ジャズのアドリブ演奏を上達させるなら、スケールとコードトーンをおさえよう

以前ご紹介したII-V-Iというのはアドリブを勉強しだすと必ず出会うキーワードです。そして、それと同じく重要なキーワードとして「スケール」や「コードトーン」が存在します。

スケールとは音階のことで、コードトーンとはそのコードを構成する音のことです。

普段レッスンをしていると、ネットで調べてきましたと言って全てのキーの、全てのコードのコードトーン表をプリントアウトしてくる熱心な生徒さんがいらっしゃいます。

大変熱心なことで本当に頭の下がる思いなのですが、全てのコードのコードトーンを初めから覚えて把握しようとするのはなかなか大変なことです。

それに、単に丸暗記するよりはそれぞれの特徴を理解しておく方がより演奏にも役立つというものです。

プロのジャズミュージシャンに教わる ツーファイブワンって何ですか?(前編)でも少し書きましたが、初心者の方にとっては楽譜に書いてあるさまざまなコードをざっくりと、いくつかのものに分類することで練習しやすくすることが可能で、結局はその方が上達スピードが速いものです。

アドリブや理論に対する理解が少し深まってきたところで、細かいこと(例えばテンションノートの意味など)を気にするようにしたって全く遅くはありません。

かえってその方がより実践的に理解することができるでしょう。

というわけで今回はアドリブを学び始める方へ向けた、コードトーンについてのシンプルな考え方のお話です。

すごく基本のお話=和音について

2つ以上の音が同時に鳴ると、それらの音がどのくらい離れているかによってその和音のもつ雰囲気が変わってきます。

例えばピアノでドとミ、ドとミ♭をそれぞれ弾いてみて比べてみましょう。

前者は明るい感じ、後者は暗い感じに聞こえるかと思います。

またドとソ、ドとファ#はどうでしょう?

前者は特に問題のない安定した感じ、後者は不安定な感じに聞こえないでしょうか?

ジャズで主に用いられるコードのコードトーンは、基本的には4つの音による和音で構成されています。

難しいことを書くとキリがありませんが、和音の中の4つの音がそれぞれどのくらい離れているかによってそのコードの雰囲気が決まってくるんだということだけ覚えておいてください。

4つのコードトーン、それぞれの役割とは

ルート(1度):そのコードの1度のことをルート(root=根という意味で、根音と呼ばれる)と呼びます。これがなくては始まりません。

3度:コードの明るさを決めます。メジャー(ルートから数えて長3度)とか、マイナー(同じく短3度)の違いはここで表現します。

5度:ルートの支えとなる音です。この音がルートから数えてちょうど5度(完全5度などといいます)であれば安定した感じですが、これが半音下がったり(増4度)なんかするとえらいことになります(笑)。

7度:コード全体の安定感に影響を与えます。7度と3度が完全5度にあるときは良いのですが、そこから半音ずれて増4度になったりするとコード全体が少し不安定になってしまいます(後述)。

ちょっと乱暴だけど大きく4つに分類

一部は以前の記事でご紹介していますがおさらいです。大きく以下の4つに分類してしまいましょう。

僕が使っている記譜ソフトの都合で、実例として挙げるものの一部はコードネームがあまり一般的ではない書き方になっていますが、コードネームの表記についてはアドリブを練習するためのちょっとした工夫5つを参考にしてみてください。

メジャーセブン

明るい雰囲気でとても安定しています。

 

コードトーン

重ね重ね書きますが、ちょっと乱暴なのを承知で、CM7だけでなくただ単にCとかCM、もしくはC6なんて書いてあるものもこの中に分類してしまいましょう。

ルートの後に大文字M(もしくはその略号である△)がついていたらメジャーセブンだと思ってしまってとりあえずOKです。

マイナーセブン

暗い雰囲気ですが、こちらも安定しています。

 

