ブルーノートレコードをジャズ初心者のためにさわりだけ

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こんにちは、野澤です。

10月に入れば涼しくなるかと思いましたが、まだまだ暑い月半ばを過ぎ、今度は一気に冷えてきましたね。

さて、今回取り上げるのはミュージシャン、ではなく、ジャズを世に広めたと言っても過言はないレコード会社ブルーノートレコードをピックアップしてみようと思います。

ジャズファンがジャズのレーベルといえば真っ先に思い浮かぶのがこのブルーノートレコード。

アルバムジャケットからカッコいい作品が多く、サウンドもブルーノート独自の鳴りがしていて演奏もジャズファンの心を掴む素晴らしいものばかりです。

名だたるジャズミュージシャンがここでレコーディングし、多くのリスナーがこのサウンドの虜になりました。

そんなブルーノートとはどんなレコード会社なのかオススメのアルバムも交えながらご紹介します。

ブルーノートレコードとは

ブルーノートレコードはジャズの名門レーベルの1つで1939年にできたレコード会社です。

創立者はアルフレッド・ライオンとマックス・マーギュリスの2人。アルフレッドの名前はレコードのクレジットでよく見かけますね。

レコード会社の名前の由来はジャズで使われるブルーノートスケールやブルースからきていると言われています。

ちなみに著名なライヴハウスであるブルーノートは別会社です。

レーベルの立ち上げ当初はブギウギなどをレコーディングしていました。

当時のブルーノートレコードはミュージシャンにお酒や軽食を用意したり、演奏仕事に支障が出ないように遅いライヴが終わってからレコーディングできる環境や時間帯を提供するのがウリだったようで、こういった今でいうホスピタリティは他レーベルではほとんどなく、ミュージシャンの間で話題となりブルーノートの名前は浸透していったそうです。

ブルーノートのサウンドを作った人

ルディ・ヴァン・ゲルダーというブルーノートのレコーディングエンジニアを語らないわけにはいきません。彼がいたからこそブルーノートは評価され、あらゆる名盤が生まれたと言われています。

実は専業のレコーディングエンジニアだった訳ではなく、初めは趣味で両親と一緒に住んでいる自宅のリビングを改装し、地元のミュージシャンを呼んでレコーディングしていました。

本業は大学病院の眼科医で、終業後にレコーディングしていたそうですが、とても凝り性だったらしく自身が納得するまで四六時中録音設備などを調整していたそうです。

そこでたまたまヴァンゲルダーのスタジオを使っていたサックスプレイヤーがアルフレッド・ライオンに紹介し、ブルーノートのレコーディングエンジニアをやる運びとなりました。

ブルーノートに所属後も変わらず本業の眼科医をしながら自宅でレコーディングを続けていきましたが、ようやくエニジニアで食っていけるとなってからは眼科医を辞めてエンジニア1本に絞ってやっていきます。

プロデューサーであるアルフレッドはどういう音にしたいのか明確なビジョンがあったそうで、その出したい理想的なサウンドをヴァン・ゲルダーが独自のこだわりの録音方法や機材を使って再現することができ、2人の力がうまく噛み合ってブルーノートサウンドが生まれたのでした。

今ではヴァン・ゲルダー・スタジオといえばとても有名で、もちろん実家のリビングではなくなっています。

ブルーノートのジャケットの写真

ブルーノートで外せないのがミュージシャンが写っている格好いいジャケですよね。

バーや飲食店、古着店などで同レーベルのアルバムジャケットが飾られていることもよくあります。

この写真を撮影しているのはアルフレッドの友人フランシス・ウルフ。

レコーディング中に邪魔にならないようなタイミングで写真をとっているのでミュージシャンの真剣な表情が自然体でカメラに納められています。

アルバムのデザインをしていたのはリード・マイルス。フォントや色使いが独特で渋いですよね。この2人のコンビネーションであの印象的で格好いいブルーノートらしいジャケットができあがっていました。

