ジャズの電子化から現代までの流れを象徴するアルバムをご紹介します

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前回は1960年代半ばまでのジャズのスタイルを変えたアルバムを紹介してきました。(前回の記事はこちらから)

今回は1970年代から現在のものまでご紹介していきます。

それではさっそく見ていきましょう!

楽器が電子化していく

70年代は、テクノロジーの進化でエレクトリックピアノ(ローズピアノなど。エレピと略して呼ばれることも多い)と呼ばれる電気的な出力装置で音を出すピアノを使用するプレイヤーも出てくる時代になりました。

これにより、以前主流であったアコースティックピアノとはちがい、アンプやスピーカーから大きい音が簡単に発せられるようになり、バンドサウンドがより厚くなります。

ジャズではアコースティックな楽器の使用が多かったため、音量の問題がつきものでした。

とくにドラムはジャズでよく使用される楽器の中でも比較的大きな音を発することが可能でしたが、他楽器との音量バランスをとるためにある程度音量を絞ったプレイをしていたのです。

しかし、電子的に音量を増幅できる楽器の使用が一般的になることで、ドラマーも手加減なく音量を出せるようになります。

もちろん、それだけではなくエレピはアコースティックなピアノとは違う音色でバンドの雰囲気を作るので、ジャズのサウンドを大きく変える存在にもなります。

マイルス・デイビス「Bitches Brew」(1970年)

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Columbia

このアルバムの1つ前「In A Silent Way」から電気化していますが、もっとマイルスバンドのサウンドイメージが形となっているのがこのアルバムだと思います。

もちろん電気化だけはなく、アルバムのコンセプトとしても新しいものがありました。

曲の雰囲気を作るシンプルなリズムパターンとモチーフをもとに、徐々に曲を展開させるような流れになっています。

音楽が急な展開をせずに大きな流れで変化していくので1曲の演奏時間が20分や30分近くあります。

しっかり聴くなら根気がいりますが、曲にムードがあるのでBGM感覚で聴いてもじゅうぶん楽しめるアルバムです。

ハービー・ハンコック「Head Hunters」(1973年)

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ソニーミュージックエンタテインメント

ベースもウッドベースではなくエレキベースに代わり、ビートもスイングから8ビートのものがメインになりました。

ハービー自身もエレクトロなサウンドにこだわってローズピアノを積極的に使用しています。

このアルバムは発売当時大ヒット。アルバム中の”Watermelon Man”と”Chameleon”は現在も多くのミュージシャンがカバーしていることでも有名ですね。

ジャズは、現在では当たり前のようにR&Bやヒップホップとつながりがありますが、それを上手く橋渡ししてくれたのがこのアルバムです。

チック・コリア「Light As A Feather」(1973年)

このバンドでの初アルバムは1つ前に発表した『Return to Forever』ですが、フュージョンジャズの先駆けになったのはこちらのアルバムです。

現代のようなフュージョンのフィーリングではありません。ただ、このバンドはここからもどんどんフュージョンの幅を広げていくのでこのReturn to Foreverというバンドを要チェックです。

どの曲も少しブラジリアンの色が出ているのはドラマーのアイアート・モレイラのおかげですね。

スタンリー・クラークのベースラインも、ウッドベースなのにエレキベースのようなフレーズが飛び出ているので当時はかなり新鮮なアプローチだったと言えます。

チックコリアの有名曲”Spain”もこのアルバムから誕生しました。

ジャコ・パストリアス「Jaco Pastorius」(1976年)

エレキベースという楽器を、ジャズの世界で格段に昇華させたベーシストといえばジャコ・パストリアス。

そして2枚目に出したリーダーアルバムがジャズに大きな影響を与えました。

スタジオミュージシャンのように弦楽器をたくさん入れたり、ソウル系のボーカルを入れたり、それまでにないアプローチはジャズという概念をまた大きく変化させました。

プレイスタイルもウッドベースではできないようなフレーズが多様され、エレキベースに特化した曲のベースラインも感じられます。

アルバム自体も流れが素晴らしく、1曲目はパーカッションとベースだけでビバップ時代の曲”Donna Lee”をしっかり弾いて、ジャズに精通していることを表現し、曲が終わると同時に”Come On, Come Over”へ流れる構成が最高です。

今までは1曲が終わると一呼吸おいて次の曲にいきますが、間を作らずにすぐ次の曲につなげるのはスタジオレコーディングとしては新しかったんじゃないかと思います。

1曲ごとというよりアルバム通して聴いていられますよね。

このとき参加していたミュージシャンや、ジャコと関わったミュージシャンであるマイケル・ブレッカー、ランディー・ブレッカー、パット・メセニー、デイビッド・サンボーンなどのミュージシャンが次の世代としてエレキサウンドを駆使してR&B、フュージョン、コンテンポラリージャズへとブラシュアップさせていきます。

リバイバルと複雑化

ジャズが8ビートやフュージョンとジャンルが多様化していく一方で、やっぱりスイングジャズでアコースティックな感じが好きというプレイヤーもいます。

ですが、音楽的に、もうビバップもコルトレーンチェンジもモダンジャズもやり切って一回りしているので、普通に演奏するのではなく変拍子や複雑なハーモニーを使ったり、より難易度が高い演奏をおこなうようになりました。

