ジャズドラマーの選ぶ2022年のベスト5アルバム

こんにちは、野澤です。

今回は2022年に聴いたアルバム個人的ベスト5をご紹介します。

22年は気に入っているミュージシャンからベテランミュージシャンも精力的にアルバムを出していて色々楽しめた年です。

その反面さまざまなミュージシャンが毎月のように新譜を出すため正直お気に入りのアルバムを1年通してリピートして聴くという習慣はなくなりました。。

一過性のものになりつつあるのが正直なところで現代の流れについていくのが最近大変に感じます。

なので今回選んだアルバムは特に印象に残ったものを厳選しています。それではいきましょう。

2022年に最も聴いたアルバム5選

ジョシュア・レッドマン、ブラッド・メルドー、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイド「Long Gone」

20年に出したアルバムも当時のベスト5にあげたレジェンドカルテットの作品で、リユニオンしてからの第2弾のアルバムになります。

オーソドックスで聴きやすいジャズとコンテンポラリーの新鮮味が混ざっていて極上なサウンドを味わえるアルバムです。

それぞれメンバーが出す1音1音の説得力がありすぎてリラックスしたサウンドでも大きなエネルギーを持って音楽が動いている感じがします。

曲は前のアルバムと似ているというかコンセプトは同じ感じはしますがこのメンバーでまた違ったプレイを聴けるなら全然この方向性でアリですね。

アルバム最後にはこのメンバーでライヴをやった時の演奏もボーナストラックとして入っています。スタジオレコーディングと違って攻めたプレイを次から次へと展開させていくのでそれまでに聴いていた雰囲気とギャップがあってテンションが上がります。

このメンバーでの音楽なら相当ジャズを聞き込んだ人でも満足すること間違いないですし、いつ聴いても心地よいサウンドでテンションが上がります。

自分もこのアルバムを聴くとモチベーションが上がるのでよく聴きました。このメンバーで来日コンサートがあったら絶対行きたいですね。名盤に入れていいほどよくできたアルバムです。

SF Jazz Collective「New Works Reflecting the Moment」

今年はなんと言ってもこのアルバムが出るのを待ち望んでいました。なぜかというとこの世界的オールスターバンドのSF Jazz Collectiveにドラマーのケンドリック・スコットが参加したのです(SF Jazzについては以前の記事から参照してください)。

歴代のドラマーは、ブライアン・ブレイド、エリック・ハーランド、ジェフ・バラード、オベット・カルベーレときてようやくケンドリックの時代がやってきました。これをどれだけ待ち望んでいたか。

他にも新しくグレッチェン・パーラートやマーティン・ルーサー・マッコイなどのボーカルが入ったり、音楽ディレクターとしてクリス・ポッターが参加しました。

個人的には大満足の内容です。ケンドリックが爆発するような展開を作ったりそれを軽々と合わせていくバンドメンバーは最高に格好いいです。

やっぱり彼はラージアンサンブルにうまくハマりますね。

それと今回の立役者はベースのマット・ブリューワーでしょう。

ウッドベースがメインなプレイヤーなのにエレベを弾いても超一流のプレイをみせます。エレベでしかできないことをしっかりやるのにウッドベースのニュアンスや考え方も取り入れてくるのでまさに死角なしです。

ウッドベースソロを弾かせても曲の世界観を最大限に作ってくれるので3曲目の”Throw It Away”のグレッチェンのボイスがすごく引き立ちます。

1時間20分と長尺なアルバムではありますがライヴレコーディングなので没入感もあり最後まで無理せず聴けるいいアルバムです。

このメンバーでタイニーデスクに出たときの演奏もあったのでここに載せておきます。

 

イマニュエル・ウィルキンス「The 7th Hand」

新世代ミュージシャンで今注目を集めてるアルトサックスプレイヤー、イマニュエル・ウィルキンスの最新アルバムです。

1つ前に発表したアルバムとサウンドの系統は似ていますがさらにバンドサウンドがブラシアップされた感じになりよりマニアックでチャレンジングにもなってきました。

アルバムのタイトルが「7th Hand」となっていて人間の第六感を超える神の手を7番目として音楽に介入させるというコンセプトで作ったそうです。

自分たちのやっている音楽を通して神と通じるみたいな考え方は少しウェイン・ショーターっぽいですよね。

楽曲として7曲入っているんですが作曲されたのは最初の6曲で最後の1曲はフリーになっています。

この6曲を演奏しきった後はバンドとして、そしてアルバムとして音楽が出来上がっている状態なので最後の1曲で全員が自由になっていく様が今回のアルバムの目玉となっています。

