「Ella and Louis」といってもこの2人だけに注目しかしないなんてもったいない

Ella and Louis

最近トランペットのレッスン中にスウィングについて尋ねられたため、この作品を用いて解説するということがありました。

MOJICULで以前も少し取り上げたことのある作品ですが、今回はしっかりとクローズアップしてみようと思います。

Ella Fitzgerald, Louis Armstrong 「Ella and Louis」(1956)

パーソネル

  • エラ・フィッツジェラルド(vo)
  • ルイ・アームストロング(vo,tp)
  • オスカー・ピーターソン(p)
  • ハーブ・エリス(gt)
  • レイ・ブラウン(b)
  • バディ・リッチ(ds)

収録曲

  1. Can’t We Be Friends?
  2. Isn’t This a Lovely Day?
  3. Moonlight In Vermont
  4. They Can’t Take Away From Me
  5. Under a Blanket of Blue
  6. Tenderly
  7. A Foggy Day
  8. Stars Fell On Alabama
  9. Cheek to Cheek
  10. The Nearness of You
  11. April In Paris

 

ジャズをかじったことのある方なら誰でも知っているであろうスーパーレジェンド、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングが(今風に言うならば)コラボし、スタンダード曲を気持ちよく歌い上げていく作品です。

リズムセクションもご覧の通り、おそらくこの当時考えられる最強に近いメンバーで構成されています。

しかしフロントの2人だけに注目するのは浅い

なんだか煽るかのようなサブタイトルですが(笑)。とはいえ事実なのですから仕方がない。

作品タイトルとなった2人は、ボーカルだから単純に耳で捉えやすいですし、知名度があまりにも高いために、多くの方がこの2人だけを軸として聴いてしまうのはまあ致し方ないところではあります。

当然レコード会社の狙いもそこにあったことでしょう。

しかしこの作品は単に芸術として優れているばかりか、ちゃんと聴けばジャズ、なかでも特にスウィングを体感するためのものとして本当にいい教材となるのです。

まずリズムセクション全体を聴く

手始めにボーカルやソリストの後ろでどんなことが行われているかよく聴いてみましょう。

リズムセクション全体をぼんやりと聴くような感じです。

この作品はミディアムスウィングからバラードの曲で構成されていますが、いずれの曲でもボーカルやソリストをふんわり心地よく包み込みつつも、スウィングしていく局面ではぐいぐいとトルクフルにバンド全体を推進していっているのにお気づきいただけるでしょうか?

以前他の記事で取り上げたときや個人的にこの作品をおすすめするときに、高級車(もしくはアメ車)のようなグルーヴ感とお伝えすることが多いのですが、その理由はこんなところにあります。

いずれにせよ、この作品はスウィングという独特なリズムが生むグルーヴ感の魅力を多くの人にわかりやすく示してくれるものであると僕は思います。
※ただしスウィングそのものには時代や地域差、もっと言えば個人差が存在し、この作品でみられるスウィングこそが正しいのである、という意味では全くありません。

各パートをじっくり聴いてみる

リズムセクション全体を聴いてみた後はそれぞれのパートによく注意して聴いてみましょう。

ボーカルとトランペットは嫌でも耳に入ってきますからここでは割愛します。

逆にこれから書くようなことがピンとこない方はまず2人のボーカル(とトランペット)を掛け合いからよく聴いてみると良いと思います。

さて、まずはボーカルがテーマを歌い上げている後ろでのオブリガード。

作品を通じてピアノが演奏している割合が多いように思えますが、バンド全体の調和を崩さずに、しかし手数が多くブルージーなオスカー・ピーターソンらしさを前面に押し出した絶妙なオブリガードが作品を通じて演奏されています。

またよく注意して聴くとたまにギターがさりげなくオブリガードを引き受けていたりします。

2人とも決して俺が!俺が!という感じででしゃばるわけでなく、その場で進行している音楽の流れをくみ取ってさりげなく、しかし心地よくボーカルやトランペットをサポートしています。

ジャムセッションなんかでピアノとギターが一緒に演奏することになったとき、このやり取りがうまくいかないことって本当に多いですよね。

一方に丸投げしてしまったり、逆にお互いオブリを入れまくってオブリ合戦のようになってしまったり……。

ベースやドラムも力強いスウィングでバンド全体を支えつつ、必要最低限のフィルインを丁寧にいれていきます。

この作品では決して目立たない方ではあるのですが、締めるところをきっちり締めていく、いわば職人芸とでも呼ぶことのできる非常に渋い仕事をしています。

というわけで今回は「Ella and Louis」をご紹介しました。

実はこの2人の共作は他にも「Ella and Louis Again」「Porgy and Bess」などが存在し、それら全てをまとめたものが「Cheek To Cheek: The Complete Duet Recordings」として発売されています。

しかし他のはなんだかグルーヴがサラッとしちゃってほんの少しだけ硬い感じがするというかなんというか……。

個人的にはこの「Ella and Louis」が最高にスウィングしていて聴いていて文句なしの心地よさであると思います。

「Porgy and Bess」はそもそもオーケストラを従えての演奏ですし、「Ella and Louis Again」の方は似たようなメンバーとはいえドラムがバディ・リッチからルーイ・ベルソンに変更されており、もしかしたらその辺も関係しているのかもしれません。

いずれにせよ、ジャズの演奏をなんとなく聞き流して「これいいね!」ではとてももったいないことです。

ちょっと面倒でオタクっぽい聴き方かもしれませんが、こんな聴き方をしてみることによってジャズの本当の楽しさを知るきっかけを掴むことができるかもしれませんよ。



ABOUTこの記事をかいた人

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。