コードトーン

CmとCm6、Cm11など、ルートの後に小文字のm(もしくはその略号である-)がついていたらマイナーセブンに仕分けてしまいましょう。

セブンス

明るいがなんだか不安定なハーモニーです。

雰囲気としては、こういう人間がいたらちょっと付き合うのは大変かもという感じです(笑)。

 

コードトーン

ルートの後にメジャーともマイナーとも書いておらず、なおかつ6以外の数字が書いてある場合はとりあえずセブンスコードの可能性が高いでしょう。

セブンスは不安定な分とても融通のきくコードで、さまざまなテンションノートが書いてあることがあります。

II-V-Iのドミナントに当たるコードでもあります。

マイナーセブンフラットファイブ

名前の通り、マイナーセブンの5度がフラットしたもので、暗いだけではなく少し不安な気分にさせられるハーモニーです。

 

コードトーン

マイナーへ解決するII-V-Iのサブドミナントとして用いられることの多いコードです。

このコードで使えるスケールは基本的にロクリアンしかありませんが、今回は取り扱いません。

コードトーンがディミニッシュセブンと似ているためハーフディミニッシュとも呼ばれます。

上の4つに分類しづらいその他のコード

マイナーメジャーセブン

マイナーなの? メジャーなの? となりそうですが、マイナーセブンが変形したものです。

 

コードトーン

マイナーではありますが、7度がフラットしないのでこのような名前になっています。

一般的にはCmM7とかCm△7と表記されることが多いです。

ディミニッシュセブン

雰囲気はザ・不安定、といった感じでしょうか。

 

コードトーン

一見するとII-V-Iには絡んでこないのですが、実はとても重要なコードです。

しかしながらちょっとややこしいのでここではスキップします。

初心者の方はとりあえず気にする必要はありません。

スラッシュコード(分数コード)

基本的には分数の分母にあたる部分がルートで、その上に分子に書いてあるコードが乗っかるという形です。

これもいろいろあってややこしいので今回はスキップします。

簡単にコードトーンを割り出すための法則

いろいろ紹介してきましたが、いくらザックリ4種類に絞ったとはいえ、これらのコードを全てのキー(12キー)で暗記するというのは効率が悪いような気がします。

特に僕は丸暗記が苦手なので(笑)。

しかし、基本の4種類のコードは全てメジャーセブンから派生したものと考えると、比較的すんなり頭に入ってきます。

まず必要なことは全てのキーのメジャースケールを覚えるということです。

一気には難しいかもしれませんので少しずつ取り組みましょう。メジャースケールさえ覚えてしまえばこっちのものです。

各メジャースケールの1、3、5、7度のみを抜き出して縦に積んだものがメジャーセブンのコードトーンなのですが、こうして各キーのメジャーセブンのコードトーンが分かるようになります。

