Nu Deco Ensemble +Aaron Parks Live From Miami | アーロンの曲の美しさを100%引き出す21世紀のオーケストラ

Nu Deco Ensemble + Aaron Parks

今回は2021年聴いたアルバムでベストに入るアルバムをご紹介します。

2021年もコロナの影響でジャズのみならずさまざまなジャンルの音楽において新譜は少なかったのですが、その中でも気に入ったアルバムが何枚かあります。順次紹介していくので是非聴いてみてほしい!

今日はそんなうちの1枚です。

Nu Deco Ensemble +Aaron Parks「Live From Miami」(2021)

パーソネル

  • Nu Deco Ensemble
  • Aaron Parks(Piano)
  • Sam Hyken(Arranger)

アルバムトラック

  1. Siren
  2. Chronos
  3. Interlude
  4. Nemesis

Nu Deco Ensembleを知らない人のために少し説明させてもらうと、ストリングスやホーンセクションにエレキギター、ベースそしてドラムまで入っている現代向けとも言えるオーケストラです。

ゲストプレイヤーにR&Bで有名なロバート・グラスパーやラッパーのビラルを呼んだり、ダンサーをフィーチャーしたり、バルトークのようなしっかりしたクラシック音楽を取り上げたり多彩な音楽活動をマイアミで行っています。

そして今回フィーチャリングされたのはあのコンテポラリージャズ界の第一人者であるアーロン・パークス!

特に20代30代のジャズプレイヤー、リスナーにとってみればアーロン・パークスは憧れのジャズピアニストと言ってもいいでしょう。

私にとってみてもジャズを始めた頃から聴いていましたしアーロンの音楽には私の青春が詰まっています。

きっとそういう人も少なくないはずです。

このアルバムではアーロン・パークスの曲とプレイにスポットを当てています。

こういう人にオススメなアルバム

  • コンテンポラリージャズ好きな人
  • オーケストラが好きな人
  • ロックのような歪んだ音色が好きな人
  • ドラマティックな音楽が好きな人

これらに当てはまる人にはすごくオススメです。

モダン、トラディショナルなジャズしか聴かないという方は納得しないかもしれませんがもし上の項目に1つでも当てはまるならこのアルバムは絶対気にいると思います。

アーロン・パークスの曲を知っていたほうがいい?

はっきり言っておくとアーロン・パークスの曲を知っていればこのアルバムは更に楽しめます。

むしろ先にアーロンのオリジナルを聴いて欲しいくらいです。

created by Rinker
Blue Note

上記3枚に収録された曲がフィーチャーされています。

今回紹介するアルバムのLive From Miamiは、アーロンの曲のディテール、雰囲気、アーロンのプレイをよく知った上で1曲1曲丁寧に、そして大胆にアレンジされています。

どれもリスペクトを感じる構成やパート作りがされており、アーロンフレーズまでアレンジに使われていたりと、彼のプレイをよく知る人ならば細かいところまで楽しめるように作り込まれています。

それを味わうためには先にアーロンのオリジナルを聴くのを強くオススメするのでぜひ先に聴いてみてください。

もちろん聴いていなくても十分に楽しめる内容にはなっていますので、全然知らなくても大丈夫ではありますが。

壮大なアンサンブル

アレンジが細かいのに更にNu Deco Ensembleのバンドレベルがめちゃめちゃ高いのです。

想像を超えるアンサンブル力。それぞれのプレイヤーが楽器を操る腕もあると思いますがアレンジを最大限に引き出すアンサンブル力は感動ものです。

オーケストラだからアンサンブルがすばらしい、というよりも、Nu Deco Ensembleだからアンサンブルがすばらしい、というように感じます。

アーロン・パークスというプレイヤーの頭の中の音楽を広げたら、とんでもないものができてしまった、本当にそう思わせるほど壮大な音楽です。

1曲目の”Siren”はアーロンのピアノイントロから始まり普通のピアノトリオのようにメロディが始まります。

アーロンがメロディ最後の音をバトンを繋ぐかのようにストリングスに託し、そこからまた世界が広がっていきます。

次のメロディは音色が優しいオーボエに移りバックには豪華なストリングスが入りいつものアーロンのバンドでは出せないサウンドが広がります。

テーマが終わってソロにつなげるセクションもドラマティックなので聴いている側を惹きつけてピアノソロに入っていくアレンジが見事です。

ソロが終わってからもセクションが変わりさらに壮大な展開をみせます。ラストテーマに入るところは爽快かつアーロンの持つ曲の美しさが融合して最高に心地いいサウンドに包まれます。

1曲目だけでもこんなに展開があるのに2曲目から4曲目はたたみかけるようにドラマティックにつながって“Nemesis”のイントロに入った瞬間「待ってました!」とファンに思わせる流れになっていて通して聴いても最高です。

アルバム最後の曲のエピソード

アルバム最後の曲”Nemesis”を知らない方のために少しだけ説明させてもらいます。

この曲はアーロン。パークスがブルーノートレーベルで最初に出したINVISIBLE CINEMAというアルバムに入っている曲です。

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Blue Note

本人も気に入っているのかライヴで何度も演奏しているのを見たことがあります。

レコーディングではギターがマイク・モレノですがライヴではカート・ローゼウィンケルとやっていたりしています。テーマはギターが歪ませた音色で弾いているのが特徴です。

というのもこの曲は雨の光景を思い浮かべた曲らしく、イントロのピアノのフレーズは雨、ギターのメロディは雷というのを本人から聞いたことがあります。

その雷音を見事ここでもこのバンド風に再現していてそこもいいと思わせるポイントです。

このアルバムではアーロンとギタリストのソロの掛け合いが聴きどころでこのギタリストもカートやマイクを尊敬しているのがよくわかるソロになっています。

個人的に惜しいところもある

Live From Miamiは少し残念な部分もあります。アーロンがフィーチャーされているので生のピアノを聴きたいのですが、生ピアノでソロをとっている曲が少ないです。

バンドに圧倒されるからなのかほぼキーボード(モーグ)を使っているソロが目立ちます。

テーマや前半部分はピアノ中心のアレンジだったりしますが盛り上がる部分はキーボードで、少し力技だったりするので個人的には生ピアノソロもう少し聴きたかったなと思いました。

それと肝心な生ピアノのレコーディング音もいつものアーロンのタッチよりは硬めで明るすぎる感じです。

アーロンのまろやかでダークな部分が今回このレコーディングで再現されていなかったのは少し残念なポイントでした。

それでもソロの内容やアレンジは抜群にすごく、聴こえてくる音楽の世界に圧倒されます。

公式のYouTubeチャンネルでもこのアルバムの様子が見れる

新譜でアーロンのピアノと世界観あるオリジナルを聴ける最高なアルバムなので超オススメです。

アルバム全体を通して聴けるストリーミング再生がオススメですがNu Deco Ensembleの公式Youtubeチャンネルでもそのレコーディングの演奏が見られます。

 

気に入ってもらえればぜひ何度も聴いてみてください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。