ドラムの音はプレイヤーで違う音色の特徴的なジャズドラマー10選

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こんにちは野澤です。

今回はドラマーが奏でる音色のお話をしようと思います。

音色と一口に言うと簡単ですが、具体的には一般的に楽器からどういう音が出るか、というのを音色と呼びます。

意外と知られていないのですが、たとえば太鼓は叩く場所によって音色が変わります。

太鼓の真ん中を叩けば密度が詰まった音が出ますし、端を叩けばいろいろな倍音が出てキンとした音を奏でるものです。

シンバルだとボウ(真ん中より下あたり)の部分とカップの部分で音が違いますね。

こういったさまざまな音色(ねいろ)の違いをよく理解して、状況によって使い分けてドラムを叩くのがプロドラマーの大半です。

しかし、音色は一概にこういった音の違いのことだけを言うのではありません。

同じ部分をスティックで叩いたとしても、誰が叩くかによって同じ楽器なのに出てくる音や響きが変わるのがおもしろいところです。

多くのドラマーは表現方法の追求を突き詰め、自分の音を持っています。

なにも考えずになんとなく叩いている、という人もいるかもしれませんが、多くのミュージシャンはなにがしかの考えをもって叩いています。

だからこそ、そのドラマーの特徴的な音が楽器に表れて出てくるんですよね。これも音色の違いといえます。

これはドラマー全般の話ですは、多くのジャンルの中で、ジャズドラマーはこの音色の違いが顕著に現れるのでそれを聴いてジャズを楽しむのも1つの嗜みです。

またそれとは別の方向性ですがDTMなどで打ち込みの音にジャズドラマーの音をサンプリングして混ぜて使うこともあるそうなのでその参考にしてもらってもいいと思います。

今回は音色の違いを楽しめるように個人的に音色が特徴的なジャズドラマーをご紹介していきます。

ブライアン・ブレイド

近年ではジャズファンから圧倒的な人気を誇り、純粋な生音だけでいうと群を抜いて綺麗で研ぎ澄まされた音を奏でるドラマーです。

繊細さと大胆さの振り幅も広く小さな音と大きな音の音色がまるで違います。

小さい音でも緊張感を出したりリラックスした音色を使い分けができて、大きな音も盛り上げる一音一音の推進力が強力です。

自身のバンドの「Fellowship」や、ピアニストのブラッド・メルドーやチック・コリアと演奏している音を聴くとわかると思います。

ファンクなどの8ビートや16ビートをやってもかなり繊細なタッチですがグルーヴ感も強く非の打ち所がないですね。

ファンク系はテナーサックスのジョシュア・レッドマンのElasticというバンドでやっていたのでぜひそれを聴いてみてください。

ブライアン・ブレイドの作品などについて解説した他記事はこちらから

グレッグ・ハッチンソン

現在のスイングジャズでは最もドライブ感があって低重心な音が印象です。

シンバルの4ビートのスムーズさやスネアの音が弾けるような粒立ち感はグレッグならではの音色ですね。

ファンクをやってもジャズの音がするのですが最近出したアルバムではかなりヒップホップにも寄せた音色を出しているので聴いたことがなければ必聴です。

グレッグ・ハッチンソンの作品などについて解説した他記事はこちらから

エリック・ハーランド

エリック・ハーランドといえばサンプリング音源も出しているほどビート系に特化したジャズドラマーです。

エリックの音色を例えるならサクサクしたクリスプなプサウンド。

パリッとした出音からふわっとするような響きが発生していくので音楽になった時の空間がリッチです。

若いときは音数で埋めていくスタイルだったのですが、あるときからシンプルにかつ空間を効果的に使う音色にシフトしています。

それでも前と同じようなプッシュするような感じが音に表れているのでスタイルがガラッと変わったイメージはそんなにありません。

音質については昔の方がクリアなコンテンポラリージャズに寄っていて、今の方がビート系のいい意味で雑味がある音質になっています。そこはドラムのセットアップの違いでしょう。

