こんにちは、野澤です。
今回は注目が高まっているベーシストのエスペランサ・スポールディングのアルバム「Esperanza」をピックアップしてご紹介したいと思います。
エスペランサ・スポールディング「Esperanza」
パーソネル
- エスペランサ・スポルディング(Bass)
- グレッチェン・パーラト(Vocal)
- テレサ・ペレス(Vocal)
- レオ・ジェノベーゼ(Piano)
- ニーノ・ジョゼル(Guitar)
- ドナルド・ハリソン(Alto Sax)
- アンブローズ・アキンムシーレ(Trumpet)
- ジェイミー・ハダッド(Percussion)
- オーティス・ブラウン(Drums)
- オラシオ・エルネグロ・へルナンデス(Drums)
アルバムトラック
- Ponta De AAleria
- I Know You Know
- Fall In
- I Adore You
- Cuerpo y Alma(Body And Soul)
- She Got To You
- Precious
- Mela
- Love In Time
- Espera
- If That’s True
- Samba ‘Em Preludio
彼女のリーダーアルバムとしては2作目になります。アルバムタイトルも「Esperanza」という自分の名前をつけて満を持したアルバムに仕上がっています。
メンバーにグレッチェン・パーラトやオラシオがいるあたり少しブラジルの要素が感じられますね。他にもドラムがオーティス・ブラウンを入れてる感じを見るとパキッとしたサウンドを狙っている感じと少しポップさを足して仕上げようとしてるのがわかります。
ジャズとブラジルの音楽をうまくポップに融合させた音楽
このアルバムでは、エスペランサがベースを弾きメインボーカルも全て担当しています。ボーカルは別録りかと思いきや、歌に反応するようなインタープレーを繰り広げているのできっとこれはみんな一緒に録音していると思います。
にしても音楽の内容がポップスのようにサウンドがきちんと整理されていてかなり聴きやすいです。
曲の構成上ボーカルが終わったらソロに入る流れとしてはジャズのフォーマットで進んでいますね。
ですがこのソロセクションに入るとかなりハイレベルなインタープレーを繰り広げているのでまるでインストのアルバムを聴いているかのような聴きごたえがあります。
エスペランサの歌い方もメロディーを歌うときとスキャットをするときで雰囲気を使い分けているのもチェックポイントです。
歌と伴奏という関係ではなくみんなが対等に音楽でコミュニケーションができるように楽器に溶け込むような歌い方をします。
歌いかたは発音がはっきりしているのですが独特な柔らかさも持ち合わせていますね。どの曲を聴いてもノビのある歌声が素晴らしいです。
ベーシストとしてのエスペランサの魅力
歌だけでなくベースのテクニックもピカイチです。
レイ・ブラウンやマクブライドみたいなどっしりしたタイプではないですがしなやかでノビのある音色がエスペランサの持ち味です。
パターンのようなシーケンスを弾いて支えることもあればソリストが何か面白いことをすればそれにすぐついていけるような俊敏さもあります。
曲のテーマやコンセプトがはっきりしているのと対照的にソロでは独創的なアイディアがどんどん展開されます。こういうのはエスペランスにしか出せない個性でしょう。
アルバム全体の流れ
ポップに仕上がっているのが最初の2曲でしょう。ブラジルのリズムを軸にしてベースラインやハーモニーがとてもおしゃれでポップな感じになっています。
この2曲では特にアドリブパートもないのですがエスペランサの魅力的な歌声が味わえます。
3曲目ではピアノとのデュオで自身はベースをひかずにぼカーリストとしてしっとりとしたジャズバラードを歌いあげます。
これもジャズのエッセンスは感じられますが全体的なサウンドはとてもポップです。
4曲目の”I Adore You”ではサンバのリズムでカーニバルのような雰囲気があります。
歌詞はついてなくエー、アー、ラララーとかスキャットのように歌っていますがとてもメロディックなテーマです。この曲からピアノソロやベースソロなどインプロの要素が入ってきます。
ピアノのレオがメロディックなソロを取るとみせかけてアウトしにいくフレーズを結構入れてくるので面白いですね。
5曲目はジャズスタンダードの“Body And Soul”をポルトガル語で歌い3拍子のラテン調に仕上げています。この曲もピアノソロになってからの盛り上がり方がハンパないです。
ベースソロは歌とのユニゾンで説得力のあるソロになっています。
盛り上がりをみせる曲としては6曲目の”She Got To You”と”Mela”と”If That’s True”でしょう。盛り上がる曲はとことん攻めた内容になっています。
”If That’s True”はこのアルバム唯一のボーカルが入っていないインストの曲です。さすがウエイン・ショーターやジェリ・アレンと共演してきたエスペランサ。ソリストの反応スピードや次の展開の作り方が滑らかすぎて見事なプレイです。
ここでのアンブローズのトランペットソロは聴きごたえ満点です。むしろもっと聴きたいくらいです。
ポップなコード進行でソロをとっているのは新鮮ですがちゃんと自分のキャラクターが発揮できるソロをとっているのがいいですね。
最後はしっとりしたボサノバで少し哀愁がある曲で締めます。アコースティックベースじゃなくエレベで弾いている感じも曲とマッチしていていいですね。
アルバム全体的にはポップなブラジルの音楽がバックボーンとして入っていますがジャズの要素やR&Bの要素がすごく感じられる作品になっています。
ここからどんどんエスペランサの音楽はアルバムが出るごとに変わっていきますがこのアルバムが彼女の原点でしょう。
ジャズ初心者もマニアも満足するような作品になっているので超オススメです。