こんにちは、野澤です。
気がつけばもう外もだいぶ暖かくなり春が近づいてきましたね。
4月になれば(2025年3月現在)ブルーノート東京に今大注目のヴィブラフォンプレイヤーのジョエル・ロスが自身のバンドで来日するので最近の楽しみとなっています。
ちなみに、今回のトピックとは関係ありませんがオススメです。
今回は、いつもと少し変わってフュージョンのドラムについてオススメのアルバムと解説をしてみようと思います。
フュージョンとは?
フュージョンは日本語では「融合」という意味で、ジャズと別のジャンルの音楽を混ぜたものを指します。
よく言われるのはジャズとロックが融合した音楽のことで1960年代後半から1970年代にかけて出てきた音楽のことを指すことが多いです。
初期でいえば、
- マイルスディビス「In A Silent Way」
- トニー・ウィリアムス「Lifetime」
- マハビシュヌオーケストラ
- ウェザーリポート
- チック・コリア「Return To Forever」
あたりがフュージョンと呼ばれるようになったバンドやアルバムとなります。
主にマイルスの影響が強いのか、トニー・ウィリアムスもジョン・マクラフリンもウェザーリポートのジョー・ザビヌルやウェイン・ショーター、チック・コリアもマイルスのエレクトリックバンドに所属していたミュージシャンで、独立後にフュージョンのバンドを結成することが多いです。
ピアニストだったチックやジョーは、最初はアコースティックなピアノを演奏したがり、マイルスの指示でしぶしぶローズピアノやエレクトリックキーボードを弾いていたらしいのですが、その後はご存知のようにその才能をフュージョン世代で開花させているのもおもしろいところです。
フュージョンドラムの特徴
アコースティックだったジャズのスタイルからより大きな音を出すパワフルなロックのサウンドを考えたとき、アコースティックピアノでは音が弱いので出力が大きいローズやキーボードに変えたとマイルスは語っています。
ベースもアンプで増幅させより大きな音をスピーカーから出音するようになりました。
そうなればドラムのサウンドも自然と変わっていきます。
シンバルレガートの部分は残しつつもロックのような2、4拍目にスネアにバックビートがあるようなビートを取り入れたり、バスドラはドスッとしたロックのような重いサウンド作りがメインとなってきます。
シンバルも均一なサウンドや明るい音が出せるライドシンバルに変わっていき、太くて安定感のあるロックなサウンドへ徐々に移行していきます。
ビバップとはサウンドが極端に違うためモダンジャズ好きな人からは受け入れ難いですがこの時代は日本でも相当フュージョンジャズがブームになったそうです。
先輩ミュージシャン曰くこの時代に売れれば富と名声は確実と言っていたほどのジャズブームが日本にもきてたそうですよ。
今はまた向かい風な気もしますが。。
そんなフュージョンドラムのサウンドがどんなものなのか、実際に聞いてみましょう。オススメアルバムをご紹介していきます。
フュージョンドラムを聴くならまずこれ。オススメのアルバム5選
「In A Silent Way」
ジャズの帝王、マイルス・ディビスが初めてエレクトロ楽器を導入して作成したアルバムです。
メンバーにはウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムスのメンバーに加えてキーボードにチック・コリア、ジョー・ザビヌル、ギターにジョン・マクラフリン、ベースにデイヴ・ホランドの当時の新メンバーで収録しました。
それまではモードを使った高速4ビートのスイングがマイルスバンドの看板でしたがこのアルバムではコンセプトをガラリと変えて音楽をより抽象的にしています。
ベースパターンとドラムのハイハットの16分音符のチキチキというパターンが永続的に続いていくようなムードを作り、その上でマイルスがメロディを吹いたり、キーボードとギターで掛け合いのソロを展開していきます。
コード進行とパターンが1つに縛られているので瞬間的な速さは全くなく、徐々に変化していく音楽を楽しむのがこのレコードのたしなみ方ですね。