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マーク・ジュリアナ

マークジュリアナもビート系ですが打ち込みのような音色を持っています。生で聴けばYouTubeで見るより断然に音の圧力が違いますが動画で見てもどの音も均等な質感です。

均等というと無機質なイメージでネガティブに聞こえてしまいますがマークの場合は音楽的にどういう展開にしようか常に流れを考えているプレイヤーなので音質が均一でも音楽が進んでも退屈しません。

そしてその均一さの中にも微妙な音色のコントロールが存在もしています。

基本ハイハットのビートを叩くときはかなり左足を踏み込んでタイトな音色作りをしています。右手がライドに移ったら粒だちのいい弾けるような音色に変えています。

同じ8分音符を叩いてリズムを刻んでいてもニュアンスを微妙に変えて音楽を展開していくスタイルはエレクトリックでもアコースティックバンドの時でもスタンスは一緒です。

彼の音楽をじっくり聴いてみるとその違いに驚くと思います。

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ポール・モチアン

唯一無二のサウンドでモチアンの音を一度耳にすれば絶対忘れない特殊な音色を持っているプレイヤーです。

ジャズジャイアントの1人であるビル・エバンスのバンド時代ではなく、ECMレーベルから出しているリーダーアルバムのほうがこの特徴がわかりやすいですね。

カンとしたサスティンのあるスネアの音色とキンキンしたシンバルの音色が特徴的です。

なかなかこの感じの音色をウリにしているドラマーは少ないです。

なぜなら十把一絡げのドラマーがこの音色でプレイするとダサさが目立ってしまうからです。

しかしポール・モチアンの場合、この音色のダサさが前に出るのではなくて音楽的な部分が全面に出ているのでこの音色で成り立っているんじゃないかと個人的に思います。。

もっと詳しく突っ込むとフレーズ感が他のドラマーと系統が違います。

普通プレイヤーはカッコいいフレーズを叩きたいという思いが先行します。

そしてそれが音楽にハマると気持ちいいのでキレイまたはカッコいい音色でフレーズにアプローチしたくなるのがプレイヤーの性です。

しかしモチアンの場合、フレーズはビバップですがその原型がなくなるほどオリジナリティを追求していたり、音のエネルギーありきで音楽を考え、その特徴的な音色が結びついているのでダサいというより音楽的な美しさをプレイから感じます。

理論と感覚が入り交じるので文章にするのが難しい部分ですね。

音色やフレーズだけでその人の音楽を判断するとその側面でしか音楽を聴けなくなってしまうのでこういうプレイヤーも聴けると音楽の視野が広がると個人的に感じています。

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アート・ブレイキー

いわずと知れたジャズドラム界のヒーローですが、音色とフレーズ感が他プレイヤーに比べ圧倒的に強く結びついているので単純に音だけで解説するのが難しいタイプのドラマーです。

なにぶん、アートブレイキーの音とリズム自体がそもそものジャズドラムというものの形を創り上げているため、音だけで切り離して考えるのは難しいかもしれません。

それでもあえて音だけでいえば、シンバルの音はクリアです。

シンバルはジルジャンのKを使って次にAvedisそしてPaisteと段々と時代を追うごとにクリアな方向にむかっています。

スネアはグレッチを好んで使っておりソリッドだけど太い音を出すので存在感が常にあります。

そしてブレイキーの特徴的なサウンドといえばそのスネアのドラムロール。

通称”ナイアガラロール”とも呼ばれていて、ドラマーでなくとも、これを聴けば一発でアート・ブレイキーと判断できるほどロールのダイナミクスが圧倒的で聴いていてかなりの爽快感があります。

