プロドラマーが選ぶジャズドラムで聴くべきアルバム5選

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こんにちは、野澤です。春になりだいぶ暖かくなってきましたね。

以前オススメしたライブ情報がありますがさらに追加でアツいライブがあったのでお知らせしておきます(2026年4月下旬記事公開時)。

・6/20 & 21 「Marcus Guilmore」live at Blue Note

https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/marcus-gilmore/?_gl=1*1dc1ydu*_gcl_au*MTAyNTMzODYzOC4xNzc2MTI5NjE1

今ジャズ界で最も活躍するドラマーのマーカス・ギルモアのライヴです。このバンドではここ数年ニューヨークを中心に活動していましたが来日するのは今回初。

リーダーバンドでなかなか来日することがないので今回見逃さずに行きたいライヴです。

個人的にはアツい公演だったのでお知らせいたしました。

 

さて、今回は私ジャズドラマーが選ぶジャズドラムで聴くべきアルバムを5つ紹介。

いつもはバンドやアルバム全体の仕上がりなど、総合的にいいものを選んでいましたが、今回はドラマーにスポットを当てて絶対外せないアルバムを5つご紹介していこうと思います。

それでは早速いってみましょう。

フィリー・ジョー・ジョーンズ  「Show Case」

フィリー・ジョーがマイルスバンドで活躍していた時代に出したリーダーアルバム。

メンバーはブルーミッチェル(Trumpet)ジュリアン・プライエスター(Trombone)ビル・バロン(T.Sax)ペッパー・アダムス(Baritone Sax)ソニー・クラーク(Piano)ジミー・ギャリソン(Bass)というフロント4管というコンボとしては大きい編成になっています。

このアルバムのポイントとしてはどれもフィリージョージョーンズが前に出てくるような演奏になっているのがポイントです。

普段のフィリーだとリーダーや不フロントプレイヤーを後ろからガッチリ支えるようなサポーティブな演奏が特徴的ですが、このアルバムだとバディリッチのような少しドラムが前に出てくるようなアレンジがされています。

最初のドラムイントロからズンとくるようなドラムサウンドが感じられますがこれだけでいつも使っているドラムセットとは違ってバスドラムのサイズが大きいものを使っていたり。

スネアも少しルーズなサウンドにしていたりするなどフィリーのいつもと違ったサウンドのこだわりが感じられます。

サウンドを変えることによってもう少しビッグバンドのような華やかなサウンド作りをしていてまさにアルバムのタイトルの通り「ショーケース」というエンターテイメントに寄ったテイストになっています。ただマイルスの影響もあったりするのか、少し「Birth Of the Cool」のようなクールジャズの都会的なサウンドも混ざっていますね。

曲の中身としては9曲で39分という1曲がとてもコンパクトになっている作りになっています。なので一人一人のソロ回しも短くてテンポがいいです。その中でもしっかりフィリーのドラムソロはフィーチャーされていて3曲目と9曲目のバラード以外はドラムソロが入っています。

そのドラムソロもアートブレイキーやロイヘインズなど上の世代のドラマーに影響されているようなフレーズも多いですがしっかりフィリー自身のフレーズとして落とし込まれているのがお見事です。

ジャズドラマーからすると美味しいフレーズが詰め合わせされている曲ばかりなので聴くと毎回勉強になります。

Max Roach「Drums Unlimited」

ジャズドラムをこの人抜きには語れない。元祖ビバップドラマーであるマックス・ローチがドラムをフィーチャーしたアルバムです。

このアルバムはドラムソロの曲とコンボでの曲が交互に収録されています。多くのドラマーがこのアルバムでのドラムソロを研究するほどジャズドラマーのバイブルとも言えるでしょう。5曲目の”For Big Sid”の最初のフレーズはビリー・ハートやパパジョージョーンズなんかも真似していますし多くのドラマーが参考にしている音源でもあります。

アルバムのタイトル曲である”Drums Unlimited”はモチーフになるリズムとフレーズがいくつかあり、そのモチーフを組み合わせたりその時に思いついたリズムをくっつけたりしていて曲としての構成を守りつつ自由な部分も含んでいる曲です。

ドラムソロというと即興性が強いイメージですが曲として聞こえるのでそこは歌心のあるマックス・ローチとしての力量が十分に発揮されているアルバムとも言えます。

コンボではフレディ・ハバード(Trumpet)やジミー・メリット(Bass)などアートブレイキーアンドザジャズメッセンジャーズでも活躍するプレイヤーが参加しています。曲はファンキーな曲やブルースなど土着的なジャズが収録されています。2曲目の”Nommo”はこの時代には珍しい7拍子。

ある程度パターン化されたフレーズで動いていますがマックス・ローチもピアノのロニー・マシューズもパターンの中で遊びがあります。どういうふうに遊んでアンサンブルしているのかそちらも注目して聴いてもらうと楽しくなる曲です。

Ed Thigpen「Out Of the Storm」

オスカー・ピーターソンのドラマーで活躍していたエド・シグペンの初リーダーアルバム。

オスカーと演奏しているときはグルーヴとライドシンバルの滑らかさを活かしたプレイが特徴的ですが、このアルバムでは真逆です。

ドラムが主役になるように仕上がっています。

2曲目のファストスイングである”Cloud Break”ではテーマがドラムと他の楽器のコールアンドレスポンスという面白い構成。

しかもコール側のドラムはブラシという少し音量を抑えた形で始まり、1コーラス終わると他の楽器のアドリブになり勢いよくスイングしてまた次のコーラスでドラムとのコールアンドレスポンスに戻ります。

普通ならドラムソロの音量を上げて他の楽器のときに少し抑えて演奏するという構図になりそうですが、あえてドラムを抑えるという逆の関係にすることによってお互いの演奏がより引き立つクレバーなアレンジになっています。