1曲目はコンテンポラリーど真ん中をついてくるジェラルド・クレイトンやウォルター・スミス系統のサウンドでイマニュエルのやりたいことがバシバシ伝わってきます。

2曲目以降からは落ち着いた曲になっていきサウンドや空間を感じて楽しむ音楽になっていきます。”Shadow”は何度も同じメロディを繰り返し演奏していくマイルスのネフェルティティの現代版みたいに聞こえますね。

フルートのエレナが入ってからまた少し雰囲気が変わっていきます。組曲のように1曲1曲つながっていき展開の仕方がすごく自然で見事です。

それもキレイな雰囲気とゴージャスなサウンドにエネルギッシュなサウンドがそれに混ざってくるので不思議な感じです。

このエネルギーもレジェンドたちとは違う新しいサウンドが感じれるのでいいですね。

しかしみんな楽器がうますぎる。。今のミュージシャンは器用さがずば抜けているんですがここまでちゃんと音楽性がしっかりしてるのは見事です。

ただ難解で聴きにくい部分や実験的な要素もあるので真面目に聴くとエネルギー使うアルバムですね。何回もリピートして聴くには大変ですが音楽の中身は素晴らしいです。

スタン・ゲッツ&ボブ・ブルックマイヤー「Recorded Fall 1961」

昔の作品の中では今年よく聴いたアルバムです。柔らかいサウンドを持つスタンゲッツと優秀なアレンジャーとして有名なボブブルックマイヤーの双頭アルバムです。

やっぱりシリアスな音楽ばかり聴いてもしんどいのでこのくらいリラックスできる西海岸のクールジャズも聴きたくなります。純粋に音が気持ちいい、心地いいという表現が合うアルバムです。

ちょっと忙しくなりそうな日には朝にこのアルバムをかけてコーヒーを飲みながら聴くと気分が落ち着いて1日を始められるので気持ちがいいですね。そういう意味で割と聴いた曲です。

ちゃんと聴いてもいい内容になっています。ピアノはスティーブ・キューン、ドラムはロイ・ヘインズという実力者なので音楽全体の雰囲気はクールでも推進力あるグルーヴが常にあります。

あまり深いことを考えずに頭を空っぽにして聴く音楽もいいですね。ここ数年で好きになってきました。

ネイト・スミス「Kin Folk 2: See The Birds」

今回1番予想を裏切ってよかったアルバムです。

ドラマーのネイト・スミスはジャズドラマーというくくりではありますがマーク・ジュリアナのようなビートをはっきり出すタイプのドラマーです。

今まで出したリーダーアルバムもファンクやヒップホップ系が多めです。今回も割とそっち寄りなんですがコンテンポラリージャズにも寄せていて結構好印象なアルバムです。

サイドマンとしてジャリル・ショウやジョン・カワードなどのアコースティックジャズが得意なミュージシャンにフィマ・エフロンという新しいエレキベーシストを入れてアコースティックとエレキ、ちょっと昔のコンテンポラリーと現代のコンテンポラリーのバランスをうまくバンド内で作っています。

これを基盤にマイケル・マヨやジョエル・ロスなどの期待ある若手ミュージシャンをゲストとして参加させてアルバム全体にフレッシュさを出しています。

ドラマーとして終始存在感はあるのですが決して周りのミュージシャンを潰すようなプレイではなく常にサポーティブなドラムを叩きます。

曲もノリやすい縦乗りのグルーヴ系にポップでメロディックなブラックミュージックになっているので楽曲を大事にしながらプレイしているのがわかります。

フロウなサウンドにザクザク切り込んでいくようなプレイをする曲もありそれが心地いいですね。ネイト・スミスの持ち味を存分に発揮できる曲ばかりです。

それにアルバム全体の流れを大事にしつつ1曲ずつ誰かをフィーチャーしながら展開していくので曲単位でもしっかりしているのでじっくり聴いていても飽きないです。

BGMとして流しててもめちゃめちゃオシャレなので気分がいいですね。

商業的でもあるけど芸術的な側面も持ち合わせていますし、現代的なサウンドですがアコースティックなコンテンポラリージャズのサウンドも持ち合わせています。プレイヤー側もリスナー側も満足できるようなバランスが取れたアルバムです。

 

という感じで今年よく聴いた5枚を選んでみました。どれも力が入っていていいアルバムですのでもし聴いていなければぜひチェックしてみてください。

最近海外ミュージシャンも日本にきてライヴする機会が増えてきているので近いうちにまた生で見られるのが楽しみですね。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。