あの有名なコルトレーンのアルバム「Blue Train」のジャケットは真剣な表情で右手を顎に当てて左手を頭に置いてシリアスなジャケになっていますが、実はチュッパチャップスのような飴を舐めている写真だそうです。

あんなにシリアスな表情をしながら飴を食べることもなかなかないですが、そんな可愛らしい何気ない瞬間すらジャズに立ち向かう格好いい男の姿に見せてしまう写真家フランシスもブルーノートに多大な影響を与えています。

ミュージシャンに寄り添うレーベル

前回セロニアス・モンクをご紹介しましたね。

あれだけ世にウケにくい音楽が多くの人に認められるようになったのはブルーノートレコードのおかげと言えるでしょう。

ブルーノートは1947年から1952年までモンクのレコーディングに携わり、ドラマーのアート・ブレイキーやマックス・ローチ、ヴィブラフォンのミルト・ジャクソン、サックスのルー・ドナルドソン、トランペットのケニー・ドーハムなど、他にも大勢のミュージシャンが招集され「Genius of Modern Music」というアルバムをつくりました。

参加するミュージシャンは当時でも著名で、費用はかかったと思いますがお金儲けよりもミュージシャンの音楽性や挑戦したいことを優先に運営するのがブルーノートレコードのスタンスです。

今のブルーノートのプロデューサーのインタビューでは「バンドサウンドとしてアルバムを成立させることが最大の目的でもあるが個々のサウンドや生き方も同じくらい需要。同時にブルーノートとしてのサウンドもしっかり考えながらプロデュースしている。」と語っているほどです。

モンクとの契約5年の後に手放すことになりましたがブルーノートからリリースしたこのアルバムはジャズ界にとっては偉大な貢献だったとレコード会社の人も語っています。

このインタビューはドキュメンタリー「Blue Note Record Beyond The Notes」で語らています。

現在(2024年11月現在)Amazon Primeでも視聴できますので、気になる方はどうぞ。

レコードの番数

ブルーノートにはリリースした作品に何番目に出したのか番号がふられています。

それがレコードの品質がグレードアップしたタイミング、ジャンル、年代の切り替わりでシリーズが変わっています。大まかには

  • 7000番シリーズ (1953-1955年 10インチ)
  • モダンジャズ5000番シリーズ(1952-1955年 10インチ)
  • モダンジャズ1500番シリーズ(1956年−1958年 12インチ)
  • モダンジャズ4000番シリーズ(1959年-1962年)

7000番シリーズはブギウギやブルース、トラディショナルなジャズを中心としたシリーズです。

5000番シリーズはスイングジャズ、モダンジャズを中心としたシリーズ。ただ10インチのLPなので1曲が短くアルバム全体も30分ほどしか収録できません。

その後に現れた1500番シリーズは12インチのLP盤になりもう少し長く録れるようになりました。

おかげでジャズの醍醐味であるアドリブが長く演奏にできるようになったのでミュージシャンもやりたいことを自由にできる環境になり、ストーリー性やドラマティックな曲が表現できるようになりました。

4000番シリーズはビバップよりハードバップな作品が中心になります。

5000番台のシリーズは短くて聴きやすいですが音質や中身でいうと物足りなさを感じてしまうかもしれません(個人差によります)。

より自由度が高まり表現する幅が増えた1500番台からは満足する内容でアルバムの長さも丁度よく聴きやすいです。なので今回は1500番台から個人的にオススメするアルバムを4つピックアップしてみようと思います。

Miles Davis「Miles Davis vol.1」

ジャズの帝王と呼ばれたトランペッターマイルス・ディビスがブルーノートレーベル1500番台の最初の1枚として出したアルバムです。

メンバーはジェイ・ジェイ・ジョンソン(Trombone)、ジミー・ヒース(T.Sax)、ギル・コギネス(Piano)、パーシー・ヒース(Bass)、アート・ブレイキー(Drums)、ジャッキー・マクリーン(A.Sax)、ケニー・クラーク(Drums)という当時の勢いあるメンバーを揃えてのレコーディングとなりました。

