クリフォードブラウンは、完全無欠のジャズトランペッター

クリフォード・ブラウン

年をまたいでAOI JAZZというサイトがMOJICULに統合され心機一転かと思いきや、なんとなくグダグダと一ヶ月以上お休みしてしまいました。

はあ…これからまた毎週締め切りに追われる日々が続くのか…。

 

さて、以前2回に渡って最も偉大なジャズトランペッターとしてマイルス・デイビスについて書きましたが、今後はそれ以外のトランペッターについても書いてみたいと思います。

今回ご紹介するのはジャズトランペットを語る上では絶対に避けることのできない、クリフォード・ブラウンについてです。

クリフォード・ブラウンについて知るために役立つ資料

まずクリフォードブラウンについて知るためにはこちらの本がおすすめです。

ニックカタラーノ(2003)『クリフォード・ブラウン 天才トランペッターの生涯』川嶋文丸訳,音楽之友社

 

副題通りクリフォード・ブラウンの生い立ちからその死について書かれているだけでなく、彼を取り巻く当時のジャズシーンや作品についても詳しく書かれています。

生前のクリフォード・ブラウン本人へのインタビュー記事をはじめ、著者による家族や関係者への綿密な取材の上に構成されており、彼を知る上では現在のところ最も詳しい資料と言うことができるでしょう。

残念ながら絶版となっており、今から入手するのは金額的にも容易ではありませんが、少なくともジャズトランペットを志す人は読んでおいて損はない本だと思います。

余談ですが、ジャズミュージシャンについて書かれた本って他のジャンルの書籍に比べて需要が少ないせいか、すぐに絶版になってしまう傾向があります。

結構勉強になることが書いてあることが多いと思うので、こういった本は気になったらとりあえず手に入れておくことをおすすめします。

手に入れた当初はよく分からなくとも、10年くらい経って読み返してみると良い本だったということに気づかされたりするかもしれませんよ?

クリフォード・ブラウンとは

というわけでクリフォード・ブラウンについて詳しく知りたい方は上に挙げた本を読んでいただくとして、そもそも彼をご存じない方のために簡単な解説をします。

クリフォード・ブラウン(長いので以下ブラウニーとします)は1950年代に活躍したトランペットプレイヤーで、最初期のアートブレイキーのジャズメッセンジャーズやドラマーのマックス・ローチとの双頭クインテット「クリフォードブラウン-マックスローチクインテット」などでの活動がよく知られています。

当時のジャズトランペッターの中では抜きんでたテクニックとリリカルなフレージング、そして25歳での突然の事故死とも相まってまさに伝説的なトランペッターとされています。

また個人的なことを言えば、音楽家として最も好きなのはマイルス・デイビスですが、トランペッターとして最も憧れるのはブラウニー。

一言で言えば「完全無欠」。

僕にとってブラウニーはそんなトランペッターです。

トランペッター目線からのオススメ作品

今思えば僕がジャズに触れたのは高校時代のこと。

当時ピアノが上手い金物屋の息子のかわっちゃんが「金村、トランペット吹いてるならこれ聴いてみろよ」と貸してくれたのがブラウニーの参加している”Jams 2″という作品だった気がします。

それ以来ブラウニーの魅力にハマってさまざまな作品を聴いてきましたが、彼の作品はどれもオススメと言えます。

確かに一部録音状態が劣悪で聴き苦しいものが存在するのは事実です。

しかし、それでも演奏自体は非常に素晴らしいものばかりです。

そのためにブラウニーの作品の中からいくつかピックアップするというのはとても難しいことなのですが、ここでは個人的に特にオススメできる作品を3つだけ挙げてみたいと思います。

