プロのジャズミュージシャンに教わる ツーファイブワンって何ですか?(前編)

ツーファイブワンについて学ぼう

先週のカデンツァに関する記事でも少し扱いましたし、そもそもジャズのアドリブをしようというときに必ず出てくるキーワードですが、今回はアドリブについて絶対に素通りすることのできないツーファイブワンについて書いてみたいと思います。

このトピックに関する記事なんてネット上で他にもたくさんありますが、その概念自体大して難しいものではありません。

しかし僕自身、ツーファイブワンをきちんと理解することができたのは実際にレッスンを受けてみてからでした。

ですからぜひとも金村盡志トランペット教室へ…じゃなかった(笑)。

ですから今回の記事ではなるべく重要なことから書いていき、少し細かい話は省略したり、練習問題によって理解を深めていただこうと思います。

多くの教則本にあるように、これからII-V-Iを学び始めようという人に1から10までドドっと教えてしまっては理解が進みません。

それでも今回は長くなってしまいましたが、最低限の知識でとりあえず演奏をできるようにすることが先決です。

細かいことについては演奏に対して、そこそこ理解が深まってから学んだ方が効率的であると僕は思います。

ツーファイブワンとは何か?

簡単に言うと、ジャズのスタンダード曲で頻繁に用いられるコード進行です。

小説に例えるならば、小説はたくさんの文章を積み重ねていくことによって全体の大きなストーリーを紡いでいくものですが、ツーファイブワンはその1つひとつの文章に相当します。

そもそもツーファイブワンという名前は、そのコードのルート(コードネームの大文字で書いてあるアルファベット)の相対的な度数によるものです。

ドレミファソラシはCDEFGABに対応していますが、例えばCを1度としてみた場合、ツー(2度)はD、ファイブ(5度)はGとなります。

これは相対的な度数ですから、例えばFを1度と考えた場合、ツー(2度)がG、ファイブ(5度)はCとなります。

もちろんルートにシャープやフラットがついた場合他の音も同様に変化していくのですが、本文ではややこしくなるので取り扱いません。

後で練習問題を作るので解いてみて下さい。

またツーファイブワンは多くの場合II-V-Iなどのようにローマ数字で表記されます。

以下の文章でもなるべくこれに沿って表記していこうと思います。

なぜツーファイブワンを学ぶ必要があるのか?

ジャズのスタンダード曲で頻繁に用いられるコード進行であり、極端な話、II-V-Iだけを完璧に演奏できたとしたらスタンダード曲をかなりスムーズに演奏することが可能になるからです。

またこのコード進行の演奏に慣れていく過程でハーモニーに対する感覚が強化されていくため、II-V-Iの部分だけでなく総合的にアドリブの演奏能力が大きく向上することに役立つからです。

ツーとファイブとワン、それぞれの役割は?

先ほどコード進行を小説に例えましたが、ほとんどの小説には起承転結が存在します。その中の1つひとつの文章だって分解してみれば緩やかな起承転結の要素を含んでいます。

例えばこんな感じです。

「今日は晴れていたので(←起・承)インドカレーを食べに(←転)行きました。(←結)」

文章全体は内容がありそうでない内容ですが(笑)、ごく緩やかな起承転結が存在しています。

さて、起承転結を実際のII-V-Iに置き換えるとこんな感じです。

II:サブドミナント(起・承=序章、物語の前ふり)

V:ドミナント(転=クライマックス、もしくはこの先どうなるかわからない不安定感)

I:トニック(結=問題が解決した状態、安定感)

Cを基準(1度)として考えるとD-G-Cとなります。

ここではひとまずルート以外の記号(メジャーやセブンスなど)については置いておきます。

 

ほとんどの場合この3つのコードをセットで覚えましょうねということになるのですが、実はそれぞれの役割や性質についてもう少し考えてみるとその重要度に明確な差が存在することに気付くはずです。

すなわち物語について考えるときに最も重要なことは当然のことながら結論(トニック)です。

その次に結論へ至るまでの紆余曲折、なかでもクライマックスにあたる部分(ドミナント)が重要です。

序章や物語の前フリとなる部分はそもそも後のクライマックスあってのものです。

“サブ”ドミナントと呼ばれるくらいですし。

 

こうしてみるとII-V-Iというコード進行は実は後ろへ行くに従って重要度が高いということもお分かりかと思います。

極端な話、II-V-Iになっている部分をトニックだけで演奏しても、非常に単調な雰囲気になるというだけで大きな問題は起こりません。

当然、ドミナントとトニックだけでの演奏でも全く問題はありません。

ビバップが生まれる前の古いスタイルのジャズの多くはこれらのように演奏されることがほとんどでした。

逆にII-V-Iの部分をサブドミナントのみで演奏するとなると、それはもはやII-V-Iの一部を延長したものというよりは全く別のコードとしての演奏として聴こえてしまいます。