ここでのトニー・ウィリアムスはマイルスのディレクションに沿って動いているので、それまでの野生的な感じより全体を俯瞰して音楽を見ているような知的なアプローチをしています。
同じパターンしか叩いてないのに音楽的な表現をここまでできるのもなかなかいないですね。ドラマー視点で聴いても微妙な変化なので察知しづらいですがバンドの空気感に常にフィットし続けています。
「Emergency」
ドラマーのトニー・ウィリアムスのリーダーアルバムで、マイルスの「In A Silent Way」後に発表したアルバムです。
そのため「In A Silent Way」のサウンドやインスピレーションをモロに受けています。
メンバーはジョン・マクラフリン(Guitar)、ラリー・ヤング(Organ)のトリオ。しかしトリオとは思えないほどギンギンの演奏をしています。
1曲目からハイテンションで始まりますが落ち着いたりテンポダウンしたりまた上がったりするなど1曲の中での起伏が激しいです。まさにマイルスのようなトータルで変化する展開もみせます。
この頃の電気系統の進化も途上なのかギターやオルガンのノイズが入るのもエレキな感じがしますしロックな雰囲気が感じ取れますね(このアルバムでは収録の問題も多分にあったようですが)。
この頃のトニーはまだドラムのセットが大きくなる前なので、音色自体はジャズ寄りなサウンドをしています。
シンバルレガートや左足のハイハットの刻みなどマイルスバンド加入時のトニーを感じる要素がたくさん混ざっていますね。
2曲目の”Beyond Games”もロック調なビートで始まりますがバスドラの音色やスネアの音色が完全にジャズの音です。
しかしバックビートやイーブンなリズムは完全にジャズと真逆でレッドツェッペリンやディープパープルのようなドラムのサウンドを思い起こさせます。
サイケデリックなサウンドもこの年代特有の空気感をかもし出しているので個人的にはとても面白いと感じるアルバムです。
「Return To Forever」
チックコリアのエレクトリックバンドの始まりとも言われるリターントゥーフォーエバー。
有名なとこで言えばアルバム「Light as a Feather」の”Spain”ですね。
“500 miles high”や”Captain Marvel”も有名ですが今回は一番最初に出したアルバム「Return To Forever」をピックアップしてみます。
このアルバムのメンバーの構成としてはジョー・ファレル(S.Sax, Flute)スタンリー・クラーク(Bass)アイアート・モレイラ(Drums)というメンバーとなっといます。
ジャズとロックのサウンドにさらにブラジルのサンバのリズムを足してオリジナリティーがさらに増していますし、チックがピアノではなくローズやエレピで弾いてるので2曲目の”Cristal Silence”ではよりエレクトリック感がでて幻想的な音楽を作っています。
スタンリー・クラークのベースの音質も独特ですがこの年代を象徴する音ですね。
音をアンプで少し硬くしてリズムがハッキリでるようになりウッドベースであっても、豊かな低音の鳴りはあえて削ってエレキベースのような感じになっています(アルバム中ではエレクトリックベースも使用しています)。
3曲目の”What Game Shall We Play Today”ではボーカルのフローラ・プリムがポップに聴こえさせるいいアクセントになっており、スタンリーのウッドベースの音色がよく活かされています。
ドラムはロックというよりはラテンやブラジルの要素が強いイーブンのリズムになっているのもポイントです。
バックビートが2,4拍目にくるのではなくどの曲もサンバのリズムを軸にしていますが音色はロックなテイストを感じさせていますね。
高音がキンキンしたシンバルの音色、ドスッとしたバスドラの低音感、サスティンの短いスネアの音だったりどれをとってもロック向きの音になっています。
このアルバムがフュージョンと呼ばれているのもドラムの音色の影響が大きいですね。
