ジャズにおいて意外と重要なもの。それがバンドの編成人数です。
たとえば「1人で演奏しているものが聞きたい」「大人数でダイナミックに演奏しているものが聞きたい」そういった聞き分けをしたい場合に、何人編成で演奏しているのかを知るのに必要です。
ポップスやロックと違い「バンド」という集合にあまり頓着がなく、メンバーや編成が流動的なジャズならではのポイントかもしれませんね。
さあ、さっそく覚えて行きましょう。
1人:ソロ
1人で演奏することは、ソロ、と呼びます。このあたりはそんなに難しくないですよね。日常会話の中にも出てくるかも知れません。
「私ソロでいきたいから」「ソロでフレンチ食べるのキツくない」「ソロの人ばかりそろってそろそろと歩いていく姿そろそろ見かけるそろもよう」なんて、街でも聞こえてきます。
ジャズにおいてソロの編成での演奏が有名なのはやはりこの人でしょう。
名ギタリスト、ジョー・パスです。
Virtuoso、つまり巨匠と銘打ったアルバムがいくつか出ており、いずれもソロギターのみで演奏しています。
1人演奏ならではのフリーテンポを基調とした演奏から、リズムにのってベースからコード、はてはメロディーまで同時に演奏する姿はファンも多数です。
同じように演奏したいと考えるギタリストは多いのですが、ハッキリ申し上げて難易度はエベレスト級です。
2人:デュオ
2人編成はデュオ、と呼びます。
コード楽器とフロント楽器(和音が出せない楽器がそう呼ばれることが多い)の、少人数編成。
編成楽器が少ないことでインタープレイ、つまり音の掛けあいがよりクリアに表現されリスナーからも人気の編成です。
が、近年では電子楽器の進化により一概に編成楽器が少ない、とも言えなくなってきました。
こちらはロバート・グラスパー・エクスペリメントのメンバーとしても有名なケイシー・ベンジャミンとマーク・コレンバーグのデュオ。
ケイシー・ベンジャミンがDJセットを多数使用して、2人だけでまるでもっと大人数で演奏しているかのようなバンドサウンドを創り出しています。
少人数だからこそ音楽の方向性の浸透しやすさを失わずに、音に広がりを持たせる。
新しいタイプのジャズは新しい技術を自由に取り込んでいきますね。
3人:トリオ
3人編成はトリオ。特にバンドリーダーがピアニストに多い編成ですね。
コードレスに、サックス、ベース、ドラム、というソニー・ロリンズの昔の編成を踏襲することも多い形態です。
ジャズ、と聞いて連想することの多い編成らしく、ゆったりとしたピアノトリオは喫茶店などで流すコンピレーションアルバムなどにもよく収録されています。
とくにピアノトリオの演奏では、ビル・エバンスの演奏が人気!
1980年に惜しくも亡くなりますが、2019年の現在でも人気は衰えません。
ちなみに、僕が一番よく聴くアルバムもエバンスのものです。
Waltz For Debbyの美しさは時代を問いません。
4人:カルテット
サックスプレーヤーやギタリストなどが好んで編成する4人組は、カルテット。
ピアノトリオにプラスフロント楽器、という、ジャズにおいてはわりとスタンダードな編成です。
カルテットは名演の多いことでも有名ですが、わりと好きなのがウェス・モンゴメリーのカルテット。
60年代ながら、現在も同じようなスタイルで演奏するミュージシャンも多く、新旧のジャズファンに受け入れられやすい演奏です。
5人:クインテット
さあ、ここまでくると演奏の音量もだいぶ大きくなっていきます。5人組はクインテット。
古い音源だとアートブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズや、マイルス・デイビスのバンドなど、ピアノトリオにサックスとトランペットという編成も多くなります。
近年では、ヴィブラフォンやDJを入れるスタイルなど、わりと柔軟性を持ったバンド編成として人気です。
若手のヴィブラフォン奏者のステフォン・ハリスのバンド。こういう変則的な編成も、最近では変則的、ではなく、普通になってきました。
6人:セクステット
このへんから大人数だなー、と思う編成です。
前に、セクステットくらいから「大人の都合でスケジュールが合わなくなってくる…」なんて聞いたこともあります。
音量が大きくなるので小さいバンドセットが多いライブハウスで演奏すると、ハウリングなんかのトラブルも起きやすくなります。
わりと扱いにくい編成かもしれませんね。
映像はウィントン・マルサリス セクステット。技巧派集団として有名なバンドです。
7人:セプテット
セプテットはほとんど見かけることのない編成なんですが、わりと音楽教室のバンド内で編成したアマチュアバンドなんかで見かけることがあります。
こちらはマイルス・デイビスのセプテット。今はこういう演奏をするバンドはたくさんいらっしゃるんですが、80年代半ばでは本当に珍しかった。
20年は先をいっていましたね。
8人:オクテット
さあ〜、だんだんとやっているバンド数が少なくなっていきます。
このあたりから、いわゆるコンボジャズのラフな演奏ではなく、ビックバンドに近いわりと堅めの演奏スタイルに。
映像はミシガン州立大学の演奏。
いやー、オクテットくらいだとプロの演奏があんまりないんですよね。
ビックバンドとコンボの中立で、わりと中途半端な編成と言えるかもしれません。
9人:ノネット
ノネット、もしくはナインテットと表現するようです。しかしながら、この編成はオクテットよりも見かけない。
逆に、ノネットの音源たくさん持っているという人がいたら教えてもらいたいくらい。
9人組と聞いて思い浮かぶのは、おそらくマイルスのBirth Of Cool じゃないかな。録音日は違うものもあるんですが、いずれも9人組で演奏を。
アドリブよりもある種決め打ちである、クール、という演奏方法に主眼を置いた作品。いやー、ほかにはすぐに思いつくバンドなかなかない…。
10人:テンテット
10人となるとテンテット! 10人だと、テンテットと呼ばれるよりもラージアンサンブル、なんて呼ばれることもあります。
ノネット同様、この編成で演奏しているバンドをほとんど見かけません。
いや、ラージアンサンブルとして10人になっている、というのはあります。しかし、わざわざテンテット、と、表記しなくなるというか。
あえてテンテット、と表記しているのはかなり珍しい編成です。
映像はウィントン・マルサリス・テンテット。
そう、セクステットのときにも出てきた、現代音楽を代表するトランペッターです。
なにがすごいって、ここに出てきた編成、ほぼ全てをウィントン・マルサリスのプロジェクトで網羅できるんです。
あえて出しませんでしたが、ノネットでもオクテットでもバンドプロジェクトを成功させています。
ほんと、研究家、だけではなく、実践という意味でもすごい人です。
まとめ
さて、一応10人編成くらいまでが、ギリギリコンボジャズと呼べる編成でしょう。
今回の編成の呼び方はなにもジャズ専門のものではなく、クラシックなどでも使用します。というよりも、そちらが本命。
ジャズは、いろいろな音楽を取り込む、というよりも、いろいろな音楽の要素を借りることでできています。
これまでも、そしてこれからも、なにかおもしろいものと一体になって、ますます違うものへと進化していくんでしょう。
そんな様子を、このAOI JAZZでも追っていけたらいいなー、と、思っています。
それでは!