トランペットの室内練習にはこのミュートを使え!

新型コロナウイルスの影響であまり外出ができない方が増えたなか、ミュートについて関心を持つトランペットプレイヤーが増えているようです。

特に自宅でトランペットを練習するためのプラクティスミュートについての関心は高く、ヤマハのサイレントブラスをはじめとして多くの方が実際にお店で手に取られたりしているとのことです。

というわけで今回はそんなプラクティスミュートに関して書いていこうと思います。

可能ならハーマンミュートを使え!

しょっぱなからの結論なのとプラクティスミュートについて書くと言った直後なのに恐縮ですが、自宅でトランペットを練習するならば”可能な限り”プラクティスミュートよりもハーマンミュートを使った方が良いです。

特に初心者の場合はプラクティスミュートのデメリットの部分をカバーしつつ練習することは困難なため、なおのことハーマンミュートをお勧めしたいと思います。

ハーマンミュートとプラクティスミュートの違いとは

ハーマンミュートとプラクティスミュート、まずはこの両者の違いをご紹介します。

ハーマンミュート

この「ハーマン」という呼称自体はハーマンというメーカーの名前で、他にもワウワウミュートとかバブルミュート、チーチーミュートなどと呼ばれることもあります。

とりあえずはハーマンが最も一般的なので(多分)、今回はその呼称で通すこととします。

ハーマンミュートとはマイルスデイヴィスが用いたことでも有名なミュートで、この演奏を耳にしたことがある方も少なくないかと思います。

アルミや銅などの金属でできており、トランペットに装着した際にベルから大きくはみ出るものが多いです。

ほとんどのハーマンミュートにはステムという漏斗のようなパーツが付属してきますが(僕はめったに使わないのでどこかへ失くしてしまいましたが)、そのステムをミュート本体へ装着し、ステムの先端を手で塞いだり開いたりすることによってこんな感じの演奏が可能になります。

 

そう、だれもがご存じ吉本新喜劇のテーマ。

マイルスのようなクールな音色からこのようなコミカルな音色まで、演奏者の工夫次第でトランペットのサウンドにさまざまな色彩を付け加えることのできるミュート、それがハーマンミュートです。

ただしオープンで演奏する時と比べると音量が小さくなってしまうため、多くの現場ではマイクと共に使用されます。

しかし、あくまでも副産物であるその消音効果のために室内でのトランペット練習にも役立ちます。

プラクティスミュート

一方プラクティスミュートとはその名の通り、練習用に作られたミュートです。

ハーマンミュートのように音色に変化をもたらすためではなく、室内で練習することを目的として作られているので、より強い消音効果を得ることができます。

現在は多くのメーカーから販売されており、単に消音効果だけでなく吹きやすさや音程の良さ、持ち運びのしやすさなどを競ってしのぎを削っています。

個人的には安い・小さい(ベルに入れたままトランペットケースに入れられる)・軽い(プラスチック製)の3拍子揃ったこのベストブラスのイーブラスジュニアがお気に入りです。

それぞれのミュートの持つデメリット

ハーマンミュートもプラクティスミュートもさまざまなメーカーが販売しており、それぞれが多少異なる特性を持っているのですが、室内でトランペットを練習する目的で考えたときのデメリットは音程が上ずる(うわずる)のと吹き抵抗が大きいため練習の妨げとなることです。

音程の上ずりは主管を数センチ抜くことによって解決はしますが、今度は高音域がぶら下がりやすくなってしまったり、完全に解決するのは難しいでしょう。

また吹き抵抗の大きさは初心者の方にとっては致命的です。

なぜなら抵抗が強いために力んでトランペットを吹いたり、逆にあまり息を吸わずにトランペットを吹く癖がついてしまうとその後の上達を大きく妨げてしまうからです。

結局なぜハーマンミュートなのか

両者の比較で言えばハーマンミュートはまだ抵抗感が弱く、このデメリットを若干ですが抑えることができます。

しかしその分音量はプラクティスミュートよりは大きくなってしまいます。

 

ここから先は主観が多く含まれるのですが、おそらくハーマンミュートでも昼間の室内での練習、また夜間でも窓をきちんと締め切った一戸建てであれば練習は可能でしょう。

逆に壁の薄いアパートで深夜に練習したいという場合はプラクティスミュートしか選択肢はないかもしれません。

冒頭で「”可能な限り”プラクティスミュートよりもハーマンミュートを使った方がいい」と述べたのはそういった理由からです。

ですから今回の記事を読んでいただいたうえで実際にトランペットを練習する環境に合わせて柔軟に選択していただければと思います。

ちなみに当然ながらハーマンミュートは室内練習だけでなく通常の演奏にも使えます(ていうか本来はそっちが主なはず)。

逆にプラクティスミュートを実際の演奏で用いることはまずありませんから、どっちを選べばいいかわからないという方だってハーマンミュートを1つ持っていて損はないでしょう。

ちょっとだけ余談

ULLVEN

最近ULLVEN(ウルベン)というスウェーデンのミュートメーカーが生産を再開したようです。

一度だけウルベンのスタビーミュート(ハーマンを少しコンパクトにしたような形状)を吹かせてもらったことがあるのですが、振動の伝達性が良く、重めで金属感の強い音色が簡単に出る素晴らしいミュートでした。

吹かせてもらった当時は廃盤と聞いて諦めていましたが、最近になって再生産されたと聞いてそのうち試奏しにいこうかなと思案中です。

この記事を書くにあたってググってみたらディジー・ガレスピーの愛用したミュートでもあったようです。

イーブラスジュニア

上にも書きましたが、プラクティスミュートの中では安いし持ち運びやすいし軽いしで大変重宝しています。

僕はそもそもプラクティスミュートをめったに使いませんが、だからこそ出費は抑えたいし、持ち運ぶときに邪魔にならない方が良いですよね(普通はミュートってかさばるので)。

音程の歪みもギリギリ許容範囲ですし、プラスチック製のくせしてしっかりとツボを狙ってあげればよく共鳴しているのが分かるので、ある意味正しく吹くことができているかのバロメーターとしても使ったりします。



ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。