前回は石若駿さんの今の活動に注目しましたが、今回はこれまでの石若さんがどういう活動を経てここまで上り詰めたのかに焦点をあててみたいと思います。
個人的な付き合いとしてお互いを知っていますが絡みはあまりないのです。
ドラマー同士現場で一緒になることはそんなにありませんので。。
私がアメリカから帰ってきたときに演奏を見にきてくれてたり石若さんのライヴを数回見に行ったりくらいであまり多くは絡んでいません。
が、個人的には彼が高校生のときくらいから気にはなって動向を追っていました。今の活動はよく知ってるけど昔どういうことをやっていたか知らないという人は多いんじゃないでしょうか。
今回はそんな石若駿さんの過去をさかのぼって少し紹介していきます。
高校生時代
高校は東京芸大附属の高校に通っていました。高校生といってもプロの現場でもう引っ張ってくれる人がいたので、すぐに都内で活動できるように地元北海道から若くして移ってきました。
当時その頃の私は洗足学園音楽大学2年生くらいで、東北出身の後輩から「やばいドラマーが北海道からきましたよ!」って言われて知ったのが最初です。
この頃は海外ミュージシャンのテクニックやフレーズ、セッティングなどをかなり意識しているプレイに見えます。
Boysが結成されたくらいの時の映像です。
この当時影響されてたであろうミュージシャン
■エリック・ハーランド
■クリス・デイヴ
■ブライアン・ブレイド
2010年代はこの3人が大活躍中でエリックやブライアンはアーロン・ゴールドバーグ、ジョシュア・レッドマン、カート・ローゼウィンケルなどのバンドで活躍していたドラマーです。
テクニックもサウンドも新しくてカッコいいので私たちの世代では真似したくなる存在でした。
クリス・デイヴもロバートグラスパーのトリオのドラマーとして頭角を表してきた時期でこの時注目されていたドラマーです。
クリスはドラマーの中ではおしゃれも最先端をいっていました。黒縁メガネやネクタイなどのファッションをクリス・デイヴから取り入れているのがわかります。
大学時代
大学も東京芸術大学の打楽器科に進学しました。この時に知り合った常田大希さんや小田朋美さんはかけがえのないミュージシャン仲間になりますね。
大学で昼は普通にクラシック音楽を専門に勉強していました。なのでティンパニやマリンバなどドラムではない多くの打楽器をここでたくさん経験しています。
勉強が終わった後の夜はジャズクラブでいろんなミュージシャンとライヴをしていました。まるで学生時代のマイルスディビスみたいですね。
ベテランとの共演も増えてきましたし勢いのある若手とのバンドにも力を入れていました。
桑原あいTrio
ピアニストの桑原あいさん、ベーシスト森田悠介さんとのトリオです。
上原ひろみっぽい感じのプログレジャズ。かと思いきやこの先に出すアルバムはしっかり桑原さんの個性が出てくるアルバムに仕上がっています。
この3人でバンドの方向性を定めながらやってきて得られたサウンドですし、石若さんの音色選びやフレーズ感がバンドの印象を変えている気がします。
吉本彰紘GROUP
吉本さんのプレイは個人的にすごくツボで音色もフレージングも素晴らしいです。パッと聴いた感じ整って聴こえますがやっている内容はかなりぶっ飛んだことをやっています。
その吉本さんのバンドで石若さんが叩きまくるのも爽快です。このバンドで出しているCDもあるのでそれもすごくオススメです。
坂道のアポロン
このアニメを見たもしくは知っている方も多いのではないでしょうか。私もリアルタイムで見ていましたがアニメ内での演奏の作画も音楽もすごくこだわっていました。
そこでこの作画をつくるための動きのモデル、ともにドラムの音役として石若さんが起用されました。
当時この制作に関わってた人からチラッと話を聞いたことがありますが、多くのカメラでいろんな角度からドラムを叩いているところを撮影して何度も叩いてもらったというのを聞いたことがあります。
それとは別で劇中の音も別録りしたりそれはそれは大掛かりだったそうです。
アニメの演奏シーンは相当盛り上がるものもありましたし見応えありましたね。
初のリーダーアルバム
若干21歳にして初のリーダーアルバムをジャズクラブの中でも一流ジャズクラブのボディアンドソウルでピアノに片倉真由子さん、ベースに境野慎一郎さんでのピアノトリオでライヴレコーディングを行いました。
