ジャズのアドリブがワンパターン化したら、演奏する音数を減らしてみると新しい展開が生まれる

ジャズをやっていると必ずと言って良いほどぶち当たる悩み、それが「アドリブがワンパターン化してしまう」です。

頑張ってアドリブフレーズの練習をして、いくつかのスタンダード曲を演奏することができるようになったのはいいけれど、なんだかいつも同じフレーズを使い回しちゃってるなぁ…と感じる人は少なくないですよね。

この記事の書き出しこそが、先週の記事の使い回しじゃないかという話もありますが(汗)、それはともかくアドリブのバリエーションを増やし、自由自在な演奏をするためにはどうすればいいのかというのが今回のお題です。

2つのベクトル

アドリブのバリエーションを増やすために必要な考え方は主に2つのベクトルに分けられると思います。

1つは引き出しを増やすこと、もう1つは演奏しながら新たな引き出しを開いていくことです。

こうやって書き出してみると、ジャズを演奏する上では当たり前のことなんですが、具体的にはそれぞれどのようにしていけばいいのか、言語化して考えてみましょう。

引き出しを増やす

 アドリブのバリエーションを効率的に増やす方法は、大方の予想通りかとは思いますが、やはりトランスクリプション(=耳コピ)が最も一般的です。

トランスクリプションに慣れている人は問題ないでしょうが、やったことのない人や、まだ慣れていない人にとっては、アドリブを耳コピして楽譜におこすなんて大変そうに見えてしまうかもしれません。

確かに楽な作業でないのは確かなのですが、単にアドリブのネタを増やすだけではなく、演奏のニュアンスや演奏する上で非常に重要な音感の向上にも役立つ作業なので、是非挑戦していただきたいと思います。

はじめ方のコツとしては、一気にやろうとせずに「今日はこの2小節だけやろう」などと、小さい目標を立ててコツコツと続けていくのがいいのかなと思います。

以前の記事も参考にしてみてください。

トランスクリプション以外の手段としては、シミュレーションが挙げられます。

これはコード進行に沿って1人でアドリブを練習する方法で、僕自身もレッスンでシミュレーションを多用します。

もちろん最低限のコードやスケールに関する知識は必要ですが、これはネタを増やすだけでなく、今まで持っているネタ同士をスムーズに繋げたりするのに役立ちます。

ちなみにジャズミュージシャン御用達のiReal proというアプリを使うと伴奏付きで練習できて非常に楽しいのですが、少し曲に慣れたらなるべく使わないようにします。

そもそもシミュレーションという練習の最も重要な点は、耳を育てるという点にあります。

自分が発する音がそのハーモニーの中でどう響くのかを感じ取ることが重要なのですが、常に伴奏アプリを使ってしまうと、いい加減に音を出してもそれなりに上手くできているような錯覚に陥りがちなのです。

耳を育てるというと小難しい印象を受けるかもしれませんが、実際に練習するにあたってはそんなに難しいことを考える必要はありません。ただただスムーズにコード進行に沿ってアドリブできるように練習するだけです。

そのうちに、自分の演奏したフレーズが伴奏と合っているか、合っていないかを聞き分けられるようになります。

シミュレーションは楽器さえあれば、いや最悪楽器がなかったとしても鼻歌で練習することだって可能なとても便利な練習です。

はじめのうちは伴奏ありで練習しても構いませんし、少し慣れてきたら伴奏なしで練習してみましょう。

これはあくまでも個人的な感想ですが、頭の中の回路がパチッパチッと繋がっていくような感覚が得られてとても楽しい練習ですよ。

伴奏なしでいくつかの曲を演奏できるようになってみると、アドリブのスムーズさが今までとは段違いになっているはずです。

他者と演奏しながら新たな引き出しを開いていくには、自分の音数をセーブしてみる

 実は先に書いたシミュレーションも、演奏しながら新たな引き出しを開いていくという志向の強い練習ではありますが、ここではより外的な要因に頼るという意味で別枠として捉えてみました。

一言で言うなれば「三人寄れば文殊の知恵」。そう、誰かと一緒に演奏をしてみることです。

自分の頭の中にないアイディアや思考が、他人の脳内にはあります。「自分の脳内にあるアイディアや思考が、会話を通じて他人のそれと交錯するとき、本人たちが予想だにしない素晴らしいものが生まれることがある」と僕は解釈していますが、音楽の演奏においても全く同じことが言えると思います。

1人で3時間シミュレーションしても出なかった斬新な何かが、誰かと演奏することによってポンと生み出されるかもしれません。あるいは1人での練習では絶対に得られなかったであろう世界を、もしかしたら他人との演奏で垣間見ることができるかもしれないのです。

もちろん毎回毎回そう上手くはいかないのですが、僕が実際にそんな体験をしたとき、先のことわざを思い出して昔の人ってすげえなと思ったものです。

他人と演奏をするときは、単に練習の成果を発揮するのではなく、それらを踏まえたうえで共演者とどんなディスカッションができるかということに重きを置いて演奏してみてはいかがでしょうか。

一般的にはジャズではインタープレイが大事であるとか、独りよがりな演奏はよくないとか、アンサンブルを意識して云々…などという語り口で語られることの多いトピックですが、共演者から自分の思いもよらないようなアイディアを得ることによってアンサンブル全体を爆発的に発展させるという観点からも、このようなことが重要と言えます。

とは言っても、ここまでの話では内容が抽象的すぎてどうしたら普段の演奏でこれを実践できるのかよく伝わらないかと思います。

そこで、難しいことは考えずにとりあえず、音数を減らしてみましょう。

共演者から何かを得たいのなら、まずは自分が発する情報量をセーブしなくてはなりません。もちろん、慣れてくれば同時進行も充分可能なのですが、そうでない場合は自分が少し音数を減らし、それによってできた余裕で周囲の音を聴く(というか感じとるという言い方が正しいでしょう)ようにしてみましょう。

セッションなどで演奏できる時間は限られています。たくさん練習してきたから、たくさん音を出したいのはやまやまです。いろいろと試したいこともあるでしょう。それに、自分のアドリブの最中に大きくスペースを空けるというのは案外怖いものです。

しかし、それらに打ち勝って自分の外部から上手くアイディアを得ることができれば、1回の惰性で行うセッションをはるかに上回る爆発的な音楽展開を得る可能性を秘めているのです。

思い切って、1回のセッションをそこに焦点を当てて演奏してみてください。これは、実際に演奏した人しか分からない経験を秘めています。

というわけで、アドリブのバリエーションを増やすというお題で偉そうに語ってみましたが、特に後半部分に関しては僕自身いろいろと模索し続けている段階です。

今回ここに書いただけではよくわからないという方は、ぜひ金村盡志トランペット教室へ! というダイレクトマーケティングを挟ませていただき、記事を締めさせていただくとします。

それでは、また次回!



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。