柔軟な発想を持ったドラマー、ケンドリックスコットの魅力

ケンドリックスコット

今回は久しぶりに聴いてほしいドラマーをご紹介していきたいと思います。

今までは昔のドラマーたちに焦点をあててきましたが、今回は現在活躍しているドラマーのKendrick Scot(ケンドリック・スコット)にスポットをあててお話ししたいと思います。

私は度々ここでオススメしていますが昔から本当にプレイが好きで尊敬するプレイヤーです。プレイスタイル、音色、安心できるダイナミックな演奏が特徴的ですが今回はもう少し彼の魅力を深掘りしていこうと思います。

ケンドリック・スコットの魅力

先ほど少しあげたようにケンドリックのプレイで魅力的なのは

  1. 音色
  2. どっしりとしたグルーヴ感
  3. ダイナミクスの幅がある演奏スタイル
  4. モチーフデビロップメントを大切にしたプレイスタイル
  5. 歌心があるソロの取り方

まだまだあると思いますが大きく5つだと思います。

出音のタッチ音はシャープで明るいのにその後に響く音はすごく太く心地い音色です。

音色の影響もあってグルーヴ感はかなりどっしりしています。

スイングも疾走感がありシンバルのビートはオントップに近い感じですが、芯になるグルーヴがしっかりセンターになっているのでどっしりしながらもなめらかにグイグイ前に進んでいくので気持ちいいです。

そしてそのなめらかな所にイレギュラーにダイナミクスをつけてバシッとコンピングをしてくるときもあるので、毎回いい意味で予想を裏切られます。

ソロでもダイナミクスの変化を意識しています。特にバスドラムのダイナミクスが特徴的ですね。

コンピングでもソロでもそうですがその場で起こっていることをキャッチしてダイレクトに音楽の発展に結びつけられるドラマーです。

耳がいいのでいろいろなことが聞こえて、それをすぐに自分の考えでプレイに体現できるのがすさまじいですよね。

どんなフレーズにも歌心があるのでテクニックでゴリ押しするのではなくフレーズや展開のつながりを大事にしています。

この動画では私の伝えたいことが詰まっているのでぜひ見てみてください。

お客さんが物を落としたときに発生した音まで音楽に変えたり、色んな音色を使ってドラムソロを展開していますね。

柔軟な発想でドラムのセッティングを変える

上の動画でもわかると思いますが左足のところにスネアが置いてあります。

こういうセッティングを見たことは他にないので本人に聞いてみたところ「サウンドが面白そうだからだよ。今はまだ試行錯誤中だけどね。」と言っていたので、やりだした当時は深い意味はなかったかもしれません。

ですが今は普通じゃできないようなフレーズや音の感じを表現できるようになっているので、こういう発想は音楽の可能性を広げたりオリジナリティを持たせるために大事だと思います。

他にもバスドラムをツーバスにしてジャズ用と16ビート系用とで踏み分けたり、ハイハットを左右に設置したりするなど独自のセッティングを試みています。

リーダーとしての活動

“ケンドリックスコットオラクル”というバンド名でリーダーバンドの活動をしています。

1st Album「The Source」(2007年)

最初のアルバムは曲が暗めですが、プレイはケンドリックらしさが出ているアルバムです。

2曲目の”Mantra”は今でもライヴでよく演奏する曲できっとケンドリックが気に入っている1曲だと思います。

メンバーもシーマス・ブレイク、マイロン・ウォルデン、アーロン・パークス、ロバート・グラスパー、ウォルター・スミス、マイク・モレノ、リオネル・ルイケ、デリック・ホッジ、ラゲ・ルンドなど多数の豪華プレイヤーでの初アルバムです。

2nd Album 「Reverence」(2009年)

これはオラクルとしのアルバムではない気がしますが、今後のオラクルのレパートリーである”Ginger Breadboy”や”Short Story”が収録されています。

レーベルがクリスクロスでレコーディングの音質がイマイチなのが残念です。。ですがどれも内容がいいので聴いてほしいアルバムであるのは確かです。

ちなみにアルバムでは”Ginger Breadboy”はマイルスデイビスの曲、”Ana Maria”はウエインショーターの曲だったりレジェンドが作曲した曲を演奏しています。

アルバムタイトルであるReverenceとは日本語で”深い敬意”という意味です。文字通りレジェンドたちが残してくれたものに敬意を払っているアルバムで、ケンドリックやバンドメンバーの解釈を通じて名曲たちが現代のサウンドで楽しめるアルバムです。

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Criss Cross

3rd Album「Conviction」(2013年)

このアルバムがオラクルにとって転機になるアルバムだと個人的に思っています。

今までと違い(というと失礼ですが)、曲やバンドの感じが明るくてアルバムとしてすごく聴きやすくなっています。特に”Too Much”はカバー曲ですがバンドサウンドがかなりポップになったなという印象です。

