズのフィールにもバップのサウンドの心地よさがあります。

5曲目のアップテンポのスイングはシリアスさもあり軽快さも含んでいますね。この昔と今のサウンドがクロスオーバーする感じもなかなか言い表せない面白さがあります。

個人的にはジョー・ファンスワース本人の個性がもっと前に出て欲しい気はしますがバンドのサウンドをガッチリ支えるようなサポーティブなプレイをみせていて選曲、人選を計算してよくできたアルバムになっています。

ウォルター・スミスIII「three of us from Houston and Reuben is not」

私の一番推しのテナーサックスプレイヤーのウォルター・スミスIIIの24年発表のアルバムです。

メンバーは過去作の「III」の時のメンバー。

ジェイソン・モラン(Piano)リューベン・ロジャース(Bass)エリック・ハーランド(Drums)のインテリジェンスな音楽を演奏するプレイヤーたち。

「III」のときはその緻密に作り上げられた曲に打ちひしがれ、感動して何度もリピートしていました。

そんなメンバーがまた集まり新作が出るのはファンとしてとても待ち望んでいた作品でもあります。

前作では「Still Casual」のリユニオンとして「Return To Casual」をリリースしてましたが続編として聴けるようなコンセプトが一貫しているアルバムでした。

過去作から一貫しているのだろうと聴く前から期待できます。

実際にその期待通り「Gangstar on Moranish」は「Moranish」を発展させた曲で過去作を知っているファンからするとニヤリとしてしまいした。

“Cezanne”や”A Brief Madness”は速い曲ながらもメンバー同士の高度なインタープレイで聴いている側を引き込んでいきます。みんな頭の回転が速く特にジェイソンモランのプレイが冴えています。

ウォルターの演奏に絡んだかと思えば弾くのをやめてスペースを空けたり、バンドのテンションが高まってきたタイミングでまた絡み始めます。フリーっぽいのに出鱈目ではなくあらかじめ計算されたかのような整った音楽を展開するのでそれがたまりません。

曲の繋ぎ方もとても自然で”610 Loop”のようなちょっと前のコンテンポラリージャズを匂わせて”Point of Many Returns”に入るのもよく、この曲もさらに前の世代のジョシュアの雰囲気だったりモードをジャズを感じるような曲になっています。

聴きやすいアルバムではありますがシリアス展開多めでテンションが張り詰めるような曲も多いです。

そんな緊張感を和らげるような最後の曲”Lone Star”も素晴らしくてアルバムの最後をハッピーな雰囲気でシメてくれます。

内容の充実度も高く聴き終わった後も心地がいいアルバムなのでこれもよくリピートしたアルバムになります。

ジョン・コルトレーン「Live Dusseldorf」

旧作の中からではこれを選ばせてもらいました。なんとメンバーがウィントン・ケリー(Piano)ポール・チェンバース(Bass)ジミー・コブ(Drums)にスタン・ゲッツ(A.Sax)オスカーピーターソン(Piano)というレアメンバー。

選曲はマイルスバンドでよくやっていた物ばかりで”On Green Dolphin Street”,”Walkin'”, “The Theme”, “Autumn Leaves”、”Rifftide”の5曲です。基本はコルトレーンのカルテットでラストの曲だけスタン・ゲッツとオスカー・ピーターソンが参加しています。

最初の4曲はマイルスの黄金期のバンドでやってきただけあって熟成された演奏です。

ウィントン・ケリーのキラキラしたフレーズ、推進力のある力強いポール・チェンバースのベースライン、スムーズでシンプルなシンバルレガートに加え時々鋭く気持ちよく入ってくるスネアのコンピングをくりだすジミー・コブのドラミングのリズムセクションが最高に気持ちいい空間を作ります。

最後の曲のゲッツとピーターソンが入った曲はセッションっぽくもありますがどことなく初期のビバップやウエストコーストの雰囲気が漂っています。ゲッツが参加するだけでこうもバンドサウンドが変わるのかと感じるテイクです。