Clifford Brown With Strings

まずジャズトランペッターはこのアルバムを聴かなければ全くもってお話になりません。

タイトルの通り、全編ストリングス(=弦楽器)をバックとしたバラードで構成されているのですが、全ての曲が完璧としか言いようのない美しい演奏です。

アドリブソロの構成だとかそんな細かいことは置いといて、とにかくブラウニーの「歌」に耳を傾けてみてください。

トランペットにトランペットらしく、トランペット本来の仕事をさせるとこうなるという好例でしょう。

僕は今でもこの作品に収録されている曲目を演奏するときは自然とこのブラウニーの演奏が頭をよぎってしまいます。

 

音楽の演奏にはそのプレイヤーの人間としての成熟度が表れるなんて言われたりもしますが、この作品の収録当時ブラウニーは24歳。

とても24歳の若者が演奏しているとは思えない円熟度合いです。

今ここを読んでいるあなたは24歳の頃、何をしていましたか(笑)?

Study In Brown

1955年、マックス・ローチとの双頭クインテット時代の作品です。

まさにハードバップ全盛といった感じの凝ったアレンジで、特にTake The ‘A’ Trainなんかは秀逸です。

また1曲目のBPM300を軽く超えるテンポで演奏されるCherokeeは圧巻です。

このテンポをさも涼しげに吹ききってしまうだけでなく、歌心があり……というか歌心しかなく、まさに完璧としか言いようのない見事な演奏です。

ところで”in a brown study”で「黙考している」などという意味があるそうですが、この作品のタイトルはそれをもじったものでしょうか。

英語詳しい人教えてください(笑)。

あっ、もちろんこの続編であるMore Study In Brownも忘れずに聴きましょう!

The Beginning And The End

タイトル通り、ブラウニーの初期の演奏と最期(彼が事故死する前日の演奏)が収録された作品ということになっていますが、事実としては誤りのようです。

事の詳細は冒頭に挙げた本を読んでいただきたいのですが、この作品に最期の演奏として収録されている3曲(Walkin’, A Night In Tunisia, Donna Lee)は事故の前日(1956年6月25日)に録音されたものではなく、その約1年前の1955年5月31日であると著者は述べています。

これが本当だとすると、僕が知る限りで現存するブラウニーの演奏で最後のものはSonny Rollins Plus 4のもの(1956年3月22日)だということになりますが。

まあ細かいことはさておき、いずれにしろ素晴らしい演奏であることには変わりはありません。

特にこの作品に初期の演奏(1952年3月21日、当時21歳)として収録されている2曲(I Come From Jamaica, Ida Red)なんかはジャズというより思いっきり当時のポピュラー音楽という感じ。

しかしトランペットソロになると良い意味で場違いなサウンドを聴くことができます(笑)。

 

とりあえず乱暴に3作品だけ挙げてみましたが、正直言って物足りなさすぎます。

特にブラウニーを愛する方々からはA Night At Birdland vol.1,2,3が入ってないとかAt Basin Streetはどこへ行ったなどとお叱りの声が聞こえる気がしますが、この程度でお許しを。

ブラウニーを聴くときのちょっとしたコツ

最期に余談ですが、ブラウニーを聴くときのコツのようなものをご紹介したいと思います。

それはちょっと大きめの音で聴くこと。

もちろんアナログ盤で高いスピーカーで聴くことができれば言うことなしですが、僕を含め、誰しもがそんなことをできるとは限りません。

なのでせめて少し大きめの音量で聴いてみましょう。

あくまで個人的な感想なのですが、トランペットの音源は小さめの音量で聴くと高い周波数ばかりが強調されてしまい、本来よりも音色が痩せ細って聞こえるような気がします。

特にブラウニーの音色はきりっとエッジが立っていながらも温かみのある素晴らしいものなのですが、これを小さめの音量で聴くとそのエッジばかりが目立ってしまうような気がするのです。

「ジャズトランペットってクラシックと比べると音色がな~」という方、ご近所迷惑にならない程度に音量を上げてもう一度聴きなおしてみてください。

かすかなゴーストノートやトランペットのベルの縁(?)が気持ちよくビリビリっと鳴る音が心地よく聴こえてくる…はずです!



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。