ジャズバラードの名曲をジャズトランぺッターが選ぶ(後編)

ジャズ バラード

前編ではトランペットで有名なバラードナンバーを中心に紹介してみましたが、後編となる今回は個人的にトランペットで演奏するのが好きなバラードナンバーを挙げていきたいと思います。

自分で言うのもアレですがいい曲ばかりですのでお楽しみに。

 

……と、ここまで書いてふと思い立ちました。

そういえばトランペット初心者が実際にバラードを練習するときって何の曲から手を付ければいいんだ?

というわけでまずはトランペット初心者の方におすすめできる曲を簡単に挙げてみたいと思います。

トランペット初心者へおすすめのバラードナンバー5選

トランペット初心者へおすすめのバラードナンバーを挙げるうえで以下の条件を付けたいと思います。

  1. 知名度があり、ジャムセッションである程度演奏されるもの
  2. キーが簡単で転調の少ないもの
  3. テーマがあまり難しくないもの
  4. コードチェンジがシンプルなもの

トランペット初心者にとってはこの条件は重要ですよね。

それではトランペット初心者へおすすめのバラードナンバー5選、いってみましょう。

 

I Fall In Love Too Easily

マイルス・デイビスやチェット・ベイカーによる演奏で非常に有名な曲ですから参考音源には困りません。

基本となるキーとその並行調で構成されているのでアドリブもそこまで難しくはありません(その分奥は深いのですが)し、テーマもシンプルで一般的な音域のみしか使わないため初級者向けと言うことができるでしょう。

My Foolish Heart

一般的にはピアニストのビル・エヴァンスによる演奏が最も有名かと思いますが、この曲もテーマがシンプルでキーも難しくなく、コードチェンジも比較的簡単な方なので、初心者の方がトランペットで演奏するのにうってつけな曲です。

Old Folks

この音源からだとバラードかどうか微妙な感じもするかと思いますが、マイルスの演奏などを聴くとより分かりやすいかもしれません。

楽譜を見ると8分音符が多く並んでいますが、記譜された通り吹くとイモっぽくなってしまいます。

それらの音符をいかに自分らしく演奏するかが特に重要な曲です

When I Fall In Love

こちらもやはりマイルスやチェットによって頻繁に演奏された曲ですし、実際にジャムセッションで演奏される頻度の高いバラードナンバーでもあります。

個人的にはなぜか気持ちよく歌うことのできないテーマなのですが、難しいことは全くないどころかシンプルでなおかつ簡単なキーとコードチェンジということで今回ピックアップしました。

 

When You Wish Upon  A Star

一般的な知名度の高い曲ではありますが、ジャムセッションでよく演奏されるかというとそこまででもないかなあという印象です。

実際ここに載せるためにYouTubeで音源を探しても適当なものが見つからず、とりあえずハイノートヒッターとして知られるウェイン・バージェロンとルイス・ダズウェルの音源を貼っておきます。

同じくらい簡単な曲であったとしても、知らないテーマと既に知っているテーマを吹くのとではかなりの違いが出てしまうものですが、そういった意味ではあまりジャズスタンダードに親しみのない初心者の方にもとっつきやすい曲ということができるのではないでしょうか。

 

というわけでこれからジャズのバラードに挑戦してみたいという初心者の方はここまで挙げたような曲から取り組んでみてはいかがでしょうか?

正直言ってバラードというだけでトランペット初心者の方にとっては決して演奏するのが容易なものではありませんが、ジャズを演奏する上で欠かすことのできない分野ですから、早めに取り組んでおいても損はないでしょう。

 

個人的にトランペットで演奏するのが好きなバラードナンバー5選

さて、ここからは個人的に好きなバラードナンバーをご紹介していきます。

あまり知名度の高くないものやトランペットで演奏するのが一般的でないものも含まれますが、どれも美しいメロディを持つ曲ばかりです。

この記事をお読みでトランペットの腕前に覚えのある方はぜひ一度挑戦してみていただきたいものです。

Ballad Of Sad Young Man

もともとはピアニストのキース・ジャレットの演奏でこの曲を知ったのですが、やはりこの歌詞を含めたボーカルを聴いて欲しかったので敢えてのロベルタ・フラックの音源です。

もの悲しげで非常に美しいテーマが魅力的です。

ジャズスタンダードバイブルに載っていないどころか楽譜を探すのも一苦労な曲ですが、決して複雑なコードチェンジではないので自分で採譜しても良いでしょう。

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トランペットではウィントン・マルサリスが”Standard Time vol.5”で演奏しています。

Ghost Of A Chance

高校生の頃、クリフォード・ブラウンの演奏を聴いて痺れた曲です。

乾いたまっすぐな音で朗々と歌い上げる感じがたまりません。

近年では(僕も含め)バラードといえばフリューゲルホルンに持ち替えることが多くなっていますが、フリューゲルなんて使わずに(というか持っていなかった?)男らしくトランペット1本で勝負というのもカッコいいですね。

この曲のコードチェンジは決して難しいということはありません。

しかしところどころちょっとだけ捻ってあるので、そんなところを汲んで演奏するのがまた楽しかったりするんです。

Lush Life

デューク・エリントンの右腕といわれた男、ビリー・ストレイホーンの曲で、この音源も本人による演奏です。

ストレイホーンといえば独特なチェンジと美しいメロディを組み合わせた作品が多いのですが、この曲はその中でも特に完成度の高いものであると思います。

なぜここで”完成度の高い”という表現をするかというと、このテーマ以上に美しいアドリブを発展させることがとても困難であるからです。

もちろん不可能とは言いません。

しかしこれまで世に出ているこの曲の演奏音源の多くがほとんどテーマをなぞったものや、アドリブを少しだけ行ったものであることがそれを物語っていると思います。

そもそもこの曲のバース(テーマの前の前奏部分のようなもの)とテーマを歌うように美しく演奏するのすら容易なものではありませんから、これをトランペットで演奏するのは表現の幅を広げるうえで非常に良いトレーニングになるでしょう。

Skylark

こちらは打って変わってスタンダードなバラードナンバーです。

トランペットではやはりフレディ・ハバードの演奏が有名でしょうか。

まあ正直普通のバラードナンバーではあります。

しかしメロディ冒頭が6thから入るのが印象的で、最初からぐっと心を掴まれるような感じがするんですよね。

難易度は比較的易しい方で、もしジャズスタンダードバイブル vol.1に掲載されていたらこの記事前半のトランペット初心者におすすめな方へ入れようと思ったくらいです。

Too Young To Go Steady

この曲もBallad Of Sad Young Manと同じくもの悲しくもとても美しいテーマを持つ曲です。

この音源ではテレンス・ブランチャードの濃厚な音色とよくマッチしていますね。

しかしこの曲もこれといって複雑な点はなく、良くも悪くもバラードナンバーにありがちなコードチェンジです。

ですからこの曲を実際に演奏して良さを引き出すには一工夫いるかもしれません。

 

というわけで個人的にトランペットで演奏するのが好きなバラードナンバーを紹介してみました。

今回挙げただけでなく世の中には本当にたくさんのバラードナンバーが存在しますから、あなたなりのお気に入り曲を見つけて演奏してみてはいかがでしょうか。



ABOUTこの記事をかいた人

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1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。