こんにちは野澤です。
気づけばもう1年の1/4が終わってビックリです。このままあっという間に今年が終わるんじゃないかと思うと恐ろしいですね。。
さて今回はモードジャズの曲をオススメしたいと思います。
そもそもモードジャズって何という方もいると思うので説明させていただきます。そしてモードジャズの原点と格好良さをお伝えできればと思いますので最後までご覧ください。
モードジャズって何?
モードジャズを簡単に言うと1つのコードで即興演奏をするスタイルです。スケールを軸に演奏する手法ですね。これだけだとピンとこないのでもう少し前の時代から追ってみましょう。
モードよりも前の時代に流行していたジャズのスタイルである“ビバップ”では、2拍や1小節で変化していくコード進行、というものを基にアドリブをしていきます。
プレイヤーはこの次々と移り変わっていくコードの音(コードトーン)を狙いながら演奏をするので、コード進行だけでも何の曲か分かるという特徴がありました。
複雑なコードチェンジでたくさん音を入れて美しい即興をするというのはジャズの美学の1つとも言えるでしょう。
そこに一石を投じたのがトランペッターのマイルス・デイビスです。あるとき、コードを変化させずに同じ1つのコードだけでアドリブをする方法を考えました。
それまであんなにたくさんコードチェンジしながら演奏していたのに急に1つのコードにされて当時の彼のバンドメンバーは困惑したそうです。
マイルスはクラシック音楽や教会音楽からこの手法を編み出したのですがコンセプトとしてはコードの音だけでなくドレミファソラシドの音階(スケール)を使ってソロをとるということでした。
曲で使う実際のスケールとしてはレから始まりレで終わるレミファソラシドレの音階とミbを軸にするミb,ファ,ソb,ラb,シ,ド,レb,ミbの2つの音階を使って曲にしました。
実際にピアノで弾いてみると音階の雰囲気が分かりやすいです。この音階を教会旋法とも言います。
最初は少し気持ち悪いかもしれませんがずっと弾いているとレとミbがだんだん軸に聞こえていきます。
こうすることによって一番変化するのは曲の雰囲気でした。ビバップではコードチェンジがあることで曲の流れがエモーショナルでわかりやすかったのですが、モードジャズになるともう少しダークでミステリアスな感じになります。
そんなモードジャズの魅力は何といってもクールでかっこいい。
プレイヤーの意向に沿ってメロディックにキメることもできれば突っ走ってエネルギーを放出するようなものすごい音楽になることもあり得ます。
さて、ザックリとした説明ですがなんとなくモードジャズについてご理解いただけましたかね。
それではモードジャズの超オススメ曲を3曲ご紹介していきたいと思います。
マイルス・ディビス「So What」
モードジャズはこのアルバムから世の中に広がりました。
So Whatという曲は現在でもさまざまなミュージシャンが演奏しています。
ゆったりでミステリアスな雰囲気が終始漂っています。モードジャズにも曲の構成がありAABAの形式をとっていてAの部分がDマイナーのスケールでBの部分がEbマイナーのスケールになっています。
聴きどころポイント
この曲のテーマはベースが弾いているのです。
私は最初この曲を聴いた時はこのベースの部分がイントロだと勘違いして聴いていたのでマイルスが吹き始めてソロみたいなテーマだなと思い込んでいました。
いざ友達とこの曲をセッションした時に真実を知って驚愕した経験があるので初めて聴く方は注意して聴いてみてください。
マイルスのソロそのものがモードジャズのやり方を物語っていてスケールを見事に駆使して綺麗なメロディラインを作っています。今までのジャズとは一味違う間の使い方と楽器のトーンの使い方が革命的です。
この後更なる進化を遂げてまた違う”So What”も生まれました。こっちのバージョンはキレキレな演奏で常に集中して聴いていないと振り落とされそうなほど勢いがあります。
ジョン・コルトレーン「Impressions」
マイルスと一緒に演奏していたサックスプレーヤー、ジョン・コルトレーンも自身のバンドでモードジャズを積極的にとっていました。
その代表曲といえばこの”Inpressions”です。”So What”とは違いアップテンポな曲になっています。
聴きどころポイント
この曲のお披露目はライヴレコーディングとなっていました。
出だしはクールに始まりますがマッコイのピアノソロでだんだんギアが上がっていきます。そこからジミー・ギャリソンのベースのフリーソロになり、モードの独特なミステリアスな空気の中でシリアスなソロを展開させていきます。
ジミーがテンポを出すような音を弾くとすかさずコルトレーンが入ってきてラストスパートをかけていきます。コルトレーンも最初からギアを上げずにクールに吹き始めるのですが割とすぐテンションを上げていくのがいいですね。
ドラムのエルビンもそれを見逃さずにコルトレーンについていきガンガン煽っていくところもアツいです。後半はサックスとドラムだけになりどこまでも進んでいくような世界になっていきコルトレーンが合図を出すとピアノもベースもすかさず入りラストテーマへ進んでいきます。
13分くらいの熱演ですがメンバーそれぞれがバトンを渡すような形でソロを繋いでいきリーダーがラストスパートをかけるマラソンのような大曲になっています。
フレディ・ハバード「The Intrepid Fox」
トランペッターのフレディ・ハバードが作曲した”The Intrepid Fox”。
これまで紹介した2曲はモードジャズの基盤になるような曲でしたがこの曲はモードジャズをさらに応用して構成を複雑にしました。
上の2曲はテーマのメロディがブルースのメロディのようにシンプルで何回も同じフレーズがテーマで繰り返されます。
しかしこの曲はメロディが複雑になってさらにリズムセクションにもポリリズムをさせるような部分もあります。
録音されたのは1970年代。本当にジャズはどこまで複雑化するんでしょう。。
聴きどころポイント
ソロの部分も6小節単位でコードチェンジしていきます。演奏してみるとこの6小節がかなり気持ち悪いのです。
その違和感をものともしない演奏で自然な流れで音楽を展開していきます。
録音時代は先述のとおり70年代になるので、当時流行のフュージョンのようなサウンドも少し混ざっています。
ピアノのハービー・ハンコックがエレピを使っているのとロン・カーターのウッドベースがエレキサウンドに寄っているからでしょう。
トランペットのフレディはどこかマイルスを意識しているようなフレーズでドラムのレニー・ホワイトもトニーを意識しているドラミングなのでやっぱりマイルスバンドは偉大なんですね。
その中でもサックスのジョー・ヘンダーソンはオンリーワンな演奏をしています。
間の使い方、フレーズ感、音色が個性的です。マイルスが考えているモードジャズのコンセプトとかなり近いとこで演奏していますがまた違ったアンサーを出しているので本当に面白いプレイがここで聴けます。
以上モードジャズの中から3曲選んでみました。モードジャズの初期はミニマリストかのようにコードを削ぎとして極力シンプルにメロディを聴かせるのが原点でしたが、後々にはこのシンプルな部分がプレイヤーのエネルギーをブーストさせるきっかけとなりモードジャズ=激しいジャズと進化を遂げていきました。
1960年代以降はモードジャズが広まって世の中にはまだまだアツい演奏が残っています。YouTubeとかで検索して聴いてみるとかなりの名演が残っているのではないでしょうか。