テーマのあとはコルトレーンのソロから入っていきますがコルトレーンのバックで入っているオスカー・ピーターソンのコンピングがめちゃくちゃご機嫌です。

この相乗効果なのかドラムのコンピングの入れ方やスタイルが全く違って面白いです。ジミー・コブもこういうプレイするんだなと改めて凄さを感じたテイクでした。オスカーのソロは非の打ち所がないプレイで聴いていてテンションが上がります。

違うメンバーが加わることでいい化学反応がこのテイクでは起こっていてジャズの面白さが改めてわかるようなアルバムです。

アンドリュー・レンフロアー「Run in the Storm」

これは音楽仲間から教えてもらったギタリストで最近きているギタリストの1人です。

本人のYouTubeから。この動画では同じくギタリストのジュリアン・レイジのようなテイストも感じますがこのアルバムではカート・ローゼウィンケルのようなスタイルで攻めています。

ピッキングや弦の鳴る生音も混じっていてエレキにアコースティックさを混ぜたようなプレイもしていて今のコンテンポラリージャズにしては少し珍しいギタープレイをみせます。

メンバーにはブラクストン・クック(A.sax)、リック・ロサート(Bass)という若手で今一番活躍しているメンバーが参加していてすでにベテラン感の漂う演奏内容です。

ドラムはシンセを混ぜた演奏になっていて打ち込み感があります。

ですがその場で出てくるフレーズのアイデアやアンサンブルのフィット感もあるので人力でやっているだろうとすぐに感じます。

個人的には生音の方が微妙な表現の方が好きなのと打ち込みのようにダイナミクスの幅が広がらなくて単調に聞こえる瞬間もあるのでハマらないところもありますが、アコースティックとエレクトロニクスの部分を混ぜるというコンセプトが全体的に見えるので新しい挑戦としては面白いアルバムとなっています。

Yes! Trio「Spring Sings」

アーロンゴールド・バーグ(Piano、オマー・アビタル(Bass)、アリ・ジャクソン(Drums)のトリオですが個人的には珍しいメンバー。知的で都会的なピアノスタイルのアーロンと土着的で野生的なスタイルを持つオマー、トラディショナルなジャズを得意とするアリがどういう風に混ざるのか聴く前から結構興味津々でした。

結果から言うと3人のスタイルがかなりうまく噛み合います。

むしろかなり相性がいいトリオで今までにない新しいサウンドです。アーロンの印象は変わらないですがオマーの音色が相当よくクラシック音楽のように音色が綺麗です。

弓の音も相当綺麗で1曲目のベースメロディから心掴まれます。

アリ・ジャクソンといえばウィントン・マルサリスのドラマーとして有名ですがシンプルなプレイで音楽の空間がスッキリしてピアノとベースの音の良さがより引き立ちます。

2曲目のスイングもベースがグイグイ引っ張ってそのグルーヴにすぐに乗っかっていくようなピアノソロを展開していきます。

アリも推進力の高いスイングをみせますがあくまでもシンプル。無理にバンドをロックさせるようなプレイもなくとにかくナチュラル。

ピアノのフレーズやベースのフレーズに合わせたくなるようなところも違うアプローチを展開して他の2人が自由になれるようなスペースを作っています。

3人とも情熱的なプレイをするのですが上品で知的感ある大人なプレイ。

一度はこんなマインドでプレイしてみたいと思わせる1枚です。これからの自分のスタイルに影響させていきたいという事で個人的にがこれを選ばせてもらいました。

 

というわけで今年よく聴いたオススメアルバム5選です。

今年も面白い新譜が多くて楽しめました。自分が20代前半の時に憧れていたプレイヤーがもうベテランになっていて自分も歳をとったんだなと感じます。。

日本でも海外でも優秀な若手が多く出てきてこれからもますますジャズ業界が楽しみですね。

今年も本当にあっという間でしたがまた来年もよろしくお願いいたします。良いお年を!



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。