II-V-Iにおけるルート以外の記号=コードクオリティについて

ちょっと横道に逸れましょう。

当たり前のことですが、コードにはそれぞれメジャーやマイナーなどが存在します。

これをコードクオリティと呼びますが、II-V-Iで用いられるコードだってもちろんコードクオリティは重要です。

ここでその一つ一つについて細かく解説することは初心者にとってはむしろ頭を混乱させる原因となるため、とりあえず以下のような感じで覚えておいてください。

メジャーのII-V-I

IIm7-V7-IM7

(ツーマイナーセブン-ファイブセブン-ワンメジャーセブン)

 

マイナーのII-V-I

IIm7b5-V7-Im7

(ツーマイナーセブンフラットファイブ-ファイブセブン-ワンマイナーセブン)

実際のスタンダード曲では敢えてコードクオリティを変えることによって少し捻ったII-V-Iも多く登場しますが、とりあえず上記がII-V-Iの基本形です。

実際の楽譜を見てみるとF6やB7b13、Am11などという見慣れないクオリティのコードが書いてある場合があります。

その場合、メジャーっぽいものはメジャーセブン、セブンっぽいものはセブン、マイナーっぽいものはマイナーセブンと大雑把に仕分けてしまいましょう。

例に挙げたものですと、F6はFM7、B7b13はB7、Am11はAm7と同列に考えてしまって結構です。

ちょっと乱暴な仕分け方かもしれませんが、II-V-Iについて学び始める初歩の段階であまり枝葉のことを考えていては埒が明きません。

冒頭でも書いたようにそこそこ演奏できるようになってから、後の細かいことについて考えることができるようになれば良いのです。

まずドミナントからトニックへの流れに注目

さて、ハーモニーの観点からもドミナントからトニックへと注目する理由が分かるかと思います。

ここではIとしてCM7、VとしてG7をピックアップします(CM7は音の移行が分かりやすいように1オクターブ上げてある)。

ツーファイブワン

まずG7の3度と7度の音の関係に注目してみましょう(この3度と7度、ガイドトーンとも呼ばれます)。

これらはBとF、増4度の関係にある和音です。

この音程は実際にピアノなどで弾いてみればわかると思いますが、とても不安定な感じのする和音です。

もしピンとこない場合はその付近の和音(BとF#、BとE)と弾き比べてみると一目瞭然です。

一方、トニックであるCM7にはその2つの音に近い別の音が存在します。

それがCとEです。この2つは長3度の関係にあるので非常に安定した音程です。

実際にB,FからC,Eへの音の移行をピアノで弾いてみましょう。

ツーファイブワン

これがマイナーのII-V-Iの時には以下のように少し変わってはきますが、基本的には不安定な音程から安定へと向かう同様の動きが起こっています。

ツーファイブワンツーファイブワン

このように不安定から安定へと向かうVからIへの動きのことをドミナントモーションと呼び、ドミナントモーションによってトニックへ「解決した」などと呼んだりします。

実はこのハーモニーが「解決」する感じを敏感に感じ取ることができればII-V-Iの演奏は決して難しいものではないのですが、そのためにはある程度のトレーニングが必要です。

ここまで読んでみてなんだか難しそうだなと思った方、とりあえずドミナントの3度と7度(=ガイドトーン)は大事なんだなと思っておいていただければ十分です。

また、西洋音楽の世界では音は12個しか存在しません。

ですから基本的なII-V-Iも12種類しか存在しないことになります。

もちろん上に書いたようにマイナーへ解決するII-V-Iも存在しますし、基本形から外れた並びのものも存在しますから厳密にはその数倍は存在することになります。

しかし、基本となる12個のメジャーII-V-I以外は全てその派生ですからゼロから覚えるような大変さはありません。

ですから、たった12個の基本形を演奏できるようになればいいわけで、そのうえ簡単なスタンダード曲のみであればその中の4つか5つで演奏できてしまう曲も少なくありません。

いかがでしょう? アドリブって簡単そうじゃありません?

まあ実際にやってみるとそう簡単でもないんですが(笑)

というわけで来週は実際にはどのようなトレーニングが必要なのかということをメインにお届けしようと思います。

おっと以前書いた僕のブログの宣伝も。

以下は今回の記事とは逆の発想で、II-V-Iなど分からなくてもアドリブがしたいという方向けの記事です。

これからII-V-Iを理解したいという方も読んでみて、これらの記事の中に知らないことがないかチェックしてみると良いと思います。

ページの末尾に練習問題を記載しています。ぜひ試しに解いて見てくださいね。

なるべく覚えない!初心者向けアドリブ講座 #1

なるべく覚えない!初心者向けアドリブ講座 #2

 

なるべく覚えない!初心者向けアドリブ講座 #3

ロングトーンのついでにアドリブの練習をしてみよう

 

練習問題

例題:CM7へ解決するII-V-Iを書きなさい。→Dm7-G7-CM7
1.C#M7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
2.DM7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
3.FM7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
4.GM7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
5.Cm7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
6.Am7へ解決するII-V-Iを書きなさい。
7.ドミナントがB7であるII-V-Iを二つ書きなさい。
8.サブドミナント、ドミナント、トニックそれぞれの役割を今回の記事を踏まえて重要な順に並べ、それぞれの役割を書きなさい。
答えは来週!



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。