「Head Hunters」
1973年にリリースされたピアニスト/キーボーティストのハービー・ハンコックのアルバムです。
マイルスバンドで摩訶不思議なコードワークを使いピアノの魔術師とまで呼ばれたハービーですがこのアルバムでは構成、メロディ、コード進行、リズムをかなりシンプルに仕上げています。
これが世界的ヒットになり、一説にはマイルスが嫉妬したと言われるほどに。
キャッチーなベースラインから始まる”Chanmeleon”。メロディもファンキーでかっこよく覚えやすいですよね。
キーボードソロに入ってからはギタリストかのようなイケイケなソロを炸裂させます。
ベースのポール・ジャクソンのエレキベースとハービーメイソンのドラムの絡みも相性がとにかくいい。
黒人ならではのグルーヴ感がありR&Bやファンクのテイストが強めです。
ドラムはタイトな音色ですが少し歪むようなサウンドでR&Bの感じが出ています。
ミーターズやジャクソン5、レイ・チャールズ、スティービー・ワンダーの系統ですね。ハイハットは16分音符で刻む細かいグルーヴからファンクであることも感じさせさられます。
それまでのジャズで一般的だったマイルスバンドなどの4ビートも、まぎれもなくブラックミュージックの手法ですが、この手の音楽もブラックミュージックともいえますね。
全く雰囲気の違うリズムですが最近のピアニストであるロバート・グラスパーもハービーの音楽をリスペクトしてこれを派生させたような音楽を作っています。
今のジャズ界隈の原点とも言えるアルバムかもしれません。
「The Inner Mounting Flame」
マハビシュヌオーケストラのアルバムでリーダーはギタリストのジョン・マクラフリンです。
オーケストラと入っていますがコンボ編成(少人数編成)での演奏。
「マハヴィシュヌ」とはジョン・マクラフリンのヒンドゥー教に改宗した際の名前です。
このアルバムが今回紹介した中でロックとジャズが融合したフュージョンと呼ばれる音楽です。
変拍子の上でリハをみんなでユニゾンするプログレッシブロックのようなサウンドで、ピンクフロイドやアイアンメイデン、ドリームシアターのようなロック好きの人はハマるかもしれません。
1曲目からジョン・マクラフリンのロックテイストのギターソロが爆発しています。どの楽器もアグレッシブなソロをしていて2曲目の”Dawn”はバイオリンソロも最高です。
1曲それぞれが組曲のようにテンポや雰囲気が変わったりするので聴いていて飽きない流れになっていて、ジョン・マクラフリンも参加していたトニー・ウィリアムスのLifetimeと似たものを感じます。
マクラフリンとドラマーのビリー・コブハムのデュオで始まっていく3曲目の”The Noonward Race”。
ビリー・コブハムの歌うドラムとマクラフリンのメロディが一体化していて聴いていてかなりスカッとしますね。
その後バンドインで全員入った後もよりグルーヴ感が強まり、その勢いでギターソロがさらに盛り上がりをみせます。スタジオアルバムなのにまるでライヴを観ているかのような生の空気感を感じれるのでとても面白いアルバムです。
ドラマーのビリー・コブハムは手数王という称号がついていてその名の通り連打の速さや1小節の中での音の詰め込み方がとてつもないです。
それでいてドラムが歌っていてグルーヴしているのでこの時代の技巧派ドラマーと言えるでしょう。
以上フュージョン初期のオススメアルバム5選でした。
フュージョンが流行り始めたこの頃はまだ色々と実験的かつ積極的な音楽ですが全てが聴きやすいキャッチーなアルバムだとは言えませんが、このフュージョン初期はジャズのテクニックや要素が多く詰まっており十分に聴きごたえがある内容ばかりです。
もう少しジョージ・ベンソンやstuff、リー・リトナーなどの世代になってくるとジャズを知らない人でも聴きやすい音楽になっていきますね。
そこからヴィニー・カリウタ、デイヴ・ウェックル、スティーブ・スミス、デニス・チェンバースなどのフュージョンドラマーが80年代を一世風靡していくのでここら辺もまた違う機会に取り上げられたらと思います。