マイナーだけど推したい 豪快だけど気遣いができるドラマー、ミッキー/ローカー

Mickey Roker

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今回もあまり知られていないけどオススメしたいドラマーのご紹介です。

ミッキー・ローカー

前回のシャドウ・ウィルソンよりは知られているドラマーかもしれませんが彼も職人気質なのでサイドマンに徹してきたドラマーです。

Mickey Roker(1932年ー2017年)

マイアミで生まれ育ちますが10歳の時に母が亡くなり、フィラデルフィアの祖母の家に引っ越します。その家にいたおじに初めてのドラムセットを買ってもらいミッキー・ローカーのドラム人生がスタートしたそうです。

この叔父はとてもジャズが好きだったようでフィラデルフィアのジャズ界隈に引き込んでいきますが最初はマーチングバンドやミリタリーバンドが主な活動場所となります。

実際にジャズドラムを始めてキャリアを積み始めたのはアメリカ軍への入隊後。

この後23歳で軍を辞めてフィラデルフィアでミュージシャンとして活動し始めます。

始めた当時はドラマーのケニー・クラークや同じフィラデルフィア出身のフィリー・ジョー・ジョーンズなどに憧れていたといいます。

たしかにミッキー・ローカーのオントップで進んでいくプレイスタイルはフィリーを感じますね。

そこからジミー・ヒースと共演し、彼の紹介で著名なヴィブラフォンプレイヤーであるミルト・ジャクソンと出会いニューヨークに移っていろんなプレイヤーたちと繋がりだしました。

ディジー・ガレスピーのビッグバンドで活躍したり、デューク・ピアソン、アート・ファーマー、ソニー・ロリンズ、ジョー・パスなど多くのミュージシャンを支えるドラマーとなります。

そしてあのMJQ(モダンジャズカルテット)のバンドメンバーとなります(先述のミルト・ジャクソンも在籍しているバンド)。

それくらいスター性があるにも関わらずあまり表立ってこなかったのはなぜでしょう。全く根拠はないですが私なりに考察してみました。

なぜミッキー・ローカーはマイナーなのか考察してみた

勝手にマイナー扱いして申し訳ないですが、やっぱりこの時代のドラマーとしては先にアート・ブレイキー、ロイ・ヘインズ、マックス・ローチが出てきますし、フィリー・ジョー・ジョーンズやエルビン・ジョーンズ、トニー・ウィリアムスなどが取り上げられることが多いです。

考察した理由として

その1. マイルスディビスのようなスター性のあるミュージシャンとあまり関わりがなかった

というのが挙げられます。

これは勝手な推測ですが事実としてあるのがマイルスと関わりがあるドラマーはほとんど名前が知られているということ。

アート・ブレイキー、アート・テイラー、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ジミー・コブ、トニー・ウィリアムス、ジャック・ディジョネットなど多数いますが全員有名なプレイヤーです。

これはドラマーに限ったことではないですがマイルスに関わったプレイヤーほとんどがリスナー、プレイヤーみんなが知る実力派という扱いをされます。しかしミッキー・ローカーは関わりが薄くレコーディングされたアルバムもありません。

他のレジェンドミュージシャンとは多くレコーディングを残してますがメディアが第一に取り上げるマイルスとあまり関わりがなく露出が少なかったのが理由の1つかもしれません(現在だけでなく当時もマイルスはジャズ界では脚光を浴びる存在だったそうですよ)。

ミッキー・ローカーが参加したMJQのアルバムも1992年のアルバムのみな上に、バンドとしての全盛期は過ぎた後、でした。

そのためMJQのドラマーは、というとミッキー・ローカーの前のドラマー、コニー・ケイのイメージが強いですよね。

その2. リーダーアルバムがない

ほとんどサイドマンでしか活躍しておらずリーダーアルバムを見かけません。

ドラマーとしてスター性があればブルーノートなどのレーベル会社がレコーディングの話を持ちかけると思うのですが、本人もサイドマンが性に合っていたのかもしれません。

そのため、彼のアルバムを現代人である我々が探すのは苦労を感じるでしょう。なにせデジタル配信ではサイドマンの表記はほとんどありません。

以上のことが彼をマイナーたらしめる理由ではないかと思います。随分昔のことですから、当時の時代背景や音楽ビジネスのことなどを加味すると、考察がどこまで正しいかは難しい所ですが。。

ただ、こういった考察をしてしまうほど個人的には好きなドラマーですので多くの方に知ってもらいたいと思います。

プレスタイルはこんな人

第一印象としては豪快なスイングでグイグイ引っ張っていくプレイスタイルです。

しかしよく聴くとコンピングで展開をつけていくのがめちゃくちゃうまくてソリストは何をやっても正解に聞こえるほどコンピングの組み立て方が完璧です。

コンピングは主に合いの手なのでソリストが何かやってから反応するというのがセオリーですが、ミッキー・ローカーの場合はソリストを聴きながらどんどん次のアイデアをソリストに振っていくタイプなので展開がめちゃめちゃ速いです。

しかもこの4ビートとコンピングが絶妙にバランスが取れているので、コンピングやりすぎ感もないですしむしろライドシンバルのプッシュしてくる存在感が強いです。

このプッシュの仕方も使い分けがうまく、スムーズに先のグルーヴを作っていくタイプと大きいスイングでグルーヴをプッシュしていくタイプとで使い分けています。

豪快に引っ張っていくのに細やかな気遣いができる人って素敵ですよね。

オススメの参加アルバム

・「Speak Like A Child」ー By Herbie Hancock

以前取り上げたことあるアルバムですが、改めてミッキー・ローカーにフォーカスして聴くとスムーズで力強いスイングがいいですね。

このアルバムは全体を通してストーリー性があり曲間でシーンが変わるのが特徴的ですが、そのカラー(雰囲気)をガラリと曲ごとに変えています。

変え方の手法としてどれだけコンピングを入れてソリストに反応するか、音量によって変化する音色をうまく使ってプレイを変えているように感じます。

そこら辺のさじ加減を調整できるのは豊富な経験と客観的な視点を持っているのでこういうクレバーな選択ができるのでしょう。

・「Groovin’ High」ー By Hank Jones 

created by Rinker
ポニーキャニオン

1978年にレコーディングされたこの頃のドラムの音作りはフュージョン色があってあまり好みではないのですがライドシンバルのスイング感は最高です。

とにかく何もストレスなくスムーズに進んでいくグルーヴは爽快ですし頭を空っぽにして聴いていられるくらいシンプルに聴こえます。

それでもコンピングはバンバン仕掛けていき、ジェットコースターのように周りを振り回してどんどん先に連れていく感覚もあります。

ハンク・ジョーンズのソロ中もカラーを微妙に変えていく技がお見事です。

・「Sonny Rollins on Impulse!」ー By Sonny Rollins

ロリンズが初めてインパルスでリリースしたアルバムです。ライヴレコーディング並みに演奏に力が入っています。

なかなか硬派な演奏で聴くのに体力を使いますが、プレイヤー同士かなり聞き合ってダイナミクスや演奏の方向性をその場で決めていく曲が多く全員が自由にやっています。

先の展開が誰も読めないのでかなり挑戦的に聞こえますが、その中でもミッキーローカーが道を作って確信して突っ切っていくので音楽として成立している部分が結構あります。

個人的にとても推したい

どのアルバムも豪快にひっぱていくミッキー・ローカーのプレイスタイルが個人的には好きですし、この強烈なスイングする力も魅力的です。

あまり知られていはいないですがジャズ界に誇れるレジェンドの1人なのでぜひ聴いてみてください。



ABOUTこの記事をかいた人

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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。