中身はマイルスも教えを請うたチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーのようなビバップが基軸ですが、マイルス自身がもう少し後に発表するクールジャズに近づいていて曲が盛り上がっていてもどこか落ち着いた印象を感じます。

ホーンのアレンジもオシャレでまとまりもありながらアドリブソロはストーリー性が見えてくるよう。

録音環境の変化により長く演奏できるようになったとはいえアレンジがされているものはピアノソロを短くして曲の尺を調整する工夫が見られますね。

こうすることで逆に展開の仕方がスピーディーでこれはこれで良く感じます。

Paul Chambers「Whims Of Chambers」

マイルスバンドで頭角を現したベーシスト、ポール・チェンバースのアルバム。

メンバーはドナルド・バード、ジョン・コルトレーン、ケニー・バレル、ホレス・シルヴァー、フィリー・ジョー・ジョンズという豪華メンバーでポール・チェンバースのオリジナル+ドナルド・バードとコルトレーンの曲を収録しています。

アルバム全体の印象としてホーンの伸びやかできらびやかな部分に耳がいきますがチェンバースのベースラインが少し強調されていて存在感を示してきます。

しかし低音感がずっしり効いてくるような嫌味な感じでは全くなく、コントラバス本来の綺麗な響きの部分や伸びやかな音が強調されていて録り音のバランスがとてもいい塩梅です。

コルトレーンの采配もとてもよくハードバップの中でもとても聴きやすいアルバムに仕上がっています。

Sonny Clark 「Sonny’s Crib」

1950年代後半のブルーノートサウンドといえばこのアルバム。

メンバーはソニー・クラーク(Piano)、ドナルド・バード(Trumpet)、ジョン・コルトレーン(Tenor Sax)、カーティス・フラー(Trombone)、ポール・チェンバース(Bass)、アート・テイラー(Drums)

当時のレコードでいうとA面にスタンダードナンバー、B面にソニーのオリジナルというふうに分けてアルバムにストーリー性をつけてプロデュースしています。

ソニー・クラークはトリオとしての活動が有名ですが、こういう少し大きい編成で一歩引いたところからバンドをリードするのも秀逸です。

そういった意味では「Cool Struttin」というアルバムもいいですがこっちのアルバムではアグレッシブな曲から、だんだんとクールダウンしてアルバムに引き込んでいくストーリー作りが個人的には好きです。

Art Blakey 「A Night At Birdland」

セロニアス・モンクと同じようにアート・ブレイキーを最初に世に送り出したのもブルーノートレコードです。

ブレイキーの最初のアルバムは「New Sounds」というアルバムですがそれは5000番台のアルバム。

しかもアートブレイキーのバンドだけではなく他のバンドの演奏も混ざったアルバムになってコンパクトな演奏になっています。

A Night At Birdlandは1500番台。しかもブレイキーの完全リーダーアルバムです。

LPの進化で長く収録できるようになった技術を持って、スタジオで演奏されたものではなくジャズクラブでのライヴレコーディングに挑みます。

ジャズというフォーマットにおいてライヴレコーディングはとても有効でした。プレイヤーも好きなだけ、自由に演奏しているのがわかります。

アルバムの冒頭にはバンドを紹介するMCのピーウィー(バードランドの著名な司会者)の音声が収録されていてブルーノートレコードのレコーディングだという紹介があります。

バンドメンバーを呼び込む彼のMCもかなりアツいので冒頭から聴いてもらうとライヴ感がさらに深く味わえますね。

以上4枚がオススメのアルバムです。

紹介したどのアルバムもアルフレッド・ライオンがプロデュースし、ルディ・ヴァン・ゲルダーがレコーディング監修しました。

ジャケである写真はフランシス・ウルフが撮り、デザインをリード・マイルスが担当。ブルーノートのパッケージとして完璧な仕上がりです。

レーベルを立ち上げた本人がエンジニアやミュージシャンと密にコミュニケーションを取れたからこそ生まれた名盤がたくさんありますので、これ以外の他のアルバムもチェックしてブルーノートのサウンドに浸ってみてはいかがでしょうか。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。