さきほど書いたように、これら基本の4種類のコードは全てメジャーセブンから派生したものですからメジャーセブンから以下のように変化すると覚えてしまいましょう。

マイナーセブン→3、7度を半音下げる

セブンス→7度だけを半音下げる

マイナーセブンフラットファイブ→3、5、7度を半音下げる

この法則さえ知っておけば、全てのコードのコードトーンを暗記しておかなくとも、それぞれのコードトーンを割り出すことが可能になります。

4種類のコードを12個のキー全てで覚えると48個覚える必要がありますが、これなら12個のメジャースケールと上に書いた3つの法則を覚えれば良いので楽チンです。

しかもこれは以下のような応用も可能です。

マイナーメジャーセブン→3度だけ下げる

ディミニッシュセブン→マイナーセブンフラットファイブ(ハーフディミニッシュ)の7度をもう半音下げる

これで72個(6種類×12キー)のコードを12のメジャースケール+5つの法則のみで割り出すことが可能です。

テンションノートとは

ちょっと横道に逸れましょう。

コードトーンのついでにテンションノートについても簡単に書いておかねばなりません。

1度(ルート)、3度、5度、7度がコードを構成する主要な音=コードトーンであるのに対して、9度、11度、13度はテンションノートと呼ばれます。

カレーに例えるなら1、3、5、7がルー、野菜、肉、ご飯だとすると、テンションノートはそこへ少しだけ入れる隠し味のようなものでしょうか。

カレーに隠し味、入れますよね? りんごのすりおろしとか牛乳とかコーヒーとか。

これらは考えなしに入れ過ぎれば味のバランスが崩れますが、いい具合で入れれば料理全体の味をぐっと引き立てます。

また料理であれば、一見突飛なように見える組み合わせでも案外食べてみたら美味いというメニューが存在します。

例えば牛乳ラーメンとか、パイナップルラーメンなどが良い例でしょう。

本来薬味としてちょっと添えるだけの存在であった(らしい)パクチーを何故かてんこ盛りにしたパクチー料理なんてのもあって、僕などは試してみようとすら思いませんが一部の人にはカルト的人気を誇るようです(笑)。

テンションノートも使い方次第ではこのような表現が可能になる、まさに料理で言うところの、隠し味や薬味のようなものであると思っていただければと思います。

ここではそれぞれについて細かい説明は行いませんが、大体こんな感じだということを頭に留めておいて下さい。

基本の4つのコードを更に深掘りしていくと

ここから先は初心者がすぐに理解しなければならないというわけではありませんが、それぞれのコードをよく理解するための手助けとなります。

下記に記載した音程をそれぞれ実際にピアノで弾いて確認してみましょう。より理解が進むと思います。

メジャーセブン=明るい雰囲気で安定

ルート~3度が長3度(ドとミ)→明るい
ルート~5度が完全5度(ドとソ)そして3度~7度が完全5度(ミとシ)→安定

マイナーセブン=暗い雰囲気で安定

ルート~3度が短3度(ドとミ♭)→暗い
ルート~5度が完全5度(ドとソ)そして3度~7度が完全5度(ミ♭とシ♭)→安定
※メジャーセブンと比較して、短3度のためにフラットした3度に釣られて7度も半音下がる。

セブンス=明るい雰囲気で不安定

ルート~3度が長3度(ドとミ)→明るい
ルート~5度が完全5度(ドとソだが3度~7度が増4度(ミとシ♭)→不安定

マイナーセブンフラットファイブ=暗く、不安な雰囲気

ルート~3度が短3度(ドとミ♭)→暗い
ルート~5度が増4度(ドとソ♭)で3度~7度が完全5度(ミ♭とシ♭)→不安定

明るいor暗い、安定or不安定という2軸の組み合わせによって主要4コードが成り立っているということに注目しましょう。

練習問題

ここまでは全てCを基準として考えてきましたが、当然のことながら実際の演奏ではそれ以外の音がルートになることがあります。

練習問題としてややこしく間違えやすいものをピックアップしましたので、今回の記事を理解することができたかどうかのチェックに活用してみてください。

1.B,Db(もしくはC#),F#,Abそれぞれをルートとするメジャースケール(イオニアン)を答えなさい。
2.B,Db(もしくはC#),F#,Abそれぞれをルートとするメジャーセブン、マイナーセブン、セブンス、マイナーセブンフラットファイブのコードトーンを答えなさい。

※ただしDbとC#に関してはどちらか都合の良い方で構いません。またAbm7b5に関してもG#m7b5という表記で構いません。

答えはまた来週!



ABOUTこの記事をかいた人

金村 盡志(かねむら つくし)

1986年生まれ。中学生から吹奏楽を通してトランペットの演奏を始め、高校生からジャズに目覚める。その後、原朋直氏(tp)に約4年間師事し、2010年からニューヨークのThe New Schoolに設立されたThe New School for Jazz and Contemporary Music部門に留学。Jimmy Owens(tp)氏などの指導を受け帰国し、関東近郊を中心に音楽活動を開始。金村盡志トランペット教室でのレッスンを行いながら、精力的に活動を続けている。