エドは特殊なドラムを使っているのかタムのピッチが上がったり下がったりします。

もし使っているとしたらティンパニのような太鼓かトーキングドラムまたはロートドラムと呼ばれるものがありますが、こういう楽器を使うことによってドラムという括りではなくパーカッションというもっと大きな打楽器の括りで演奏していることがわかります。

特に6曲目の”Heritage”は民族的な掛け声やハンドパーカッションでより原始的なアプローチを目指していることがひしひし伝わってきます。

そこにクラーク・テリーのトランペットが入ることによってディキシーランドジャズのようなトラディショナルな要素も加わってきてさらに世界が広がります。

そんな民族的な音楽もやっていますがオスカーピーターソンのようなトラディショナルなジャズもアルバムの最後に収録されていてメンバーはケニー・バレル(Guitar)ハービー・ハンコック(Piano)ロン・カーター(Bass)という豪華メンバー。

このテイクではハービーがオスカーのような王道でキャッチーなフレーズを弾いているのでハービーをよく知る人からはこのプレイは意外と感じるでしょう。

エドのプレイもオスカーと一緒にやるかのような堅実のプレイで前の曲とのギャップも激しいです。

アートブレイキーがドラムの可能性を大きく広げましたがエド・シグペンはさらに民族的な要素を取り入れて深掘りしているような印象をこのアルバムで受けました。そういった意味ではジャズドラムというジャンルが持つ幅の広さや可能性を体感できるいいアルバムになっていると思います。

「Gretsch Drum Night At Birdland vol.2」

アート・ブレイキー、チャーリー・パーシップ、エルビン・ジョーンズ、フィリー・ジョー・ジョーンズの4人が集いドラムバトルのようなライヴをニューヨークのバードランドでライヴレコーディングしたアルバムです。

ドラマーからしたらこれは即ジャケ買いしたくなる1枚。

1曲目からリスナーに応えてくれるような最高のドラムバトルから始まります。

お互いを意識しているのがわかるくらい、普段の2倍増しに迫力あるドラムソロを4小節でトレードしていきます。

本人のポテンシャルがいつも以上に発揮されているのかどれが誰のフレーズか見分けがつきません。。

2曲目以降はタイトルに誰のドラムソロか書いてあるのでフィリー・ジョーからパーシップ、エルビンへと繋いでいき最後にテーマのメロディだけ申し訳程度に出てきます。

エルビンのソロがまだうねりが少なかったりフィリーもまだ荒削りな部分が見えてそれも貴重ですね。

最後はあの”A Night In Tunisia”のパターンを全員で叩くというこれもとても貴重なテイク。パーシップのキレキレな演奏も素晴らしいです。

曲というよりはドラムソロを楽しむためのアルバムなのでドラマー好きやドラマーに向けたアルバムになっていることを知っておくとこのアルバムの楽しみ方がわかると思います。

Kendrick Scott「We Are the Drum」

ケンドリック・スコットがブルーノートレーベルから初リリースしたアルバムになります。

メンバーはジョン・エリス(T.Sax)テイラー・アイグスティ(Piano)マイク・モレノ(Guitar)ジョー・サンダース(Bass)のメンバー。

前作の「Conviction」のときからすでにバンドサウンドは固まっていましたがワールドツアーを経てさらに進化したオラクルサウンド。

1曲目から5/8拍子が2小節で11/8が1小節というとても複雑な拍子のドラムソロからスタートしてテーマも同じリズムで進んでいきます。

ソロに入ると5拍子の部分が大きい3拍子に変わり、11拍子の部分が大きい2拍子になるというこれまた複雑な構成になっています。

前にケンドリック本人から変拍子も大きく捉えれば2拍子になると教えてもらったことがありますが流石に高度すぎます。。変拍子の究極系ともいえる1曲です。

このアルバムのコンセプトとしては喋る声だったり人間の体やいろんな音がリズムとなりそれがドラムとも言えるというコンセプトでこのアルバムを制作したそうです。

オススメの曲としては”Never Catch Me”と”Lotus”と”Synchrony”。

“Never Catch Me”はドラムソロからスタートしますが歌うようなタムのフレーズ。

最初のモチーフとこの曲のテーマのメロディのモチーフをうまく混ぜながらイントロのリズムに繋いでいきます。

そこからテーマのメロディはギターとピアノパート、バスクラリネットとベースのユニゾン。このユニゾンのメロディが複雑で徐々に盛り上がっていきます。

盛り上がった先にピアノソロに繋がりこれも疾走感のある気持ちいいソロに引き込まれていく感じが好きです。

“Lotus”はギタリストのマイク・モレノの曲。美しく繰り返されるメロディがこの曲の特徴で終始心地いいサウンドに包まれます。

“Synchrony”は最近でもよく演奏するアップテンポの曲。

メロディはシンプルですが難しそうなコード進行にリズムのキックがあります。

アドリブソロ中もそのリズムのキメが常にあって高速スイングでもメンバーみんなそれに合わせてくるという達人技を繰り広げます。

バッチリ合わせるわけではなく少しルーズな部分や曖昧さもあってなんともつかみどころがないように聞こえますがこれはこれでカッコいい。

ドラムという原始的な楽器であることに着目して完成したこのアルバムは全ドラマー聴いておくべき1枚ですね。

 

以上がオススメのドラマーアルバム5選になります。本当はもっとオススメがありますが個人的に選ぶとなるとこのラインナップでしょうか。

もっとゴリゴリ系が良ければトニー・ウィリアムスやビリー・コブハム、スイング系でいうとグレッグ・ハッチンソンやユリシス・オーエンスなど系統によって好みは分かれますよね。

皆さんのオススメのアルバムがあればお聞きしたいです。それではまた!



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。