ジャズの歴史を変えた1枚。後世に受け継がれるロバートグラスパーの「Black Radio」

Robert glasper black radio

こんにちは野澤です。ゴールデンウィーク期間中は会社員でもないのでいつもと変わらない生活を送っていました。

前回でもお伝えしたように最近海外ミュージシャンの来日が増えています。

今月終わりにはあのロバート・グラスパーも来日予定です(2023年5月現在)。なので今回は来日も控えている日本でも大注目のピアニスト、ロバート・グラスパーのアルバム「Black Radio」をピックアップしてみたいと思います。

Robert Glasper 「Black Radio」

パーソネル

  • ロバート・グラスパー(Piano, Key)
  • デリック・ホッジ(Bass)
  • クリス・デイヴ(Drums)
  • ケイシー・ベンジャミン(Sax, Vocoder)
  • ミシェル・ンデゲオチェロ(vocal)
  • レイラ・ハザウェイ(Vocal)
  • エリカ・バドゥ(Vocal)
  • ビラル(Vocal)
  • シャフィック・フセイン(vocal)
  • ルーペ・フィアシコ(vocal)
  • レデシー(vocal)
  • ヤシン・ベイ(vocal)
  • クリセット・ミッシェル(vocal)
  • キング(vocal)

アルバムトラック

  1. Lift Off
  2. Afro Blue
  3. Cherish the Day
  4. Always Shine
  5. Gonna Be Alright
  6. Move Love
  7. Ah Yeah
  8. The Consequences Of Jealousy
  9. Why Do We Try
  10. Black Radio
  11. Letter To Hermione
  12. Smells Like Teen Spirit
  13. Twice
  14. A Love Suprime

ピアニスト、ロバート・グラスパーが信頼する最強リズムセクションにソウルやR&Bで第一線で活躍するミュージシャンたちをゲストに呼んで1枚のアルバムに詰め込んだ最高傑作です。

このメンバーでしか出せないというこだわりをサウンドや楽曲からものすごく感じます。

ブラックミュージックの本質をついたアルバムでありこれからブラックミュージックや他のジャンルにものすごく影響を与えたアルバムでもあります。

ジャズの概念が変わるアルバム

ブルーノートから出ているアルバムではありますがスイング好きの人から言わせるとジャズじゃないという意見もあると思います。

なんせこのアルバムではスイングなんて全く出てこないですしベースのウォーキングもなければソロ回しすらもほぼありません。

サウンドもエレクトリックでモダンジャズのようなアコースティックなサウンドのジャズではありません。

そしたらこのアルバムでのコンセプトはなんなのか。それはソウルやR&B、ラップなどのブラックミュージックとジャズの要素をかけ合わせたアルバムになります。

アルバムを聴いたらわかるかと思いますが1曲ずつフィーチャーされるボーカリストがメインになるようにグラスパーが楽曲やバンドのサウンドをうまくコントロールしています。

裏方というわけでなくグルーヴやサウンド全体がグラスパーのトリオでしか出せないオンリーワンなサウンドがしていてどの曲を聴いても極上サウンドです。

最近のミュージシャンは間違いなくこのグラスパーを通って一度はこのサウンドを目指しているでしょう。

今日本で活躍しているサックスプレイヤーMELRAWやCRCK/LCKSの小西遼もケイシー・ベンジャミンに影響受けているのがプレイスタイルからよくわかりますしKing Gnuのドラマー勢喜遊や石若駿もクリス・デイヴにめちゃくちゃ影響を受けていますね。

なのでこの作品には昔からあった全てのブラックミュージックを踏襲して1つにした革命的なアルバムになるのでジャズだけを求めては見当違いなアルバムです。

マイルスがジャズのレベルを押し上げたのと同じくらいジャズがまた大きく変化したアルバムになります。

どうやってこのアルバムを聴く?

1950年代のブルーノートレコードようにプレイヤーが何をやっているか一音一音じっと聴く、そういうタイプではなくポップスを聴くみたいにリラックスして聴くのがいい気がします。

どの曲もバシッと終わるわけでなくフェードアウトしていって次の曲に繋がっていくのでBGMとして流してもいいくらいです。

それくらいサウンドの心地良さやカッコ良さやオシャレさが溢れ出ているアルバムですね。1時間強というアルバムとしては割と長めですがずっと流しっぱなしでも飽きません。

もちろんじっくり聴けばおいしいフレーズがいっぱい詰まっています。ドラムの少しリズムを崩したり2、4拍目のスネアを叩くときにハイハットをオープンにしたりするのはクリス・デイヴフレーズの特徴ですね。

“Afro Blue”のイントロのピアノのフレーズもよくR&Bのプレイヤーはよく真似するフレーズです。

”Cherish The Day”の1音をリズミックに弾き続けるのもよくやる演奏方法になってきたのでブラックミュージックをやってみたい人には絶対に参考にしたいアルバムだと思います。

とは言ってももうこのアルバムが発売されたのは10年前。10年経ってもいまだに色褪せることなく多くのミュージシャンがこのサウンドを目指しているのはすごいですよね。

オススメのトラック

個人的にオススメの曲は”Afro Blue”,”Cherish The Day”,”The Consequences Of Jealousy”,”Why Do We Try”です。

“Afro Blue”はコルトレーンでも知られるジャズスタンダードですがそのトラディショナルなイメージが全くなくなるくらい再構築してR&Bに変換しています。

クリス・デイヴのスネアのリズムの位置やハイハットに置いたタンバリンの音色がザクザクする感じがたまらなく心地いいですね。

“The Consequences Of Jealousy”は個人的に大好きなミシェル・ンデゲオチェロがゲスト参加していて聴く前からテンションが上がります。実際に聴いたらそれ以上興奮するのでたまらない1曲です。

アルバムのトラックタイトル”Black Radio”もグラスパーのバンドらしさが出てる1曲ですね。

先述しましたがグラスパーが来るのは今月です。

人気なのですぐに予約が埋まってしまうかもしれませんが早めに予約して今回紹介したアルバムを聴いて見に行くとよりライヴを楽しめるかもしれません。この機会にぜひ目撃してはいかがでしょうか。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。