いろんなミュージシャンと共演しているといえど初のリーダーとしてのレコーディング。しかも録り直しがきかないライヴという場面なので緊張してる感じが顔からうかがえます。
それでも演奏が始まればさすがというしかないですね。このレコーディングのために組まれたトリオですがすごくいいサウンドがしています。
ボニージャパンとの出会い
ボニーとは石若さんが愛用しているドラムメーカーのことです。他のメーカーと比べて規模は小さいですが石若さんとのタッグで注目を集めているドラムメーカです。
ラグやフープなどを見るとクラビオットに似ていてなんとなく高級感も感じます。
今は寺井尚子さんのドラマー荒井諒さんやYASEI COLLECTIVEの松下マサナオさんも愛用しています。多くのドラマーがBonnyを使いはじめたのも石若さんの影響が大きいですね。
大学卒業後の活動
大学を卒業した後は学業から解放されて一気に活動するんだろうなと思ってたらそれ以上に大活躍しました。
中でもポップス界に進出するきっかけとなったバンドがこれでしょう。
CRCK/LCKS
リーダーの小西遼くんは大学の後輩でありニューヨーク時代ルームメイトでもありました。
彼が日本に帰国するときに「リーダーバンドやろうと思うんっすよ。」と言っていたのがこのバンドでした。
ジャズミュージシャンがポップスを本気でやったらどうなるみたいな感じだと思って聴くと音楽も歌詞もすごく魅力的でした。
何より小田さんのボーカルには惹きつけられるものがあり何度も聴きたくなるバンドになっています。
ドラムも石若さんにしかできないようなグルーヴや難解なパターン、それだけでなく楽曲に寄り添うドラムが印象的です。
リーダーとしての活動
CRCK/LCKSだけでなく今までのジャズのライヴ、ツアーやレコーディングなど忙しくなってきているのに自己のソロ活動にも力を入れ始めました。
・Cleanup
コンテンポラリーミュージックですがジャズにとらわれないスタイルになっています。フリーに聴こえるものもあれば作品としてしっかり形になっているものもあったり何かの型にはまらないようにアルバムを作り上げている気がします。
・Songbook
Cleanupはインストですがsongbookは歌が入ります。
アレンジや作曲はもちろん石若さんが全部手掛けています。メンバーの組み合わせも楽曲に対して合いそうなメンバーをピックアップしてレコーディングしています。
これがもう5作目まで出ているので気になる方はチェックです。
・Answer To Remember
ここ一番力を入れているプロジェクトではないでしょうか。黒田卓也さん、ermhoi、MELRAW、など第一線で活躍しているミュージシャンを集めてレコーディングしています。ライヴもブルーノートで行うほどの大きい規模で活動中です。
・新宿PitInnでの3daysライヴ
老舗のライヴハウスピットインで数日にわたるライヴを定期的に行っています。それも昼と夜の公演があるので合計6公演(1公演でもファーストとセカンドがあるので12セット!)でどれも違う組み合わせになっています。
ソロの公演もあればBoysでの公演もあったりCRCK/LCKSでの演奏もあったり、石若さんの活動があってからこそできるイベントです。
石若駿というオリジナリティ
大学卒業後からは海外ミュージシャンの真似から見事に脱却して石若さんのオリジナリティを獲得しています。いろんな活動が生かされて出来上がったものでしょう。
2016年にはあのカートロゼンウィンケルの共演も見事ブルーノートで成功させました。石若さんにとってカートは憧れの存在だったので夢が叶った瞬間だったんじゃないでしょうか。
私も気になって初日のファーストセットを観に行きました。席はそこそこ離れたところで見ていましたがあのカートと対等に凄まじい音楽を創っていたので圧倒されまくりでした。
終わってからはセカンドセットも集中するだろうから挨拶は控えてそのまま帰ったんですがブルーノートを出てから少し歩いていたら石若さんからメッセージがきて「ありがとうございました!」と一言。
普通演奏に集中していたら誰が来てるか気づかないはずなんですけど。。大きなステージでも客席が見渡せているんですね。そしてすぐにメッセージでもお礼が言えるという人間力。。
この行動力とどんな音楽でも探求する心が石若さんの源でしょう。音楽的にも人間的にも出来上がってる石若駿さんにこれからも注目です!