そしてラテンのビート。ジャズスタンダードであるナイトインチュニジアの演奏時のビートでお馴染みですが、改めて聴くとフレーズというより音の飛び方がダイレクトです。

男前というかこの潔いい音が直接リスナーに刺さるの感じがアートブレイキーのキャラクターを感じます。

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エルビン・ジョーンズ

ここまでに出てきたドラマーたちもそうでしたが、エルビンもかなり特徴的なサウンドの持ち主です。

ある程度ビートについて理解した人が聴くと、まず最初にうねるようなフレーズを感じると思いますが、音だけで分析するとダイナミクス、そして音の方向性がハッキリしたドラマーです。

テンポ通りにかっちり音を出すのではなく大きなタイム感の中で音を出していくのでとても人間的なサウンドもします。

ライドシンバルの4ビートのパターンも音楽の中で常に変化していくので音楽が展開していくと音のスピード感も増していきます。

エルビンのライドシンバルのパターンはかなり3連符に近いアフリカのリズムが混ざっているので特に遅いときのサウンドはかなり粘りがあります。

逆に速いときには音に粘りがありながらも軽快に次に繋いで進んでいくのでグルーヴ感がとても滑らかです。

上品なサウンドというよりはとてもプリミティブな人間臭いサウンドがしますがそれも一緒にプレイするプレイヤーに合わせて分けている気がします。

伝説的なプレーヤーであるジョン・コルトレーンや自身のバンドではとても粘った音を意識していますが、ウェイン・ショーターやマッコイ・タイナーのアルバムでは音の質感がサラッとした印象がありますね。

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トニー・ウィリアムス

トニー・ウィリアムスは、演奏する1音1音のエネルギーが凄まじいドラマーです。

トニーが18歳のときに参加したマイルスバンド(当時、そして今でも、マイルスバンドはファンのみならずプレイヤーからも圧倒的な知名度を誇る最先端をいくバンドでした)では、彼がバンドの中心になるくらいドラムの音が空間に満たされています。

とにかくシンバルの4ビートは強烈でパワー、スピード感がありながらもまろやかなサウンドです。

スネアやクラッシュシンバルでソリッドな部分を強調しているので常に尖っているイメージがありますがシンバルと太鼓系でサウンドのバランスを取っています。

どっしりというよりは少し浮遊感のある音なのでスリリングな感じもありますね。

この浮遊感がメンバーに自由に演奏していいような空間を生み出しています。

好き勝手にプレイしているようで周りのアンサンブルのこともここまで考え抜いてオリジナリティあるサウンドを出しているなんて。超人すぎます。。

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スティーヴ・ガッド

70年代以降チック・コリアやスタッフなどフュージョン以降のサウンドを作りあげたといって過言はないドラマーでしょう。

前の項のトニーとは同年代ですが、活躍した時代がちょっとズレていてガッドのほうが後の時代になります。

バップ系のジャズミュージシャンとは対照的なサウンドでスネアも2拍目や4拍目のバックビートが落ち着くようなタスっと鳴るような音作りにしています。

ライドシンバルで引っ張るより太鼓系でリズムを取るような感じがするので8や16ビート系のフュージョンに合ったサウンドです。バスドラムやタム系もトーンとなるような胴がなるサウンドではなくペチッとした皮を叩く成分が多めの音になっています。

シンプルなリズムを得意としますが音の説得力がすごくあるので聴いていてかなり心地いいサウンドです。

このサウンドに憧れた人は多く、日本人だと村上ポンタ秀一さんや山木秀夫さんなど80年代から90年代の日本を代表するドラマーもスティーヴ・ガッドに憧れてか、同じようなサウンドを作っています。

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クリス・デイヴ

今の時代に欠かせないドラマーですね。

ジャズはモダンジャズからフュージョンに移りまた原点回帰してコンテンポラリーサウンドが流行った後にヒップホップに交わっていきますが、そのヒップホップとジャズが交わる架け橋となったドラマーです。

元々ジャズのことはすごく研究しているので、グルーヴやフレーズ感からはジャズを感じます。

初期はケニー・ギャレットのバンドで活躍するなどジャズ方面でも引っ張りだこでした。

クリスのサウンドの大きな変化は現代ジャズの超人気プレイヤーであるロバート・グラスパーのバンドに参加してからでしょう。

グラスパーがヒップホップにアプローチした音楽を目指したときに、クリスのサウンドを求めたのは確かなんですがクリスもグラスパーのやりたい音楽にかなりサウンドを近づけています。