ウイントン・マルサリス「Wynton Marsalis」(1983年)

ウイントンの初リーダーアルバムです。多くのミュージシャンが電気化するのに逆流するような形でジャズシーンにぶつけてきました。

やっていることとしては60年代のマイルスバンドとほぼ変わらないような気がします。

しかし、ジャズファンが求めているものがこのアルバムにはあります。

ハービー・ハンコックがプロデュースをしていて、ほぼオリジナル曲ですがスイングのものが多いです。

他にもハービー、ロン・カーター、トニー・ウイリアムスが作曲しているものもあって、バックはしっかりベテランで固められています。

ウイントンのバンドメンバーであるケニー・カークランド、ジェフ・ワッツも参加しており、このアルバムはこれ以降大事な存在になっていきます。

ウイントン・マルサリス「Black Codes」(1985年)

同じくウイントンのアルバムです。

このアルバムではゲストミュージシャンなしでウイントンのバンドメンバーだけでレコーディングしています。

曲のアレンジが初リーダーアルバムよりも複雑化しています。

ピアノやベースラインが決まっているユニゾンのものや、3曲目の”Delfeayo’s Dilemma”の途中でリズムが変化したかのように聴こえさせるポリリズムなど、頭を使うプレイが入ってきました。

この後ポリリズムや変拍子は大ブレイクとなり、今やジャズミュージシャンは変拍子ができないといけなくなりました。

コンテンポラリージャズ

コンテンポラリーというと現代アートで前衛的じゃないの? と感じてしまう方もいるかもしれませんがそうではありません。

むしろシステマティックで理論的に頭を使う方向になってきました。

曲の流れやハーモニー、リズムなどをよく考えて構成していき、ソロを取るときもエモーショナルな部分とロジックをうまくつないでいくミュージシャンが増えていきます。ただうちなるエネルギーを秘めているので根暗な音楽に聴こえます。

マーク・ターナー「Yam Yam」(1995年)

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Criss Cross Jazz

コンテンポラリージャズ代表と言えるアルバムです。

一緒に参加しているカート/ローゼウインケルブラッド/メルドーもここからコンテンポラリージャズを演奏する代表的なプレイヤーになっています。

4曲目の”Moment’s Notice”は5拍子で演奏されています…。コードチェンジも難しいのにリズムも難しくするというこの上ないハードモードですが、これができれば上手くなれると思って修行のように演奏したがるミュージシャンが多くなりました。

カート・ローゼンウインケル「The Next Step」(2001年)

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Polygram

今やジャズギター界のヒーローとして知られるカート/ローゼンウィンケルの初期のアルバムです。

曲もそうですがカートの音色やフレーズはどこをとっても新鮮でそれまでにないものでした。

ジャズだけではなくロックの影響もあったりしますが、アコースティックの雰囲気を崩さずに仕上げています。

電気化した時代もギタリストの需要は高まりましたが、ここからもジャズギターが活躍する幅がもっと増えました。

ヒップホップとの関係が強くなる

もともとヒップホップは70年代後半か80年代くらいからアメリカの時代を象徴する音楽となっていました。

そのヒップホップとの関係がブラックミュージックとして大きくジャズと関わるようになっていきます。

ロバート・グラスパー「Black Radio」(2012年)

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ユニバーサル ミュージック (e)

このムーブメントは比較的最近のことなので、リアルタイムで感じることができました。

このアルバムを聴いた瞬間に「ジャズ変わるな」と確信しました。

ジャズがスイングを必要としなくなる時代です。スイングしなければジャズじゃないと言われますが、全くスイングの曲は出てきません。むしろポップに近い感じです。

これに関してはブラックミュージックというルーツ、ジャズのテイストや手法は変えずに、ジャズというものを理解して大きく現代のポピュラーなものにつなげてきました。

そのために、Black Radioというアルバムは誰が聴いても心地よくカッコよく、ミュージシャン側からしても申し分ありません。

新しい形でジャズを演奏する幕開けとなりました。

グローカルな時代

先人たちのおかげで今は世界中の人たちがジャズを演奏したり、ネットが発達して情報をどこからでも仕入れられるので、多種多様な演奏スタイルが当たり前となりました。

ですが、昔は選択肢が少なかったのです。

これまでジャズが進化するのにニューオリンズジャズ、ビッグバンド、ビバップ、ハードバップ、モダンジャズ、モードジャズ、フリージャズと新しいスタイルを切り開いていき、それ以降は他のジャンルと融合することで進化してきました。

ジャズ+ロック、ジャズ+ポップス、ジャズ+ヒップホップ、ジャズ+クラシックだけじゃなく、最近はジャズ+インド音楽、ジャズ+イスラエル音楽などローカルな音楽さえも今を築くジャズとなっています。

・ジャズ+インド音楽

・ジャズ+イスラエル音楽

・ジャズ+カントリー

 

そもそもはジャズの始まりはアフリカ音楽と西洋の音楽が混ざってできたので、今もジャズらしい進化を遂げているのかもしれませんね。

過去から現在まで、全てがつながっています。

現代だからこそ楽しめる、ジャズの歴史を変えてきたさまざまなアルバムを聴いて音楽の進化を体感していきましょう。

 



ABOUTこの記事をかいた人

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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。