そしてアルバム1枚が1曲に聴こえるかのように1曲1曲が途切れなくつながっていて5曲目の”Liberty Or Death”まで続いていきます。

6曲目の”Cycling Through Reality”からLPのB面みたいにまた曲が続いていくのもストーリー性があって引き込まれるようなアルバム作りになっているのがいいですよね。

どの曲もいい曲なのでかなりオススメです。

4th Album「We are the Drums」(2015年)

最近のオラクルのライヴではオーディエンスにも手拍子や歌うパート作って曲に参加させて1つのステージを作っていました。

ライヴでもMCで話していましたが、楽器だけでなく身体もドラムの一部であるので「私たちはドラムだ」というタイトルにしているそうです。

そしてドラムで表現できることを最大限に引き出していて、十八番ナンバーの”Mantra”のイントロでそれを聴くことができます。

前のアルバムのConvictionと同様な感じもありますが、今回はリズライトが参加することによって雰囲気が少し大人な感じに変わっています。

6曲目の”Never Catch Me”や10曲目の”Syncrony”はテンションが上がる感じがあったり、7曲目の”Touched By Angel”や9曲目の “Lotus”は美しくて包まれる感じがあったりアルバムのバランスがとてもいいです。そしてブルーノートレーベルでの初めてのリーダーアルバムでもあります。

5th Album「A Wall Becomes A Bridge」(2019年)

このアルバムに関してはリスナーに向けてかなりチャレンジしているような気がします。抽象的で曲がつかみづらいんですが、あえてそういう風にしてアルバムの空気感を作っているような感じがします。

曲のテーマ部分がわかりづらかったりする曲もあるので、最初はアルバム全体をぼんやりしながら聴くといいのかもしれません。

しかし聴き込んでいくと面白いアルバムで、全体がわかってから聴き直すとライヴで聴いているかのような臨場感があるのでとても不思議なアルバムです。

気になる方はぜひ一度と言わず何度も聴いてみるのをオススメします。

サイドマンでありながら光るプレイ

リーダーバンドもすごくいいですがサイドマンとしての活躍もとても素晴らしいです。というよりサイドの方がリーダーでプレイしているより好きかもしれません。

たくさんサイドマンとしてレコーディングに参加してますがその中で個人的オススメアルバムをいくつかご紹介します。

Danny Grissett「Promise」

ダニー・グリセットのピアノトリオのアルバムで個人的に一番最初にケンドリックを聴いたアルバムです。

1曲目の”Moment’s Notice”を聴いたときはあまりの凄さに衝撃でした。。

それだけでなくピアノとのとのインタープレイやモチーフの展開の凄さはこの頃から健在です。

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Criss Cross

Terence Blanchard「Magnetic」

テレンスとのバンドには10年近くかなり長く在籍していてました。

このアルバムはバンドがかなり成熟したときのアルバムでもあり、バンドを辞める前の最後のアルバムにもなります。

そもそもこのバンドが仕上がっているのでかなりアルバム自体充実しています。

個人的に好きなのは3曲目の”Don’t Run”です。ゲストにロン・カーターを迎えての演奏ですがケンドリックとのコンビネーションが極上すぎていつ聴いても満たされた感じになります。

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Blue Note

Gretchen Parlato「The Lost And Found」

グレッチェンのこのアルバムも当時かなり流行りましたね。やはりその裏にはケンドリックのドラムサウンドがあってこそだと思います。

安心感のあるグルーヴとキラキラするサウンドが最高ですし、ライヴではさらに盛り上がる見せ場もあったりするのでこの時期はグレッチェンのアルバムをかなり聴きました。

動画の音質はそこまで良くないですが内容は最高です。最後の盛り上がりはたまらないですよね。

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Oblique Sounds

Walter Smith III「Still Casual」

そもそもウォルターの曲がカッコいいのと曲のバランスもいいのでアルバムとして最高です。

ウォルターの曲は難しそうな曲が多く、このアルバムも1曲目からいきなり飛ばしてきます。

そんな難しそうな曲も疾走感が出ていて自分のものにしている感じが一流のドラマーですよね。

努力型だけどやっぱり天才肌

4年ほどケンドリックからドラムを習っていましたが、やっぱりここにいきつくまで相当努力したんだなと思っていました。

それはCD聴いてもライヴを見ても音楽に対しての真面目さがにじみ出ているので良くわりましす。ダニー・グリセットもマイク・モレノもそう言っていたので間違いないでしょう。

ですがやっぱりお手本や練習の応用の仕方を教わってもやっぱり天才なんだなと思わせてしまう何かをヒシヒシと肌で実感しました。。努力できる天才は最強ですね。

最後にYouTubeからオススメの動画をいくつか載せておくので気になった方はぜひチェックしてみてください!

 



ABOUTこの記事をかいた人

野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。