プロトランペットプレーヤーの冬場の唇ケア

気候の変化が楽器に与える影響

そろそろ梅雨が明け、暑くなってくるころですが、木でできている弦楽器などは湿度の変化によって楽器のコンディションも変化していきます。

本当かどうかは知りませんが、欧米で試奏していいと思った弦楽器が日本へ持って帰ってみると鳴りがイマイチに、というようなことさえあると聞いたことがあります。

金属でできているトランペットでは楽器そのものにそこまでの影響はありませんが、季節の移り変わりはトランペットを鳴らすために重要な唇に大きな影響を与えてきます。

なかでも特に湿度が唇に与える影響は甚大です。

というわけで、今回はこれから夏真っ盛りへ向かう季節感とは真逆の記事になりますが、冬場を中心とした唇のケアに関して書いてみたいと思います。

役に立つとしても半年後でしょうが参考にしていただければと思います(笑)。

冬の低湿度が唇へ与える影響

トランペットを吹かなくとも冬場はリップクリームを使う方が多いと思いますが、トランペットを演奏する者としては唇がガサガサになってしまっては致命的です。

ちなみに金管楽器奏者の唇のケア用として有名な、チョップセイバーという管楽器奏者のためのリップクリームがあります。

最近ではリップパックと呼ばれる唇用のパックすら存在するようですが、いずれの商品も僕の回りでは使ってみて良かったという話や、そもそも使ったことがあるという話を聞いたことがありません。

僕自身は乾燥する時期にいわゆるリップクリームではなくワセリンを使っており、とてもオススメです。 ハンドクリームとしても使えますし、花粉症の方は鼻の穴に塗ると少しだけ症状を軽減できます(笑)。

メントールの含まれているリップクリームは唇を冷やすような感じがしてあまり好きではありません。

ワセリンの種類

石油を精製して作るワセリンにはその純度に応じていくつか種類があるというのはご存知でしょうか?

僕は特に敏感肌ではないので普通のワセリン(ヴァセリンという名前で市販されてるアレです)を使っていますが、一時期白色ワセリンを使っていたことがあります。

以前ロードバイクで転倒してアスファルトへ顔面着地したことがあるのですが、そのときに病院でもらった白色ワセリンは通常のワセリンと比べて柔らかく、唇に塗ったときにより馴染みやすい感覚でした。

怪我が治った後も大量に余ったのでずっとそれを使っていましたが大変使いやすかったのを覚えています。

ですから唇の荒れのひどい場合や敏感肌の方は純度の高いものを使うと良いでしょう。

ワセリンの種類は僕の知る限りでは純度の低い順から、

黄色ワセリン(いわゆる普通のワセリン)→白色ワセリン→プロペト→サンホワイト

となっています。

トランペットを吹きすぎて敏感な状態になった唇を冬の乾燥した外気に当てて調子を崩したくないという場合はその人の体質に合うワセリンを用いてケアすると良いでしょう。

プロペトやサンホワイトは使ったことがありませんが、白色ワセリンであの効果だったんだからそれより高純度だとどうなっちゃうのという気がします。

それでも物足りないという方は

モアリップという第3類医薬品に指定されているリップクリームがあります。

何年も前にひどく唇が荒れたときに使ってみたことがありますが、正直普通のリップクリームとの違いは感じられませんでした。

唇の粘膜を補修するための成分が含まれているので唇には良いはずなのですが…。

個人的に酷く荒れた唇に最も効果があったのはオリーブオイルです。

ガサガサになって荒れ果てた唇にわずかに塗るだけですっと染み込み、潤いが戻ってきます。

オリーブオイルのデメリットはその効果が持続する時間が短いという点でしょうか。

持続性のみで言うならばクリーム状であるワセリンにはかないません。 そもそもオリーブオイルを持ち歩いてこまめに塗るというのもちょっと現実的ではありませんし。

今「唇 オリーブオイル」で検索したらオリーブオイルで艶々リップだとかモテリップなどという記事がヒットしました。

もしかしたらオリーブオイルを塗っていた時の僕の唇は色っぽいモテリップだったのでしょうか。 我ながら寒気のする絵面です……(笑)。

そもそもの話

普段から唇に負担を掛けない効率的な演奏を心掛けるべきです。

唇というのは非常にデリケートで弱い器官です。

それを金属のマウスピースと歯の間に挟んで振動させようというのですから本来無理が生じないわけがありません。

それでも多少の腫れや荒れであれば少しセーブしたり、ウォームアップを入念にすれば十分演奏可能ですし、やはり唇のケアそのものよりも奏法が一番重要であると思います。

唇が腫れたとか痛くなりやすいというと一般的にはマウスピースの押し付けすぎは良くないとかアンブシュアを見直そうなどと言われますが、それらはあくまで対症療法です。

それらが起こる原因を探り直接改善するアドバイスが行われなければ再び似たような症状に見舞われることでしょう。

それに関連した記事をなんか前にどこかで書いたよなーと思いつつ、本来ジャズをテーマにしたメディアであるAOI JAZZではこの辺りでお茶を濁しておきましょう(笑)。

トランペットを吹いていて唇の調子が悪い?

気温による影響

冬場は当然ながら乾燥だけでなく気温が下がります。

トランペットに限らず多くの管楽器は管が温かい状態だと音程は高めに、冷たいと低めになります。

音程の上がってしまう夏はそこまで苦労しないのですが、冬に寒いところで練習しているとどうしても音程が下がってきてしまい苦労します。

音程が常に下がるような寒い場所での練習は音程を補正しようとして変な癖がつくことも考えられますし、そもそも体が凍えた状態ではリラックスして練習することは困難です。

逆に暑いところで練習するのは熱中症の原因となりかねないというのは言わずもがなですし、結局のところ暑すぎても寒すぎても効率の良い練習はできません。

意地を張らずに快適な環境で練習するということも質の高い練習のためには必要なことです。

番外編:金属アレルギー

ごく稀にですが金属アレルギーで唇が荒れてしまうという方もいます。

トランペットのマウスピースは基本的に銀メッキなのですが、そういった素材でアレルギー症状が出てしまう場合はどうすればいいのでしょうか。

ゴールドプレート

まずはゴールドプレート=金メッキが選択肢に入ります。

ゴールドプレートであればもとから加工してあるものも少なくありませんし、通常の銀メッキのマウスピースも後から金メッキ加工することも可能です。

金メッキは比較的金属アレルギーを起こしにくいとされているのですが、敏感な方はそれでもアレルギー症状が出てしまうようです。

プラスチック

絶対に金属アレルギー症状を起こさない素材であればプラスチック製マウスピースが存在します。

プラスチック製マウスピースはヤマハやワーバートンなどいくつかのメーカーから販売されていますが、中でも異色なのはスイスのブランドです。

……ややこしいのですが「ブランド」という名前のブランドです(笑)。

ターボボアという独特の内部構造を持っているだけでなく、プラスチック製マウスピースの弱点である音の軽さをカバーするためのブースターも販売しています。

実際に使ったことがないのでその効果のほどは未知数ですが、今までのプラスチック製マウスピースにがっかりしている人は試してみると良いかもしれません。

チタン

プラスチックは嫌だ!どうしても金属が良い! という場合はベストブラスからピュアチタンというマウスピースが出ていますので利用されると良いでしょう。

5Cという1サイズのみしか販売されていないのが残念なところですが、製造コストを考えるとサイズ展開は困難なのかもしれません。

それでもこれまでプラスチック製マウスピースしか吹くことのできなかった人々を救うベストブラスのチャレンジは賞賛されるべきだと思います。



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。