打ち込みやDTMのようなタイトなスネアサウンド。

アタックの音よりローの響きの音がよく回るようなバスドラの音作り。

最近ではボンゴやクラップシンバルなどエフェクトにも特化したサウンドをドラムで出せるようにしています。

音だけで楽器を判断しづらい人の場合、YouTubeなどの映像で見るとそのセッティングの感じがよくわかるのでぜひ検索してみてください。

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ネイト・スミス

現在のファンクやR&B界隈ではこの人抜きに語れないでしょう。シャープでタイトな音色が特徴的でスネアにおいてもハイハットにおいてもキレがいいです。

パワーもありますが出音が繊細なのでジャズをやっても馴染みます。

大林武司さんのトリオやウォルター・スミスとのコンテポラリージャズ、自身のリーダーアルバム、黒田卓也さんのアルバムでプレイしているときと、それぞれのバンドで全く違う音色が出ていますが、どれもネイト・スミスが叩くドラムだというのがわかるのが不思議です。

ぜひ聴き比べしてみてください。

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マーカス・ギルモア

最後にご紹介するのはマーカス・ギルモアという、現代のジャズドラムに革命を起こしたドラマーです。

ジャズドラマーなら知らない人はいないほどのプレイヤーであったロイ・ヘインズの孫で、きっとDNAは受け継がれていると思うのですが、なんと独学で誰にもならわず自身のサウンドを作り出しました。

ソフトな心地いいサウンドでふわふわした印象ですがガツンといくときはいきます。

このガツン、とアクセントをつけたときのシンバルの音色や音の重量感がとても心地よくずっと聴いていられるほど気持ちがいい音です。

ロイ・ヘインズのような浮遊感を感じられるのですがマーカスの場合はもっと洗練されて都会的な音もします。

聞き心地はふわっとですが感じているグルーヴはとても深く正確です。

特徴的なサウンドといえば左足のハイハットでパターンを踏みながら他の両足、右足を自由に動かすドラムソロ。

このサウンド感やグルーヴ感はこの人以外できないでしょう。

このマーカス・ギルモアの音色に影響を受けていてカシュ・アバディーやジャーミー・デュートン、クェイク・サンブリーなど、ここ最近活躍しているドラマーはサウンドを引き継いでいます。

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ということで、音色に注目して特徴的なプレイヤーをご紹介しました。

さまざまなドラマーがいますが音色のちがいがハッキリと表れるところが魅力的ですね。

どのドラマーも1つの時代を築き上げてきた、もしくは築き上げていくといって過言のないプレイヤーなので、ご自身の演奏やDTMなどでビートの音色をいじる際にぜひ参考にしてみてください。



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野澤宏信 1987年生。福岡県出身。12歳からドラムを始める。2006年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学後ドラムを大坂昌彦氏、池長一美氏に師事。在学中には都内、横浜を中心に演奏活動を広げる。 卒業後は拠点をニューヨークに移し、2011年に奨学金を受けニュースクールに入学。NY市内で演奏活動を行う他、Linton Smith QuartetでスイスのBern Jazz Festivalに参加するなどして活動の幅を広げる。 NYではドラムを3年間Kendrick Scott, Carl Allenに師事。アンザンブルをMike Moreno, Danny Grissett, Will Vinson, John Ellis, Doug WeissそしてJohn ColtraneやWayne Shorterを支えたベーシストReggie Workmanのもとで学び2013年にニュースクールを卒業。 ファーストアルバム『Bright Moment Of Life』のレコーディングを行い、Undercurrent Music Labelからリリースする。 2014年ニューヨークの活動を経て東京に活動を移す。現在洗足学園音楽大学の公認インストラクター兼洗足学園付属音楽教室の講師を勤める。